【新潟昆虫初採集記002】新潟でタマムシを初採集する!
1.タマムシとは
タマムシ(Chrysochroa fulgidissima)は、言わずと知れた日本で最も美しい甲虫の一つで、昆虫好きであれば誰もが知っている虫です。
圧倒的な知名度を誇る一方で、実際にタマムシを採集したことがある、という人は、意外と少ないのではないでしょうか。
私自身も、小学生の頃から昆虫採集をしてきましたが、タマムシは1回も見たことがありませんでした。
大人になって、子どもが昆虫に関心を持つようになって採集を再開したのですが、県内の野山をあちこち回っていても、残像すら見えない状況でした。どこにいるんだ、タマムシ・・・。
昆虫好きとしては、タマムシを見たことがないまま、一度も採集したことのないまま終われないよな・・・ということで、本腰を入れて探すことにしました。
2.【生息地】どこにいるの?
タマムシ、前述のとおり、ただ漠然と野山をウロウロしていても、まず見つからない甲虫です。
というのも、タマムシはエノキやケヤキの高いところを飛んでいることが多いからです。
7~8月の日差しの強い暑い日中に、エノキやケヤキのてっぺんあたりをブンブン飛翔している、と図鑑などには書かれています。
タマムシを狙う採集初心者としてまず壁にぶつかるのが、「ケヤキ・エノキが、そもそもどんな木で、どこに生えているのかわからない」という点ではないでしょうか。
もちろん、ネットや図鑑で調べれば、なんとなく「これがケヤキで、あれがエノキなんだろうな」「神社に生えている、でっかい木だよね」とはわかりますが、実際に山道や林道を歩いているときに、目の前の樹木を見て、「これがケヤキで、あれがエノキだよね」とパッと判断することは、素人には結構難しいと思います。
また、タマムシは木の高い部分を飛んでいることが多いので、ホームセンターやAmazonで売っている通常の長さの網(1~2メートル程度)では、とても届きません。むし社などの専門店で買うか、自分で自作するしかない。
初心者にとって、タマムシ初採集という悲願達成の前に立ちはだかる壁は、
1.ケヤキやエノキがどんな木で、どこに生えているのか分からない
2.木の高い部分に届く捕虫網を買えない
この2点に尽きるのではないでしょうか。
私も、この2つの壁にぶつかって、なかなかタマムシを観察・採集することができませんでした。
そんな中、地元である「西区の佐潟にいるらしい」という情報を聞いて、6月末に家族と一緒に散策に行ってみました。
さんざん県内の山を歩き回って一度も見つからなかったタマムシ様が、こんな近所にいるわけがないよな・・・と思ってしばらく道を歩いていたら、左側にあった立ち枯れに、虹色に輝く細長い甲虫がとまっていました。
思わず二度見しましたが、この輝き、このシルエット、誰がどう見てもタマムシです。
「い、いたーーーー!!!」と心の中で絶叫したのですが、不運なことに、その日は捕虫網を持ってきていませんでした。
仕方なく、手元にあった水筒(100円ショップで買った筒形の透明ケース)で捕まえることを決意し、気配を殺して、そ~~~~~~~~~~っと近寄っていきました。
しかし、あと数センチ・・・というところで、タマムシに察知されてしまいました。私の気配に気づいたタマムシは、バッと羽を広げて、あっという間に空の彼方に飛び去ってしまいました。
なんという痛恨のミス!!!悔しくて、その場でのたうち回りそうになりました。
それでも、初めて野外でタマムシを観察することができたこと、そして「山奥まで行かなくても、意外と近くにいる」ということがわかったのは、大きな収穫でした。
また「数メートルもあるような長網を使わなくても、いる時期とポイントさえわかれば、おそらく素手で採れる」ということも体感できました。
3.【時期と場所】いつ、どこで狙うべきか
