【特集】もう一度観たい、やばいB級映画 第二回「ハリウッド人肉通り」【ネタバレ注意】
この地上には腐るほど映画がある。
中には駄作もあれば、傑作もある。
しかし、世の中には「出来はよくないけど何か印象に残る」という映画が絶対にあったりする。
思えば俺が映画をみてしまうのはそういうのをみたいからなのかもしれない。
今回紹介するのはある意味映画の歴史に残る映画の一つだった「ジャージーデビルプロジェクト」だ。
しかし、今回はそういった物が全く残らないであろう映画である。
これこそ本当の「B級映画」なのかもしれない。
ストーリーはハリウッドで活躍するフリーの映像ジャーナリストだ。
しかし、扱うネタは目の前で起きる犯罪などの生の映像である。当然そんな仕事をしているので生活は荒んでいる。
ジャーナリストというのは名前だけで、カメラで映像を撮ってるだけで彼には崇高な使命は何一つとしてない。
仕事といっても収入は安定せず、ボロボロのマンションに電気もつけず仕事がない日(といってもほぼ仕事がない)はタバコを吸いながら酒を飲むというアルコール依存症だ。
おまけに倫理はまるでなく、目の前で女性がレイプされてもお金の種にしかならないので頭の中で小銭の音がして喜ぶというサイテー野郎だ。
別れた妻からはさんざんなじられ、数少ない顧客(あきらかにカタギではない)からはゴミだのなんだのといわれて凹み、見た目はみすぼらしく体格はチビデブというどうしようもないやつだ。
ちなみに吹替はゲイリー・オールドマンの吹き替えで有名な辻親八さんだ。
ジェイク・ギレンホールのナイトクロウラーでこういった犯罪ネタ専門のフリージャーナリストが話題になったが、恐ろしいリアリティがあったのはこういった生活をしている人間が本当にいるからなのだろう。
しかもこの映画はナイトクロウラーよりはるか前に制作されている、ゴミ映画と名作は薄皮一枚なのだ。
いきなり、女性の悲鳴が聞こえたのでカメラと一緒に薄暗い路地にかけこんだ彼。
そこにはなんとホームレスの集団が女性を食い殺すという尋常ではない光景をみた、主人公はあわててカメラをまわすが肝心の映像をとれていなかった。
馴染みの顧客からはバカにされアル中の気印扱いされてしまう。
腹の虫が収まらない彼だったが、取材を進めていくうちに老ホームレスから「ゾンビ集団の名前はグール」「警察も手を焼いている」「この周辺をうろつけばそのうちやつらが現れる」という風に明かされる。
どうしても人食い集団が気になる彼は友人を説得して、銃を手に入れ彼らを追いかけようとするが友人は途中でさらわれてしまう。
主人公は友人を置いて逃げてしまい、元妻の家に駆け込むが相手にされず追い出され途方に暮れていたらなんとしつこい知的障害者にカメラを強奪され、気絶させられてしまう。
気を失っているうちにグールに捕まっていた彼、友人と再会を果たすが全身の皮を剥がれ気が付けば死んでいた。
彼は生き延びるため、友人の仇をとるため下水道から逃げようとする。
なんと彼らは怪物やゾンビではなく普通の人間でただ人を食い下水道で生きていただけでしかなかった。
グールたちには妻がいて、子供もいた。男どもは殺したので女子供しか残っていなかった。
女性は赤ん坊をあやしながら命乞いをする、しかし彼には他人の命乞いを聞くだけの余裕などなかった。
ためらうことなく銃を撃ち、母子を射殺する彼の頭の中にはもうなにもなかった。
下水道を出た彼はカメラを奪った知的障害者を捕まえると殴り飛ばし、カメラを取り戻す。
しかし、そこにはなんととんでもないものがうつっていた。
知的障害者の男は
女性をレイプして殺すのを楽しむ殺人鬼だったのだ。
彼はその映像を顧客に売り飛ばす、男は大喜びでそれを買い取る。
主人公は大金を手にしたが、不満そうな顔をしていた。
大金を手にしても、彼がこれで生きていくことには変わりがないからだ。
寂しい風がハリウッドを包んでいく、まるでグールも知的障害者の殺人鬼すらも主人公すらもこの魔都にとってはどうでもいい存在なのかもしれない。
確かに映像はチープでカメラは粗い、しかし主人公のクズさやそのリアリティは白眉の出来だ。
後半で出てくる知的障害者に至っては本物の知的障害者を使って撮影している。
さらに言うとこの映画には本当の殺人映像があり、こういう仕事をしている人間がそういった映像を撮影しているという伏線にもなっている。
ポリコレをうたうハリウッドだが、その中身は今も昔も変わらない。社会のクズが集まり娯楽を作っているだけでしかない。
とはいえ、この映画は10年以上前の映画で今やスマホで衝撃映像なんかいくらでも作れる時代だから彼らのような人間がいまだに生きているかは不明だ。
しかし、さらにこれは自分語りになるが、実はかなり近いような仕事をしていた経験がある。
今から数年前に勤めていた会社が動画マーケティングをしていた。俺はそこでYoutubeの動画制作をしていた。
しかし、ある仕事といえばネットにある映像やラジオなどをコピペして切り貼りする動画を作るだけの仕事と呼べるかどうかすら怪しいものだった。
一番再生数が上がるのは中国・韓国ネタ、そして芸能人のゴシップがほとんどだった。
ガッカリした俺は仕事をやめ、そこから立ち去った。
今検索すれば当然会社はつぶれていた。
そう考えるとハリウッドだけの話ではなく、日本でもあるのかもしれない。
さらにいうとこの映画実は今渦中の中にあるジェームズ・ガンが制作にかかわっており全身の皮を剥がれて殺される役を演じていた。
ポリコレに潰された彼が、ポリコレからあぶれた映画を撮っていたのは驚きだ。
今、ガーディアンズオブギャラクシーから降板されディズニーから絶縁された彼だが再びこういうクズ映画を作ってほしいものだ。