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プラモの解説文:3(アーバレストM9カラー編)【作品メモ】

※2018年(?)ごろ、バンダイスピリッツから発売されたプラモデルの組立説明書に、賀東が寄稿した時のものです。キット付属のオリジナル武器などにまつわる内容ですが、新設定やキャラクターの証言などもあって、もったいないのでテキストだけ抜き出して掲載しておきます。

【1/60 HGアーバレストM9カラー】


ARX-7アーバレスト(M9カラー)
 極秘のはずのARX-7が白を基調とした彩色だったのは奇妙だが、これには理由がある。M9系の装甲素材は、おもにチタン合金・反応ポリマー・強化セラミックの多層構造で構成されており、表層部は超強靭の繊維強化ゲルによって保護されている。
 この繊維素材の色が「白」なのだ(実は未塗装のM9は、ARX-7と同じ色である)。この繊維素材は通常の有機塗料と相性が悪く、剥離しやすい性質を持つ。ラムダ・ドライバの発動時は特にそれが顕著だった。艦内での塗装は避けたいこともあり、TDD部隊は早期にARX-7のグレー塗装を諦めてしまったようである(不可視ECSがあれば、色はそこまで重要ではない、という実情もある)。

アーバレスト(M9カラー)


XL-2緊急展開ブースター
 そもそも陸戦兵器であるはずのASを「単独飛行させる」という発想そのものが異質であり、冷戦時代が終わった現代においても、この種の飛行ユニットは各国でほとんど運用されていない(英陸軍の「サイファー」シリーズだけが例外といえる)。ASという兵器を迅速に戦闘空間に投入する手段は、輸送へリや輸送機による空挺作戦が一般的である(運用法としては空挺戦車に近い)。
 かたやXL-2は、専用の大型輸送機に懸架されたASを、高度6,000m以上から切り離して飛行させ、100km以上奥の敵地に強行突入させるという「非常に限られた」特殊作戦用の装備だった。しかも片道だけの使い捨て。投入されたASは自力で帰還することができず、味方部隊の回収を待つしかない。
 たとえ高性能な第三世代型といっても、これはほとんど自殺ミッションといっていい。ましてや船のカタパルトからASを射出するなど、常識では考えられない用法である。なにしろカタパルトを装備しているのは米海軍の空母だけなので、陸軍所属のASのために、非常に高価な空母ユニットを危険を侵して敵の陸地に接近させる、という運用自体がありえない(ついでに言うなら、空母に間借りしているのは海兵隊なのに、その海兵隊にはM9が採用されていなかった)。当然ながら、この試作装備の頭文字が「✕(実験)」から『M(量産モデル)」に変わることはなかった。

XL-2


M9カラーと緊急展開ブースターについて語る
証言者:リチャード・マデューカス中佐(TDD副長)
アーバレストの塗装について
「密閉された潜水艦内で、有機塗料のスプレー塗装・・・。聞いただけで頭痛がしてくる。火災のリスクはもちろん、フル回転する空調設備は雑音を出す。
あのうさんくさいASをちょっと目立たなくするためだけに、艦を危険にさらすのは御免被りたかった」

緊急展開ブースターについて
「無用だと思った。〈デ・ダナン〉に蒸気カタパルトを搭載すること自体、私は反対だったのだ。故障や事故の原因にしかならないし、ひどい騒音を出すからな。
XL-2が必要になるような状況などないと思っていたが、不本意ながらそうはならなかった。いったい何度XL-2を使ったのか、よく覚えていないくらいだ。
艦長の慧眼には感服している」

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