タマムシはケヤキやエノキの高いところを飛んでいる、と書きましたが、産卵の際に、メスは地上にある伐採木や立ち枯れに降りてくるそうです。
となれば、数メートルもあるような長網を使ってケヤキやエノキのてっぺんを掬いまくるのではなく、メスが降りてくる時期と場所を狙って、そこで採集すればいい、という戦略を立てました。
時期は、7月上旬~8月下旬、場所は、伐採木や立ち枯れのあるところです。
ここで問題になるのが、「伐採木って、どこにあるの?」という点です。
伐採木がたくさん積んであるところは、いわゆる「土場」(=木材の輸送や保管のために利用する木材の集積場所)と呼ばれています。
こうした土場を探すか、山道の脇などで伐採木が積んである場所を探す、という形になります。
大きめの土場だと、グーグルマップの航空写真モードで探すと見つかります。ただ、立ち入り禁止の場所もあったり、針葉樹の伐採木だらけで、全く昆虫が集まっていないところもあります。
一番効率が良いのは、「良い土場を知っている昆虫仲間に聞く」ことですが、仲間がいない、という人も多いでしょう。
その場合は、オフシーズンも含めて、「足を使って、自力で探す」しかないです。
ドライブ中や仕事中・旅行中によさそうな土場を見つけたら、場所を記録しておいて、次のシーズンに行ってみる。
私の場合、夏の終わりに五泉市のあたりに採集に行った際、良さそうな土場を偶然見つけることができました。
ケヤキとおぼしき大きな伐採木が、ドン!と積んである場所です。
その時は、全く虫の気配はなかったのですが、「ここはきっと、来年の7月ごろに来れば、タマムシがいるはず・・・!」と感じました。
4.【作戦】7月に、土場で狙う!
7月上旬、昨年から目をつけていた土場に行きました。
伐採木を見ると、ケヤキナガタマムシがブンブン飛んでいます。これは期待大だな・・・と思って歩いていくと、上空から、緑色の虫が飛んできて、伐採木の裏側にとまりました。
まさか、と思ってのぞいてみると、タマムシです!いきなり出ました!!
手を伸ばせば届く至近距離だったので、持っていたカップ(100円ショップで売っているフタつきのケース)を使って採ることに決めました。
緊張で手が震えたのですが、息を止めて、伐採木にとまっているタマムシに背後からそ~~~~~~~っと近づき、意を決して、バッ!!!と上からカップをかぶせました。
「採れたーーーーーーーーーーーっ!!!」
思わず叫んでしまったのですが、見事、手でタマムシを採れました!
「長網を使わなくても、いけるじゃん!」「よくやった自分!」と思わず自分で自分をほめたくなりました。
「タマムシ初採集」の感動、これは昆虫好きが一生に一度しか味わえない感動だと思います。
帰り道、コンビニでアイスとお茶を買って、一人車内で祝杯をあげました。
5.初採集方法のまとめ
タマムシの初採集方法をまとめると、
1.7月上旬~8月下旬の、晴天で気温の高い日の日中
2.伐採木の積んである土場に行き
3.産卵のために飛んできた個体を採集する
という流れが一番スムーズではないでしょうか。
土場に関しては、「大き目の広葉樹の伐採木」があるところがベストだと思います。イメージとしては「大人が両手を伸ばしたくらいの直径」「長さ5~10メートルくらい」のデカい伐採木がドン!と何本も積んであるところが良いかと。
あまり細い&小さい伐採木には、タマムシが集まりづらいような気がします。
炎天下の日にケヤキやエノキの下で待機しながら長網でタマムシを狙う、という方法、どう考えても初心者向きではない気がするので、まずはなんとか良い土場を探して、そこで初採集を狙う、という形がベターではないでしょうか。
タマムシの初採集、前述の通り、昆虫好きが一生に一度しか味わえない感動なので、ぜひチャレンジしてみてください。健闘を祈ります!
(了)Twitter:ガタ昆 @gatakon1130