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【100の職種プロジェクト】第12回 内部障害×マーケター、eスポーツアスリート、データサイエンティスト

100の職種プロジェクトは、社会で働くさまざまな障害や特性がある人たちが、どんな職種や業種でどのように働いているのかインタビューし、障害種別・特性と職種・業種をかけ合わせた100通りの働き方を発信するプロジェクトです。個人が診断を受けている障害名に左右されず、それぞれの経験や環境に着目しながら、多様な人たちの働き方・環境について発信しています。

第12回は、マーケターやパラeスポーツアスリートを経て、現在はデータサイエンティストとCMOを兼任されている、有馬(仮名)さんにお話をお伺いしました。


有馬さんの障害について

Q:有馬さんの障害について教えてください。

私は4万人~5万人に1人の割合で発生すると言われる、プルーンベリー症候群という内部障害を持っています。

プルーンベリー症候群(prune-belly syndrome)
腹筋欠損,尿路異常,および腹部停留精巣で構成される症候群である。
プルーンベリー症候群(prune-belly syndrome)という病名は,新生児の腹壁に観察される皺のよった特徴的な外観に由来する。この先天性症候群は,一部の例外を除いて主に男児に発生するが,原因は明らかにされていない。

『MSDマニュアル』より

主な特性としては、腹壁筋欠損といって腹筋がありません。生まれた時から腹筋がないので、トイレの我慢ができないんです。自分で排尿ができなくて、カテーテルを使うので、昔は年に3回ぐらい尿路感染症になって、入退院を繰り返していた時期もありました。
あとは障害が原因で免疫が弱いので、長時間外で動き回ったりするのが難しいです。学生時代に、インターンで警備会社の現場の仕事をすることになったんですが、警備をしていたら、腹痛で倒れちゃってドクターストップが出ました。それで警備会社はインターンの段階で辞めることになって、別の会社に新卒で入社することになりました。

キャリアについて

Q:まずは有馬さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

新卒で、広告代理店にマーケターとして入りました。そこで4年間勤めた後にeスポーツアスリートとして転職しました。そこでも4年間ぐらい働いた後に、別会社でdxエンジニアになり、今はデータサイエンティストをしながら、別の企業のCMOとして働かせていただいてます。CMOをしている会社は、新卒で入った会社の後輩が企業して、ちょうど私がデータサイエンティストを目指したタイミングで、声をかけてもらいました。

Q:新卒で広告代理店に就職されたとのことですが、その企業を選んだ理由はなんですか?

私は経理職がやりたかったんですが、現場がある会社に関しては経理職も現場経験が必須になるところが多いんです。インターンしていた警備会社も経理職で内定をいただいていたんですが、ドクターストップがかかってしまって辞退せざるを得ませんでした。 それで、経理職が難しいなら総合職として入ろうって思ったのがきっかけで、広告代理店に総合職として入りました。最初からマーケティングをやりたかったわけではないんですが、入社後の研修で所属がマーケティングになりました。

Q:広告代理店の業務内容について教えてください。

業務内容は、ウェブ広告のSEOやリスティング広告などを全般的にやっていました。海外の方とやり取りする部署だったりとか、直接お客さんとやり取りする部署だったりと3ヶ月に1回ぐらいチームが変わりながら、その時によって仕事の内容も変わりました。新卒で配属されてからずっとマーケティング部で働いていたんですけど、月単位で新しい媒体だったりとか、アルゴリズムが変わったりする度にその波に合わせるようにチームが増える会社でした。

画像には、開いたノートパソコンが木製の机の上に置かれています。ノートパソコンの画面には「ONLINE ADVERTISING」と大きく書かれており、その上下に円グラフ、メールアイコン、ネットワークアイコン、店舗アイコン、矢印のグラフ、メモ帳、虫眼鏡、大学の卒業帽などのアイコンが並んでいます。ノートパソコンの左側には小さな緑の植物が植木鉢に入って置かれています。背景には白い椅子とテーブルがぼんやりと見えます。

eスポーツアスリートへの転職とその後のキャリア

Q:その後eスポーツアスリートとして転職をされたということですが、転職をしようと思ったきっかけはなんですか?

