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【映画】イマイチしっくりこないホラー映画の古典「魔人ドラキュラ」
ドラキュラといえば、数えきれないほど多くの国々でリメイクが多く作られている作品である。
そんな中でも多くの人々から古典映画として愛されているのが偉大なるベラ・ルゴシ主演の「魔人ドラキュラ」である。
古典的モンスター映画といえば割と「キングコング」や「初代ゴジラ」や「フランケンシュタインの花嫁」のように数多く時代を超えた面白い傑作を生み出していることで有名なジャンルでもある。
さあ、そんなチョー有名作である本作だが…出来は正直イマイチであったりする。
現代の映画と古典映画と比較してどうこう言うのは非常にバカバカしいので比較はしないが、本作ができた1931年以前の1922年に作られた吸血鬼ノスフェラトゥの方がはるかに面白いだろう。
まずベラ・ルゴシのドラキュラだがいかにも英国風の芝居がかったドラキュラだが、いかにも悪魔的な「吸血鬼ノスフェラトゥ」のマックス・シュレック演じるドラキュラと比較するとあまりにも人間臭く迫力に欠けている。
それどころか宿敵のヘルシング教授に涼しい顔で退けられているあたりに大物さをあまり感じない。
それどころか今日日ではインフレを起こしてきて食傷気味な「牙で人間を襲うシーン」は一切なく気が付けば人が死んでいるという体たらくである。
当時、これといったホラー映画のなかったアメリカ人向けに作られた映画であることは重々承知であるが…正直本作のドラキュラをみて吸血鬼にあこがれる少年少女(いるのか?)は皆無だろう。
本作を観てドラキュラよりもインパクトに残るのは彼に洗脳されて頭がおかしくなった狂人レンフィールドの方で、こちらは現代にも通じる狂人演技で見ているものを圧巻とさせることができる。
本作のレンフィールドの狂人演技のみが「吸血鬼ノスフェラトゥ」を超えているのではないだろうか。
その後、ルゴシは晩年イメージ脱却に苦労しそのキャリアの末期は史上最低の映画監督であるエド・ウッドと数作品を組んだだけで終わってしまい1956年に73歳でひっそりとなくなってしまうのだった。
今の時代にルゴシが生きていればコミコンなどで当時のファンと昔の話で盛り上がっては、アニメ声優などをしながらほそぼそと生きていくこともできたかもしれないが…悲しいことに当時はホラー映画は良くも悪くもキワモノとして扱われていたのだ。
まあ、そういう感じで本作はその歴史的価値と反比例するぐらい出来はイマイチであり、今のスピードある吸血鬼になれてしまった観客では怖さが伝わりにくい存在になってしまっているのではないだろうか。
同じユニバーサル映画のモンスター仲間でももっと面白い映画は山ほどあるぞ。
とはいえ、本作が与えた影響力は尋常ではない。
本作以降ドラキュラ伯爵といえば黒いケープに身をまとった東欧風の紳士として描かれることが安定してしまった。
さらにその後イギリスのハマープロで偉大なるクリストファー・リーによって作られた「吸血鬼ドラキュラ」シリーズ(こちらの方が面白い)でそのイメージは決定的になっていったといえるだろう。
クリストファー・リー扮するドラキュラ伯爵は圧倒的に恐ろしく、威厳がありそれでいて美しい…何よりも感情移入が一切できない純粋な悪の大魔王として君臨している。
現代的なドラキュラのイメージはむしろ彼が作り上げたのではないだろうか。
と考えればますます不遇な映画である。