【再掲】女子プロ野球論

この記事は、6年ほど前に書いた内容をに関して、今年の騒動があっていろいろ思い出したため、こちらに改めて記した。

--------------------------------------------------------------------------------------(女子プロ野球論)なんて、大した話はないけれど、語りたいことがたまってきたので。

 そもそも僕が女子野球という存在を知ったきっかけは、今から5年前の夏、当時日曜日の夜にテレビでやっていたダウンタウンの浜ちゃんが司会をしていた、ジャンクスポーツにゲストとして出演していた高島知美選手(当時平成国際大)だった。

 彼女は、その年の夏に松山で行われた女子野球のW杯でキャッチャーとして出場し、ジャパンを初優勝に導き、彼女自身も首位打者と得点王という大きなタイトルを獲得した。

 

 それがきっかけでネットで女子野球のことを調べていると、僕はある一冊の本と出会う。

 

 それが、2006年のW杯を追った、長谷川晶一氏の「真っ直ぐ、前を」という本だった。

 僕はその本をすぐに地元の図書館で借り 高校の授業中にもかかわらず、夢中になって読んでいた。その本の中で、ある1ページの写真がとても印象的だった。それは、一人の選手の試合でのバッティングのインパクトの写真。その写真に僕は釘付けになった。女子でこんなにデカい選手がいるのかと(笑)見た目も完全に男。思わず周りにいたクラスメートに見せたのを今でも覚えている。

 その写真の正体は、女子野球界では知らない人はいない、西朝美選手だった(当時アサヒトラスト)。その時に、私は日本の女子野球界を代表するキャッチャーの二人を知ることができたのだ。

 

 そして、そのちょうどその翌年の2009年末に、女子プロ野球が発足されるということを知る。

 選手はそれぞれ、関東、関西で開催されるトライアウトの結果によって選ばれ、合格した選手自身がくじを引き、自分が加入するチームを決めるというものだった。健康食品メーカーのわかさ生活がスポンサーとなって、チームは「京都アストドリームス」と「兵庫スイングスマイリーズ」の2つで、主に関西で前期後期制でそれぞれ20試合ずつ、計40試合を行う。

 ちなみに、当時の主力メンバーは厚ヶ瀬美姫選手や小西美加選手、さらには女子野球のキャリアはないが、兄が東京ヤクルトスワローズで兄妹初のプロ野球選手として注目された川端友紀選手などがいた。

 もちろん、彼女たちは現在も球界をけん引するスター選手として活躍しているが、当時の僕はそれ以外の選手は全く知らなかった。というのも、先に挙げた、高島選手や西選手などW杯に出場した選手のほとんどがプロにはならなかったのだ。

 当時の僕は、正直あまり魅力的に感じられなかった。また、関東の高校に通っていて、さらに翌年に受験を控えていたこともあったために、一試合も観に行くことができなかった。

 

 実際に、初めて試合を観に行く機会ができたのは、昨年の京セラドーム大阪での開幕戦だった。リーグ発足三年目のその年から大阪ブレイビーハニーズが加わり、3チーム体制となっていた。

 初めて、女子野球を観た感想は、個々の選手のレベルの差が激しいということ、細かなミスが目立っていたことなど。

 そんな中で、僕は「女子野球を観るときには、男子のプロや高校野球と同じ目線で観る必要はない」ということを痛感した。単純に一生懸命野球をしている女の子たち。しかし、彼女たちはプロ。トップのレベルとして活躍している。その姿は、とてつもなく格好良かった。

 また、試合終了後には、球場のコンコースやスタンドに選手がゴミを回収しに来ていることにとても驚いた。それは、単純に運営側のスタッフのヒトでが足りないとかそんな理由ではなくそれも一つのファンサービスなのである。また、前もって耳にしていたが、選手によるお見送りと称して、その中で選手にサインを書いてもらったり、一緒に写真を撮ってもらったりとコミュニケーションが取れる機会があることもとても良かった。実際に、僕もコンコースで清掃をしようとしていた際に、兵庫の厚ヶ瀬選手や京都の宮原選手、さらに球場の外で川端選手、荒井選手にそれぞれサインをもらうことができた。

 また、その時に偶然、試合を観に来ていた高島選手に遭遇し、少しだけ声を掛けることができたのがいい思い出である。

 そんなこんなで、結局昨年もその開幕二日間しか観戦できなかった。

 そして今年、創設四年目にして女子プロ野球は大きく変わることとなる。まず、日本女子プロ野球機構がGPBLからJWBLと名称が変更され、チーム体制も、南から「サウスディオーネ」、西の「ウエストフローラ」、東の「イーストアストライア」、そして北の「ノースレイア」と生まれ変わり、年間を通して全国各地で優勝を争う、ティアラカップや、東西対抗のオールスターとしてシンデレラシリーズが開催されることとなった。

