神奈川県視覚障害者福祉協会の皆さんのAuris体験会!in 長谷寺
2021年11月、神奈川県鎌倉市にある長谷寺にて、神奈川県視覚障害者福祉協会の方々にGATARIが開発するMRプラットフォーム「Auris(読み:オーリス)」をご体験いただきました!
実は、GATARIは2021年1月と3月に長谷寺にて関係者向け体験会を行っていました。Aurisは現実空間とリンクした仮想空間にデジタル情報を設置することができるので、実験では文化財に物理的な影響を一切与えることなく、お寺の解説情報などを追加できることを実証できました。
体験会の様子はこちらの動画をご覧ください!
今回の視覚障害者体験会では、関係者向け体験会の際に制作したAurisのコンテンツを再活用し行われました。
視覚障害を持つ方3名と、介助の方3名に、Aurisアプリの入ったデバイスを身につけて境内を周遊しながらお寺や建物についての歴史をナレーションと音楽で聞いていただきました。
Aurisを視覚障害を持つ方にご体験いただくのは今回が初めて。スタッフ達はドキドキ、ワクワクしながら挑みました!!
▲体験前に、代表・竹下から皆さんにご挨拶
まずは、視覚障害を持つ方に体験していただきました
体験会は、初めに視覚障害を持つ方、次に介助の方に体験していただき、最後に感想を伺う流れで行いました。
スタートは、灯篭の前。デバイスと指向性のあるBose Framesを装着して、体験が始まります。
鐘楼の前へ移動してきました。鐘楼の前に立つと、この場所の仮想空間に設置されたナレーションと鐘楼の方向から「ゴーーーーン」と鐘の響きが聞こえてきます。
かきがら稲荷の前では、仏像と牡蠣にまつわるエピソードが流れます。
音声は体験者にしか聞こえていないので、いつもは説明書きを読んで回っているという介助者の方が「牡蠣にはどんな意味があるって言ってる?」と逆に質問をして会話が広がっていきます。
外から観音堂に入っていくと、Bose Frames からは仏像に近づくにつれてお経の音が大きくなってきこえてきます。
さらに、十一面観音のナレーションを聞きながら、目の前にある御本尊の存在を感じます。
▲観音堂に向かう様子
経蔵(輪蔵)では、回転式の輪蔵を一回転させることで一切今日を全て読んだ功徳が得られるというナレーションが流れます。
音声を聞いている視覚障害の方がAurisから聞こえてくるこの場所のエピソードを介助者に伝えると、ご本人達が「いつもと解説する役割が反対になってなんだか不思議な気分」と話し合っていました。
続いて、介助の方々にも体験していただきました
先ほどまで視覚障害の方に聞いていただいた音声や音楽がどのようなものだったのか、介助の方々にも体験していただきました。
「こういう説明が聞こえていたんですね!」と改めて驚いていました。
最後に、体験いただいた皆さんにヒアリング
視覚障害を持つ方々から挙がった良かった点として、
「美術館や博物館で作品のナレーションが聞けたら良さそう。屋内のある程度安全な環境ならば1人で歩きながら使うこともできるかもしれない。」
「対象物に近づくと音が鳴るのはわかりやすかった。」
「鐘楼での鐘の音や、堂内でのお経の声は指向性がわかりやすかった。」
また、改善点や不安点として、
「長谷寺は階段が多いので、『この先正面に◯段の階段」などを教えてくれると大変助かる。」
「一般的な交通インフラとして使用するのは不安。サブとして使うのは良さそう。もし、Aurisをきちんと使うのであれば、白杖とセットにして使用訓練が必要。」といった意見がありました。
今回はお寺での体験会でしたが、美術館などの世説では使用できる可能性を感じていただけたことが、非常にうれしかったです。反対に、電車やバスといった公共交通機関の場で使用するための安全性は年単位で精度を改善しなければならなそうだとわかりました。
指向性のある音声は青眼者が体験する際よりも、音が聞こえてくる方向がよりいっそう重要になることもわかりました。
介助の方から挙がった良かった点は、
「周りの状況を説明するので、静かな場所だと声を出すのが憚れる時がある。そんな時に本人だけに音声が聞こえているのはいい。」
「説明の文章を読むとき、歴史的なものだと読み方がわからなかったり、字が小さいと老眼で読むのがしんどかったりする時に助かる。」
改善点としては、
「視覚障害者に状況を伝えるとき、長谷寺でいえば「お堂にかかっている布は何色で」とか「展望台から海はどれくらい先に見えていて、夕日が当たっている」といった説明をする。なので、観音像の表情についてなど、状態や様子について言葉で説明してくれると尚良い。」
という意見がありました。
今回のナレーションや音楽はエンターテインメントとして制作したものでしたが、改善を重ねることで視覚障害者が必要な情報を得るためにも使用できる道が見えてきました。
また、視覚障害者やその介助者が普段どのような会話をしながら情報共有をしているのかを教えていただいたことで、コンテンツ内のナレーションや音楽のどのような点に情報が足りていないのかを知ることができました。
将来、視覚障害者を持つ方々にも利用していただけるよう、今後もAurisをどのように活用していくのか議論を重ねていきたいと思います!
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