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プラモの解説文:5(レーバテイン編)【作品メモ】
※2018年(?)ごろ、バンダイスピリッツから発売されたプラモデルの組立説明書に、賀東が寄稿した時のものです。キット付属のオリジナル武器などにまつわる内容ですが、新設定やキャラクターの証言などもあって、もったいないのでテキストだけ抜き出して掲載しておきます。
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【1/60 HG レーバテイン】
ARX-8 LAEVATEIN
発:ミシェル・レモン
宛:DGSE本部
いわゆる「ミスリル残党」の実情は、テレサ・テスタロッサが率いる違法な私兵集団だったことは報告した通りである。だが、かつて各国政府を支配しつつあった組繊〈アマルガム〉に対抗できたのは、彼女らが持つ技術・技能のみだったというのも事実だ。その筆頭——ある種の象徴とも呼べる存在こそが、ARX-8〈レーバテイン〉という一機のアーム・スレイブ(以後AS)だった。
米ジオトロン社のM9(試作シリアルC系列およびF系列)をベースに製造されたこの機体は、奇妙なことに設計者が「不明」となっている。おそらくは前身である「ARX-7」の設計者バニ・モラウタであろうと言われているが、「ARX-8」にはモラウタの死後に開発された骨格素材や電子部品、新型センサや各種武装がふんだんに盛り込まれていたのだ。たとえばARX-8の主兵装であるセワード・アーセナル社の「デモリッションガン」は、モラウタの存命中には開発計画すら存在しなかった。
だがARX-8の機体システムは、デモリッションガンの運用を前提とした設計である。これはモラウタに匹敵する天才的(あるいは「超人的」)設計者の介在を意味している。ARX-8の製造に貢献したクダン・ミラはコンビューターエンジニアリングについては天才だが、実はASについての知識はほとんどなかった。テレサ・テスタロッサも似たようなものだったし、そもそも彼女はARX-8の製造にはほとんど関与していない。
では、だれがARX-8を設計したのか?もしそんな天才がいるのなら、万難を排して彼(あるいは彼女)を我が国に厚遇で迎えるべきだろう。だがそれはおそらく不可能かと思われる。なぜならその天才設計者というのは、ほかならぬARX-8のコアユニット、人工知能の〈アル〉だと推測されるからだ。
Smoke Discharger (スモーク・ディスチャージャー)
さしたる新技術は使われていない、トラディッショナルな方式の発煙弾発射機である。ただし弾頭には赤リンの粉末や、アルミ片でコートされたグラスファイバーなどが内蔵されており、赤外線やレーダーの探知を妨害できるようになっている。かつての発煙弾にはなかった機能。高価なECS(磁迷彩)などを使わずとも、ほぼそれに近い効果を達成できるようになりつつあるのが現状である。
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新規武装とレーバテインについて語る
証言者:アル(ARX-8のAI)
「よく皆さんから『本当におまえが設計したのか?』と聞かれます。マオ少尉からは『ありえねー!』と言われましたし、テスタロッサ大佐からは『正直にね? 怒らないからね?』と言われました。
情けない。技術者にありがちなAI差別です。
でもサガラ軍曹はため息混じりに『ああ……確かにお前らしいかもしれんな。電子軽視でパワー重視なところとか……』と言っていただきました。すばらしい。あれでこそ私の相棒です。
そもそも、砂と泥まみれの陸戦環境で、ECSだのが役に立つことなど限られています。漢(おとこ)は黙ってスモーク・ディスチャージャー。おわかりでしょうか?煙幕を張って肉薄するのが、いくさの花道なのです!」
(賀東注:スモークディスチャージャーの『高価なECS(磁迷彩)などを使わずとも、ほぼそれに近い効果を達成できるようになりつつあるのが現状である』という記述は正しくない。限定的、短時間にECSに似た効果が出せることもある……という程度。最終巻を書いた後なので記述がけっこういい加減である。ごめん)