私が新卒で入った会社は、障害の有無に関係なくチームで一緒に働くんですね。それで、聴覚障害や視覚障害の社員が、チームにうまく馴染めないというか、お互いコミュニケーションの仕方が探り探りだったので、だんだん距離が開いちゃったんです。例えば、飲み会で聴覚障害の方だけ外されちゃうとか。

そういう話を障害当事者の社員から聞いていたので、現場の課長に相談したら、私や他の社員からヒアリングする時間を設定してくれたんですね。でもその話し合いをしていくうちに、障害当事者の社員が疲れて休職してしまうことがあったんです。それで上司に相談しても解決にならないと思って、だったら自分が障害当事者として発信力だったり何かパワーをつけたいと思ったんですね。
そのタイミングで、パラeスポーツアスリートの求人がたまたまあって。応募したら受かることができてみたいな流れになります。

Q:eスポーツアスリートの選考ステップは具体的にどのようなものでしょうか?

まず最初に、求人サイトに登録している人全員に対してアンケートが配られて、 これまでのeスポーツ歴と、大会参加の実績などを答えました。そして一定の合格ラインを満たしてる人は、一次面接に進んで、最終的に五次面接までありました。

その会社はアスリート雇用と障害者雇用とプロゲーマー雇用の全部が初めての会社だったので、面接ではeスポーツとはそもそもどういうものなのかを、面接官と会社の社長にプレゼンテーションしました。他にも障害者雇用をするうえで、自分がどういう配慮をしてほしいかとか、そもそも障害者雇用とはみたいなところもプレゼンテーションさせてもらって、面接の半分ぐらいはプレゼンでした。

Q:eスポーツアスリートの業務内容について教えてください。

最初は大会への参加やチーム活動から始めて、後半はイベントや学校への登壇、インタビュー活動やコミュニティの運営などを行っていました。活動を通じて会社の広報活動、障害者雇用の新しい形を発信する事が目的でした。タイミングによってはライターとして記事を書き、webメディアで自身の活動を発信していた時期もあります。

4人のeスポーツプレイヤーが一列に並んで、パソコンの前に座っている様子が映っています。全員が青いチームユニフォームを着用し、ヘッドセットを着けています。左から2番目のプレイヤーは両手を挙げてガッツポーズを取り、勝利を喜んでいます。右端のプレイヤーは拍手をしながら笑顔を見せています。他のプレイヤーもそれぞれ歓声を上げており、全体的に非常に興奮した雰囲気が伝わってきます。背景には赤レンガの壁が見え、会場の雰囲気を強調しています。また、パソコンやケーブルが複雑に配置され、プレイヤーたちの集中と熱意が感じられます。

その後は、自分もエンジニアになりたいと思ったのがきっかけで、eスポーツアスリートを辞めてエンジニアになりました。そのきっかけはアスリートとして働いていた会社です。その会社はエンジニアが結構多い会社だったんですね。みんなエンジニアだと、社内で友達ができても日常会話でエンジニア用語が頻繁に出てくるんです。なかなかそこに私がついていけなくて、話が盛り上がらないこともありました。あと単純にエンジニア用語を使ってるのがかっこいいなと思ったんです。その後エンジニアも辞めて、今は会社の役員と兼任して別の会社でデータサイエンティストをしてます。

Q:データサイエンティストの業務内容はどういったものですか?

最初はKaggleやSIGNATEなど「データサイエンスコンペ」への参加が中心でした。

データサイエンスコンペ(データ分析コンペティション)
データ分析の技術を競う競技会のこと。このコンペティションでは、参加者が特定のデータセットを使用して、与えられた課題を解決するためのモデルを作成し、その精度や有効性を競う。

案件に移行するようになってからは、課題抽出を目的としたお客様へのヒアリングから始まり、具体的な予測モデルの作成を行いました。案件によってはお客様自身で数字の管理を行えるように、BIツール(データを分析・可視化して、経営や業務に役立てるソフトウェア)を使って、数値の進捗を追える仕組みを作るご支援をさせて頂いた事もあります。

画像の中心には白いタブレットがあり、データやグラフが表示されています。タブレットの画面には、円グラフや棒グラフ、折れ線グラフなどが表示され、誰かの指が画面を指し示しています。テーブルの上には、書類、ペン、クリップボード、コーヒーカップが置かれており、ビジネス文書の一部が見えます。タブレットを持っている人の腕は、白いシャツと紺のジャケットを着ています。周りには2人の人物がタブレットを覗き込んでいます。

Q:これまでの会社や現在働いている会社で受けている合理的配慮はありますか。

特に夏の時期は汗をかいてお腹が冷えて、お腹を下しちゃうと自分で排便のコントロールができないので、暑い時期はなるべくリモートの仕事を増やすとか、会社によってはトイレに使用済みのカテーテルを捨てるためのゴミ箱を設置してくれたところもありました。それから、なるべく土日に通院するようにしていますが、予定があって休日に通院できない時は、平日に通院しやすい配慮をしてくれました。

障害者雇用ではあったんですが、自分の障害をオープンにしようって思ったのが、新卒で4年間働いた会社を転職してからなんです。新卒の時は、自分の障害はどちらかというと隠していました。面接の時の上司とか、上層部は知ってるぐらいで、同じチームの人たちは自分が障害者だって知らない人が多かったです。転職して社会人5年目になったぐらいから、自分の障害を発信するようになりました。

Q:どうしてご自身の障害を発信されるようになったのですか?

