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【映画】「万引き家族」と「混沌にして中立」

今、思想の左右に分裂して話題になってる「万引き家族」

リベラル派代表の町山さんは頓珍漢な養護の仕方をしたかと思えば、ネトウヨ代表の高須院長もこれまた観ずに叩いてるのがわかりやすい批判をしている。

思想の左右に分断されてこの映画を批評しているのだ。

と、そんな中こんなnoteを目にしたのでリンクにしておきたい。(

この記事の中で目に入ったのが

 「彼ら」を二元論で裁いたり許したりすることができないのと同様、社会もまた灰色の混沌であるということなのだと思います

という文章だった。

ふと俺はそんな中、ダンジョンアンドドラゴンズの「アライメント」の中での一つの「混沌にして中立」という属性を思い出した。

ダンジョンアンドドラゴンズは日本のRPGにも大きな影響を与えたTRPGであり、アライメントとは一種の属性である。

混沌にして中立の属性は「無政府主義者」または「自由なる者」と呼ばれる。この属性を持つキャラクターは、自分自身の関心に従う個人主義者で、一般に規則や慣習を避ける。彼らは自由の理想を促進するが、まず第一にあるのは自分自身の自由である。善悪は彼らの自由に対する必要性の二の次であり、彼らに関して確かなことは彼らが全く信頼性に欠けるということだけだ。混沌にして中立なキャラクターは自由奔放であり、不必要に他人を苦しませることは好まないが、彼らがグループに加わる場合、それはそのグループの目的がたまたま今のところ彼らの目的と一致するからに過ぎない。


とウィキペディアではされている。

海外ではすっかり一つの文化になっており、ダンジョンアンドドラゴンズの壁を越えたジャンルとして愛されている。

そんな中、ふと万引き家族の主人公たちはそんな「混沌にして中立」の典型例だなぁと感じた。

彼らに法というルールは存在せず、順守する気すらない。

他人の命を奪うことはしないが、財産を奪うことにも躊躇がない。

彼らは決して悪ではないが、善でもない。

秩序を守る気もなく、世の中をよくする気もない。

この映画を観た感想としては正直「この家族が周囲にいたらかかわりたくない」と感じてしまった。

しかし、彼らには「優しい底辺」というオーラがありいつの日かもしかしたら彼らの仲間入りをしてしまうかもしれないという恐怖を感じた。

彼らを「悪」と断じる気はないが、彼らを無条件に肯定したくもないそんな生ぬるく優しくそして恐ろしい地獄の釜の中を見てしまった気がした。

そして、俺が大好きな「架空世界の悪党図鑑」の中には「全部ダメ型悪役」という概念がいた。

その悪役というのは賢くなく美学もなく強くもない、ただひたすら何をやってもダメだがそのダメの沼に周囲を引き込むかもしれないという存在だった。

俺はこの映画のリリー・フランキー演じる父親がそんなダメな世界に子供を引き込んでいる堕天使にすらみえた。

僕にとってはある意味「冷たい熱帯魚」や「黒い家」や「ゴーンガール」よりも恐ろしいホラー映画にすらみえた。

彼らを断罪するのも養護するのも、そして忘れてしまうのもいけないことだと思う。

「地獄は善意で舗装されている」といわれているが、この映画はそんな地獄にすらみえた。


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