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ネット不動産解禁から1年。不動産DXの現状

こんにちは。GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)グループ PRチームです。

いま大きく変わりつつある不動産業界に関する情報をお届けするマガジン「オープンファクトブック」。不動産業界のニュースや課題、業界を知る上で欠かせないキーワードなどを解説します。

今回のテーマは、「ネット不動産解禁から1年。不動産DXの現状」です。不動産業界はDXという観点で2022年5月18日に大きな転換期を迎えました。その日、改正宅地建物取引業法(以下、「宅建業法」)が施行されたのです。その転換点から来月でちょうど1年。今回のオープンファクトブックでは、アナログだと言われてきた不動産業界に昨今どのような変化があったのか紹介します。

改正宅地建物取引業法の振り返り


前提として宅建業法の改正は、デジタル改革関連法に含まれる「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(※)が2021年9月に施行されたことがきっかけです。個人情報保護制度の見直し、マイナンバーの活用、押印・書面の交付等を求める手続きの見直し等が行われました(※1)。その中で宅建業法は「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」が対象となり、電子交付関連において、売買の媒介契約書(34条)、売買及び賃貸借契約の重要事項説明書(35条)、売買契約書及び賃貸借契約書(37条)が改正となりました(※2)。

(※)「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」はデジタル社会の形成に関する施策を実施するために必要な整備をする法律。

デジタル庁「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の概要」を参考

詳しくは、宅建業法改正の前にオープンファクトブックでも変更点についてまとめているので、改めてご参照ください。

宅建業法改正によって何ができるようになったのか


この改正によって、宅地建物取引において押印・書面の交付手続きの見直しや、対面や郵送が必要であった契約手続きなどの規制が緩和され、オンライン完結型の不動産取引サービス「ネット不動産」(※)が解禁されました。そのため不動産取引は、物件の検索、商談、ITを活用した重要事項説明(以下、「IT重説」)・重要事項説明書の受け取り、契約書の締結まで、全ての手続きをオンラインで一貫して行えるようになりました。

(※)ネット不動産:オンライン完結型の不動産取引サービスのこと。2022年4月に株式会社GA technologiesが定義

重要事項説明書・契約書の書面での交付や押印には、改正前の宅建業法では対面や郵送・FAXなどが義務付けられていましたが不要になり、不動産取引はよりスムーズで便利なものへと変化しました。

不動産業界各領域におけるDX関連の取り組み事例


ここからは宅建業法改正後、不動産業界においてどのような変化があったのか、各社のDX関連の取り組みの事例を紹介します。

1.ディベロッパーの例

住友不動産株式会社は、宅建業法改正にあわせて、新築分譲マンション・分譲戸建の売買契約において全物件で電子契約を導入しています(※3)。宅建業法改正以前にも行っていたオンライン見学会やIT重説に加え、契約もオンライン上で完結することが可能になり、住宅購入の利便性を上げています。

このような電子契約は、多くの総合ディベロッパーでも同様に導入されています。さらに、オンライン上での物件購入の利便性をより高めるため、電子契約に至るまでの手続きでも幅広くサービスが展開されています。

例えば東急不動産株式会社は、アクセンチュア株式会社と協業してデジタルツイン(※)を活用したマンション販売を行っています(※4)。住戸内からの景観の見え方、日影などをデジタルツインの技術を活かし、モデルルーム見学と遜色ないサービスを提供しています。

(※)デジタルツイン:IoT等を活用して現実空間の情報を取得し、サイバー空間内に現実空間の環境を再現すること。

総務省「情報通信白書令和3年版」第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済より引用

また、物件検索段階でのユーザーの利便性を高め、オンライン上での物件購入ができるような取り組みも進んでいます。

株式会社オープンハウス・ディベロップメントは、⾃社で建設・販売する分譲マンション物件のオンライン販売サービスを提供しています(※5)。間取りや価格、ハザードマップなど、従来は店舗にて営業スタッフが渡していた資料を、24時間いつでもどこでもオンラインで入手できます。

2.不動産賃貸管理・不動産売買仲介の例

株式会社レオパレス21は、以前から進めていた不動産取引のDXを進め、個人向け電子契約サービスの範囲を拡張。連帯保証人契約を除き、他社の仲介による部屋の契約・短期プランなど全ての契約でオンライン上での手続きが可能となりました(※6)。

株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン・株式会社サイバーリンクス・野村不動産ソリューションズ株式会社は、マイナンバーカードを活用した不動産売買取引の実施に向けた共同研究を実施しています(※7)。マイナンバーカードを用いた電子認証を採用したことで、不動産売買契約だけでなく、その後の登記手続きまで対応が可能となっています。

