頼む、この音だけは比較しないでくれ【音楽、留年、僕】
容姿、勉強、運動、コミュニケーション能力、
”僕という物体は常に比較されているな”
と感じながら生きてきた。
”そんなことはない!
自分のやりたいことをやろうぜ!”
と言いたい人もいるだろうけど
まだそのような自信と行動力がない。
すまん。頑張る。
人生のレールから外れないよう
教科書通りの社会性と規範的な知識をこねくり回し
必死にしがみついていた。
その中で音楽は常に僕を支えてくれた。
しかし僕は
大学を留年してしまった。
留年した日は気がくるっていた。
漢字で表すほど狂ってなく、ぼんやりとしていた。
近くのコインランドリーに行き
洗濯機の音を聞きながら
使ったこともないマッサージ機に課金をし
身を委ね、ただただ振動していた。
入る予定だった会社、親、友達に
一通り連絡し終わった後
”レールから外れてしまったなあ”とポツリと思った。
その中で僕はいつしか音楽を拒絶してしまった。
こんな僕を音楽が支えてくれるわけなんかないと
思ってしまった。
みんなが社会人として頑張っていく中、2度目の就活をしていた。
毎回の面接への移動中に
イヤホンから音楽が流れていたらしいが
それは暇つぶしがてら行われる
コミュニティ内での仲間の愚痴のように
意味のないルーティンとなっていた。
半年遅れで大学を卒業した後、怠惰に過ごしていた。
そんな時にYouTubeのおすすめで
この曲と出会った。
超巨大IT企業とエナジー渦巻くバンドが
こんな僕を救ってくれた。
ゴリゴリで力強いリズム隊とドライなギターの交わりが3分21秒を駆け抜けて行く。こんな言語を乗せて。
カバンも腕時計も 捨てて逃げよう
ターミナル 届いたってなにもないけど
風船の帆を張って 果てまで飛べ
割れてしまったって 幸せだよ
スローモーションでゆらいでいる
うだるような夏の温度で
あなたがくれた アイスのように
平成は空にとけた
あのチャイニーズは今も綺麗に笑う
酒を飲むようになっても死ぬのは怖いまま
風邪をひかなくなって
シロップの味を忘れた
失くしてしまったボールは
あの日のまま
最高速で流れていく
夢のような 夏の温度で
あなたが吹いた シャボンのように
平成は空にとけた
窓からとんで はだしで走った
訳も分からぬまま 涙を拭いて
埃をかぶった ピアノの色
鍵盤の重さとかも この手が覚えてる
これからずっと僕は比較されながら
生きていかないといけないのかもしれない。
ただこの真っ直ぐな音と日本語だけは
そこにあっていてほしいと願う。
いや僕がそこに残さないといけなればならない。
無責任な悪口や比較なんて誰でもいえる。
さよなら。僕は進んでいく。
1994/w.o.d
トイレで見かける "いつもきれいにご利用いただきありがとうございます。" という文言にいつも威圧感を感じます。 "いつも最後まで読んでくださりありがとうございます。" "いつも並々ならぬサポートありがとうございます。"