 昨年まで、年間を通してほとんどの試合が関西で行われており、着実に関西圏での女子プロ野球ファンは増えていた。そんな中での今年からの体制。それは、全国で女子プロ野球が観られる反面、関西での試合が激減するということでもある。実際に今年は昨年までの観客動員数よりも減っている。根強い関西のファンが減ってしまったのである。それにはもちろん批判はある。しかし、関東に住んでいる僕にとっては、今まで以上に多くの試合を観ることができる機会が増え、ありがたい気持ちもある。とはいうものの関東での試合は相模原、明治神宮、浦和、大宮、越谷などと場所も様々で年間数試合しかないが・・・。

 また、選手のペナルティの問題も話題となった。女子プロ野球発足当初から、選手に対してセカンドキャリア支援のために選手活動と並行して、それぞれ専門学校に通うことになっていて、国家試験に合格し資格を取得することが目的となっている。しかし、その学校に今年の春に卒業できなかった選手がある一定の基準で試合出場が制限されるというのが、機構が定めた当初の規則であった。しかし、実際にはそのペナルティも曖昧で、本来なら出場できない選手がベンチ入りされているどころか、スタメン出場していたり、活躍してヒロインになっている選手もいた。

 以上のことなどが問題視され、機構に対しての批判が強くなっていった。

 僕は、そんな機構のゴタゴタもある程度まで認めていかなければ女子プロ野球も発展していかないのではないかと考えている。それはもちろん機構側にちゃんとした責任を伴ってもらうということが前提ではあるが・・・

 恐らく、今の女子プロ野球機構にできることは限られているのではないだろうか。というか、一ファンがどこまでかかわっていくべきかということも重要である。機構側はファンの意見を積極的に取り入れ、ファンも批判だけではなく長い目で見て応援していくのが必要なのではないか。

 

 また、まだまだ女子野球界ではプロよりもアマチュアの方が実力が上という概念も強い。同時に実力はあるがプロでやっていくには不安な面もあるかもしれない。

 しかし、そんな中で一つの契機となったのが昨年のW杯の壮行試合として、プロの選抜チームVSアマチュアの選抜チームとの対戦。二試合行い、二試合ともアマチュアはプロに大敗したことだろう。

もちろんプロとすれば、毎日のように野球漬けの生活をしているのだから負けるわけにいかない。しかしアマチュア側もプライドはあっただろう。結果的にこの試合によってプロからもその年のW杯に川端、田中幸夏、三浦伊織、中村茜が代表として参加することとなった。

 

 現在、アマチュアではヴィーナスリーグというリーグ戦が主に埼玉を中心として行われている。その中には埼玉栄や花咲徳栄高校、また平成国際大学や尚美学園といった女子野球の競合チームがそれぞれ毎週のように試合が行われている。今シーズンはそのヴィーナスリーグから中島梨紗や里綾実といった選手もプロ入りを果たした。今年は、昨年までのW杯で活躍した、磯崎由加里(尚美学園大)、新宮有依(平成国際大)、六角彩子(侍)の埼玉栄高校出身の3選手が最終年となる。もしも彼女たちが揃って、来シーズンプロ入りを果たせば、さらにプロ野球界もレベルが上がり、注目も増すだろう。そしてアマチュアとの距離もより縮まるだろう。いずれは、アマチュアの選手全員の目指す先がプロであれば、それが本来のプロの姿であるだろう。

〈略〉

できるだけ長く女子野球を応援していたい。

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冒頭の通り、これは2013年に書いたものだが、それからもいろいろあった。気づけば、当時から知っていた選手やスタッフの大半は居なくなっており、新しい選手もたくさんいる。足を運ぶ機会もだいぶ減ってしまったが、それでも頭の片隅にはいつも女子プロ野球がある。

来年からどんな形になるのか。全く先が読めないし、どうなるか知る由もない。ただ願うことは、これからも彼女たちの溌剌としたプレーが、トップチームとして見られる快適な環境があり続けてほしい。

また、今回の騒動でネガティブな側面が流布してしまっているが、ここまで9年も女子プロ野球としての場所を提供し、知らなかった世界や魅力を伝えてくれた機構には、一ファンとして感謝しかない。また、これまで在籍した数多くの選手にもありがとうの想いでいっぱいである。


以上


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