【社会人も武蔵美で学ぼう】アートとデザインの視点からビジネスを捉える試み
武蔵美が開催するVCP for Tourismを受講中です
武蔵野美術大学が実施している、デザイン経営人材育成講座「VCP for Tourism」に参加しています。観光経営事業者を対象に、「アートとデザインを通じた新たな文化資源創出」をテーマにした短期プログラムです。
美大の「創造性教育」を活用し、国内の文化資源の価値を再発見し、観光産業のブランド力とイノベーション力を高めることを目指し、「デザイン経営」を中心に据えた教育プログラム及び実装プログラムです。
全6回の講座では、「アート資源の利活用」をテーマに、アート/デザインの基礎的理解、ホスピタリティ、ユニバーサルデザイン等の座学や、本学の最大の強みでもあるアートに関するワークショップの実践を計画しています。
受講のきっかけ
以前、社外の新規事業開発の取り組みに参加した際に、「事業探索活動において、”デザイン”が果たす役割は、想像以上に大きいのではないか」と感じました。もう少しデザインの視点からビジネスや事業というものを捉えてみたいと思ったのがきっかけです。
※なお、ここで示すデザインとは、マインドセットやリサーチ活動、プロトタイピングなどを含めた広義な意味を指します。デザイン思考とも近いと思います。
Day1の学び
同大学で教鞭を執られている丸山先生と石川先生の講義でした。丸山先生は「アートによるブランディングとイノベーション創出」について、石川先生は「東京をテーマとしたアートと観光の関係性」をテーマに授業をしていただきました。
印象的だった内容を記録として残したいと思います。
※記載内容はあくまでも私のメモなので、実際の先生方の表現とは異なります
視点はバランスよく、 「謙虚になりすぎず、上から目線にもならない」
スタート直後に丸山先生よりお話しいただいたのが、受講時のマインドセットです。「視点をバランスよく持つこと」「謙虚にもなりすぎず、上から目線にもならない」
個人的には当たり前のように思えて、実は難しいように思えます。改めて意識したいなと思い、ここに書き残します。
アートが持つ、「新たな問いを投げかける力」
こちらも丸山先生の講義ですが、「アートには現在の常識に対し、新たな問いを投げかける力(新たなものを見つける力)がある」というお話をされていました。以前、社会人で武蔵美大学院を卒業された方と、”事業探索における問いの難しさ”について話しをしていた際に、「アート的思考が役立っている」とおっしゃっていて、どういう意味だろうと思ったのですが、少しつながった気がします。
「アートによる問い」という言葉で思い出すのは、2020年に東京国立近代美術館で開催されていた「眠り展 - アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」です。
眠りに関する作品が集められた展示なのですが、眠りにも「春を待つ冬眠のような、準備期間のような眠り」や「自分と対峙するための、外部と遮断するための眠り」など、異なる意味があることに気付かされます。
当時はちょうどコロナ禍で、さまざまなものが停滞しているように感じていたときに、準備期間としての捉え直しがあると感じました。
「ふわふわ性」から見る、観光とパブリックライフの関連性
石川先生の講義では、「偶然になにかを見つけること」を指す、ふわふわ性が観光においても重要な役割を持つことを講じられていました。
ふわふわ性が最も発揮されるのは遊歩。17世紀の絵画からは日本のストリート文化(遊歩やウォーカビリティ)が描かれており、その重要性が捉えられている。
観光も遊歩を考えるべき。ひとがまちを歩くことは文化・カルチャーを生み出す。
観光が目指すものは「複数の速度を許すこと(文化の豊かさ)」ではないか
ふわふわ性の重要性はパブリックライフ学でも論じられています。思い浮かべたのはメルボルンの事例です。以下はパブリックライフ学入門からの引用です。
1994年から2004年にかけて数多くの方策が実施されました。たとえば、建物の間の狭い通路は、快適に滞留したりぶらぶら歩いたりできる場所に変えられました。(中略)1994年から2004年の間に、滞留できるパブリックスペースの面積は71%増加しました。(中略)都心部の夜間歩行者通行量は98%増加し、まちなかにちょっと滞留した人の数は約3倍になりました。
メルボルンは1992年からの10年間で屋外カフェが約4倍に増えています。パブリック空間が、人が生きるインフラでありながら観光資源としての役割も持ち、そこから人の滞留やアクティビティが生み、それらが定着・発展し、まちの文化やカルチャーが育まれる。1961年ジェイン・ジェイコブズが起点となり発展したパブリックライフ学と観光の共通項が見えたような気がしました。
おわりに
こうして書いてみると非常に学びのある時間だなと思います。数年ぶりの擬似学生体験を楽しみたいです。