不動産取引のDX化における現状の課題


このように不動産業界はDX化が進んでいますが、不動産取引においては課題もいくつか残っています。現状の課題をユーザー側と企業側に分けて紹介します。

1.ユーザー側の課題

ユーザー側における課題は、IT重説や書面の電子化の認知度をさらに向上する必要性がある点です。2022年時点でのユーザーの「IT重説」に対する認知度は、賃貸が75%と高い水準ではあるものの、売買においては58%と約半分にとどまっています(※8)。
この背景には、2017年に賃貸借契約におけるIT重説がスタートし、売買契約はその後2021年に解禁となったため(※9)、認知度に差があることが考えられます。

「書面の電子化」においては、42%という結果になり、IT重説に比べて認知度が低くなっています(※8)。

賃貸不動産仲介会社の担当者向けに「賃貸物件の電子契約の実施有無」について尋ねた調査では、「ある」と答えた割合が2022年5月時点では15.4%でしたが、2023年1月時点では47.9%という結果が出ています(※10)。大幅に割合は伸びているものの、電子契約の実施状況は依然として全体の半分以下となっています。

ユーザーがオンライン上の不動産取引を利用することによって、現状のサービスの向上や新商品の開発にも繋がるため、認知度アップや電子契約の実施率を増やすことは必要不可欠となるでしょう。

2.企業側の課題

企業側の課題の一つは、IT重説を行う際のトラブルです。IT重説の際に発生したトラブルの有無に関して、70%が「トラブルが発生した」と回答しています(※11)。トラブルの内容は音声の不調や映像の乱れといった、PC等の機器や回線を起因とするものでした。トラブルのうち、多くはその場で対処ができており、対面に切り替えた例は8%となっています。

ネット不動産・不動産DXで日本経済の活性化へ


ユーザーの認知度向上や機器トラブルの軽減など、現状の課題を解決する必要はあるものの、近年取り組まれてきたネット不動産・不動産DXは、宅建業法改正により加速したと言えるでしょう。これまでアナログだと言われてきた不動産業界のDX化がさらに進むことにより、不動産取引や不動産の流動はより活発になることが予想できます。それにより、不動産自体の価値が向上することで、日本経済の活性化にも繋がるような明るい未来を開くこともできるかもしれません。


いかがでしたか?
ネット不動産がスタートして不動産業界はよりパワーアップしていきそうです。

今後もオープンファクトブックでは不動産業界にまつわるさまざまなトピックをご紹介していきますので、お楽しみに!

出典・参考

(※1)デジタル庁「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の概要」
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d12bde7e-a950-493b-987c-0f8d4bbd1b6b/20210901_laws_r3_37_outline.pdf

(※2)国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001497984.pdf

(※3)住友不動産株式会社プレスリリース「新築分譲マンション・分譲戸建の売買契約において全物件で「電子契約」を導入」(2022年5月18日)
https://www.sumitomo-rd.co.jp/uploads/20220518_release_zenbukkendennshikeiyaku-Introduction.pdf

(※4)東急不動産株式会社プレスリリース「デジタルツインによる不動産事業の変革に向けて アクセンチュアと戦略的パートナーシップを締結 世界最高峰のCGI技術を活用してマンション丸ごとデジタルツイン化へ」(2022年7月28日)
https://www.tokyu-land.co.jp/news/2022/001449.html

(※5)株式会社オープンハウスグループプレスリリース「不動産をスマホでポチる時代へ  オープンハウス、遂にマンションのオンラインストアをOPEN︕」(2022年6月7日)
https://ohd.openhouse-group.com/news/20220607/pdf/20220607_2.pdf

(※6)株式会社レオパレス21プレスリリース「お部屋の個人契約における契約電子化が拡大」(2023年2月3日)
https://www.leopalace21.co.jp/news/2023/0203_3459.html

(※7)株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン・株式会社サイバーリンクス・野村不動産ソリューションズ株式会社プレスリリース「マイナンバーを活用した完全オンライン取引の実施のご報告」(2022年6月30日)
https://www.nomura-solutions.co.jp/news/pdf/20220630.pdf

(※8)国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課「IT重説等の実施状況と今後の対応について」(2022年2月)P.12
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001463828.pdf

(※9)国土交通省「不動産の売買取引に係る「オンラインによる重要事項説明」(IT重説) の本格運用について」
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00013.html

(※10)リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社「2023年引越しシーズン(1~3月)における新型コロナウイルスの賃貸不動産マーケットへの影響調査」(2023年1月24日)P.13
https://lmc-c.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/01/lmc_release_20230127.pdf

(※11)国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課「IT重説等の実施状況と今後の対応について」(2022年2月)P.9
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001463828.pdf

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設立:2013年3月
資本金: 72億4389万4458円(2023年1月末時点)
事業内容:
・ネット不動産マーケットプレイス「RENOSY」の開発・運営
・SaaS型のBtoB PropTechプロダクトの開発 グループ会社:イタンジ株式会社、株式会社RENOSY PLUS、株式会社神居秒算など他12社

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