無題

後味悪すぎ恐竜映画「ダイナサウルス」【ネタバレ注意】

コナン・ドイル原作の「失われた世界」を題材にした映画は数多くあるが、本作ほど異色な映画は少ないのではないだろうか。

まず「ロストワールドジュラシックパーク」への便乗をした本作は随所あれへのオマージュがみられる、終盤に出てくるコンピーの群れが襲い掛かって人を食い殺すシーンがそれを雄弁に物語っている。

本作とあれの違いはCGがへぼいところだろう(笑)

さらに「失われた世界」を原作にしているが、忠実だったのは冒頭から中盤までで後は完全に別物に代わっている。

南米にあった「失われた世界」は本作ではモンゴルとシベリアの間に残っていた高山であることから、さらに異次元さが増している。

なかなか雪寒い景色の中、恐竜がうろついてる光景はいい意味で気味が悪い。

そして、一番の違いは原作の登場人物と映画のそれは名前こそ同じだがほとんど別物といっていいほど性格が変わっている。

例えば原作の主人公のチャレンジャー教授は原人のボスと勘違いされるほどの巨漢でアナコンダに襲われても返り討ちにしたり、冒頭で主人公に襲い掛かるほどの野蛮さの持ち主だったが、本作ではただただダンディな男前で理知的な紳士である。

サマリー教授も原作ではチャレンジャーのライバルであるが、素直に自分の偏屈さを認めるなど好感の持てるナイスミドルであったが、本作では終始グチグチ文句をたれる陰湿的なジジイで見た目もジョンブルでこんなところに来るのは間違いだぞとしかいいようがないやつだ。

ちなみに本作でサマリーを演じたマイケル・シネルニーコフはのちに連続ドラマ化した「失われた世界」で同役を演じている。

1番違うのはハンターのロクストンで、原作では自然の厳しさを知りいざというときには頼れるいい人だが、本作では粗野でおまけに目的のためになら平気で他人を殺そうとする狂人として描かれている。

さきほどもかいたように、大体は原作の祖筋のままだ。

恐竜がいる謎の土地の存在を知ったチャレンジャー教授は探検隊を率いて「失われた世界」へと踏み込むことになった。

チャレンジャーを狂人とチクチク揶揄するサマリー、発見者であるホワイトの家族である女性科学者、新人記者のマローン、有名なハンターであるロクストンたちが参加することになった。

現地でモンゴル人のガイドとして姉弟を雇うことになったチャレンジャー一行だったが、途中でモンゴル人の弟が死んだり、原人たちの妨害にあったり前途多難なことが相次いだがようやく恐竜のいる土地にたどり着く。

とはいえ、乗っていた気球が故障してしまい使えなくなってしまうのだった。

しかし、恐竜をみつけるや否やロクストンは強欲な本性をみせチャレンジャーたちを縛り上げながら利益の独占をしようとするが・・・一行の逆転で巨大ワニの住処に転落して消えてしまうのだった。

一行は「なんとかなったねー!!!」と安心して1夜を過ごすが、サマリーが原始人の一行で薬のついた吹き矢を食らい発狂して寝床から逃走してしまうのだった。

サマリーがいないことに気が付いた一行は彼を探しに行く。

そんなサマリーは森の中をさまよう中、とうとうティラノサウルスに出会ってしまう。


しかし、ここもつっこみどころなのだが二本指しかないティラノサウルスがなぜか三本指の持ち主だったりするのだ。

サマリーは感慨の声を一度あげるが、むなしく五体をバラバラに引き裂かれ惨殺されてしまうのだった!!!

一行はサマリーの死体を発見し、悲鳴をあげる。

この死体がやたらとえげつなく、免疫のない子供が見たらトラウマ間違いなしのグロさをしている。かくいうこれを書いてる俺も子供心にかなりショッキングだったことを記憶している。

さらに、ティラノサウルスによってギリギリ故障してる程度だった気球もズタズタに引き裂かれておりもう一行はどんよりである。

やがて一行は、行方不明になったはずのロクストンが仕掛けたダイナマイトで寝床の洞窟を破壊されてしまい陸上をさまよい歩くことになる。

ちなみにロクストンは転落死して、死亡しちゃうのだった。

と、不幸続きの一行だったがマローンはガイドの女性とすっかり仲良くなりキスまでする仲になっていた。

彼女との愛を深め合うマローン。

彼だけでなく、チャレンジャー教授も女性科学者と仲良くなっている。

ピンチなはずなのに微笑ましい雰囲気で包まれている一行だったが、気球の破片と爆薬を使いパラシュートにして降下して逃げることを思いつくのであった。

さっそく、行動しようとしたが・・・なんと突如小型恐竜の群れが襲いかかってくるのだった!

一行はあまりのキモさにドン引きで思わず逃げ出してしまい、さらにガイド役の女性が大怪我をしてしまうのだった。

彼らは小型恐竜があがってこれない岩の上に逃げ、小型恐竜が逃げるのを待っていたが・・・なんと最悪なタイミングでサマリーを食い殺したティラノサウルスが襲い掛かってきたのだった。

ガイドの女性は岩の下に転げ落ち、待ってました!といわんばかりに小型恐竜に貪り食われながらティラノサウルスに小型恐竜ごと食いちぎられるという悲惨極まりない末路を迎える。

「よくも!!!よくもおおおおお!!!」

仲良くなった彼女を殺されたマローンはブチギレてしまい、錯乱しながら爆薬を使い特攻をしかける。

その隙に生き残ったチャレンジャーと女性科学者はパラシュート降下を成功させ、ロンドンに帰る。

二人はこの地に足を踏み入れさせないために、恐竜の存在を隠しとおすことに決めた。

これ以上悲劇を出すわけにはいかないからだ。

一方、生きていたマローンは「ロストワールド」でボロボロの浮浪者のような姿になりながらもなんとか生きていた。

だが、昼間は恐竜におびえ隠れこそこそと生きていくという何ともみじめな人生を歩んでいる彼の姿は物悲しいものがあった。

愛する女性を失い、文明社会からも戻れなくなった。

つまり、すべてを失ってしまったのだ。


彼は恐らくこの騒動の1番の被害者だったのだろう、主人公であると同時に。

ジャーナリストであった彼はつけていた書記を崖下に捨て、一人失われた世界をさ迷い歩くのであった。

「マローンは死んだ、今の俺はなんでもないただの空虚な存在だ…。」

そういうと、彼は失われた世界の中に消えていくのだった。

さあ、以上が本作「ダイナサウルス」の内容である。

CGの出来はへぼくジュラパシリーズどころか、同年にあったゲーム「ディノクライシス」以下の出来だが・・・本作「ダイナサウルス」にはジュラパにもディノクライシスにもない暗く陰惨で退廃的な印象が目立つ映画だ。

実際にグラント博士のような知恵者もディノクライシスのレジーナのようなスーパーヒロインもいない、本作はただただ愚鈍で愚かな人間が恐竜や原始人に蹂躙されて死んでゆく無情さを徹底的に描いたという意味では他の作品とかなり変わった作品になっている。

本作の後味の悪さ・救いようのなさはある種オススメだ。

しかし、本作VHSしかないので残念だが今の日本では拝めない幻の作品になっている。

もしも、持っているという人がいるなら機会があるまでちゃんと保存しておいてほしいのである。








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