転職活動をする中で、障害者雇用として働く上で障害を伝えることが個人的に大事なのかなと思うようになりました。一般雇用として働いていた時も、自己紹介でプルーンベリー症候群という障害を持っていて、カテーテルを使っています、みなさんにご迷惑をおかけすることとしては、暑さに弱いので発熱したりとか、電車でもおなかを壊すことがありますみたいな話を自分から伝えていました。そうするとそれが伝わって、周りの理解が進んでより働きやすくなり、仕事がすごくスムーズに進むようになったんです。それからは入社した時に、どういう障害を持ってるんですかって聞かれる前に、なるべく自分から自己発信するようにしてます。

画像には、6人のビジネスパーソンが長方形の木製テーブルを囲んで会議をしている様子が写っています。テーブルの中央に近いところで、笑顔の女性が立ち上がり、向かいに座る男性と握手をしています。女性はベージュのセーターを着ており、男性はメガネをかけた短髪で、茶色のセーターを着ています。周りには他の4人の参加者が座っており、それぞれ笑顔でその様子を見守っています。テーブルの上には、ノートパソコン、メモ帳、ペン、コーヒーカップなどが置かれています。背景には、壁に設置されたコルクボードがあり、たくさんのカラフルな付箋が貼られています。

学生へのアドバイス

Q:障害のある学生に向けてアドバイスをお願いします。

学生時代とか、別に学生時代じゃなくてもいいと思うんですけど、自分の好きなことを見つけてどれだけ真剣に取り組めたかで、ある程度これからなりたい自分に近づけるんじゃないかなと思っています。
私は学生の時、ゲーム以外はほとんどやってこなかったんですけど、それでも社会人として働けているので、楽しい、やりたいと思ったことを見つけて、それにチャレンジしていく気持ちと、取り組みたいことを見つけたら真剣に取り組むことの2つが大事なのかなと思います。

今回はネガティブな話とか失敗談はしてなかったんですけど、私もそれこそ障害が原因で就活や仕事で失敗したことはたくさんあります。全部腹痛系なんですけど。でも最後は私も楽しんで就活というか転職活動ができたので、就職活動が大変だって今思われてる方は、就職活動が楽しくなってほしいなって思います。

Q:有馬さんはどうして転職活動を楽しめるようになったのでしょうか?

1回自分の障害を発信してみたことが大きいかもしれないです。自分の場合は、障害を人に伝えるときに、こういうことがあって嫌だったんですって伝えるよりは、こういう経験があって辛かったけど面白かったよみたいな発信を繰り返してたら、いつの間にか発信することに対して抵抗がなくなっていました。発信に抵抗がなくなったら、次はなるべくポジティブに面白いと思ってもらえるように話そうって思うようになって、今はそういう自分のネガティブな話を人に話すのが大好きになりました。

自分は仕事で障害を発信をする頻度が増えて場数を踏む機会が増えたから、今は慣れてるっていうのもあるんですけど、 そういう仕事じゃなくても、社会人だったら、新しく後輩が増えたりとか、先輩が増えたりとか、部署が変わったりとか、そのたびに自分の障害を発信する機会が発生する気がするんです。その時に、ちょっと勇気を出して自分の障害を発信できたら、相手も自分と接する時に接しやすさが変わったりするのかなと思います。

もちろん人によってはなかなか伝えづらいとか、したくないって方もいらっしゃると思うので、おすすめはできないかなとは思いつつも、それに苦を感じない方であれば、発信されてみてもいいのかなと思います。


いかがでしたか?転職を重ね、キャリアを積んできた有馬さんだからこそ気づいた、障害特性を周囲に伝えることや、何事にも全力で向き合う姿勢など、働くうえでの大切なことを教えていただきました。
インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!


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この記事を書いた人

筆者紹介。左側にデフォルメされた茶髪の男の子のイラストがある。右側に名前と紹介文がある。名前はぺーで、紹介文は次の通り。筋ジストロフィーで電動車いすユーザーの大学4年生
爬虫類(特にヘビ)が好きで車いすでも入れる爬虫類カフェを捜し求めています。

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