十三夜
若いころから十五夜より十三夜が好きだった。
完全、完璧なものより少し欠けた方が良いと、古代の人が言い慣わしていたと聞いたからかもしれない。完璧にできた作品に古の職人たちは見えない所にちょっとした傷をつけたのだという。
常に完璧を目指して行く。けれど少し欠けたものを尊ぶのは日本人らしいのかもしれない。
今日の月は美しかった。
月の出を見てから、藤井風の武道館ライブを配信で見た。
23歳。若い。
驚くほどの才能に溢れている彼のライブはとても素晴らしく、今宵の月のように満月ではない初々しさがあり、愛おしく好もしかった。
ライブが終わり、冴えた光を放つ月を見ながら、ふと自分もこれから満ちていく月のようにありたいと思った。
実際は欠けはじめて衰えていく身だけれども。気持ちだけは。