見出し画像

なぜ医療コミュニケーションは難しいのか?①~情報量の非対称性~

「どうして、飼い主さんに言ってることが伝わらないのだろ」

「なんで、この飼い主さんは指示(薬の服薬、再診に来てくれない)を聞いてくれないのだろう」

「なかなか自分の気持ちが飼い主さんに伝わらないなぁ」

画像1

動物病院で働いて、こういうことに悩む獣医師は多いんじゃないいでしょうか。

もちろん獣医師の知識・技術不足ということはなしにして、よりよい医療に必要なもう一つの重要な車輪のコミュニケーションの側面からのお話をします。

画像2

ちなみに、医療コミュニケーションがうまく行ってないと、治療成績や診察満足度が上がらなかったり、医療訴訟の問題にも関連すると言われてます。

こりゃ重要ですね!学べばメリットうはうは!

じゃあなぜ、医療コミュニケーションは難しいかつ、特殊だと言われるのでしょうか。

その理由の一つ紹介します。(たくさんあるので今日は一つだけ)

それは、相互の情報量の非対称性です。

医療者(獣医師)は医学に対しての情報を患者さん(飼い主さん)より圧倒的に持っています。患者さんは医学の知識は乏しいことが多いです。

また、患者さんは自分の身体(自分のペット)についての情報(性格や食事など)は、医療者よりも多く持っています。逆に、患者さんの情報は検査とかしない限りは医療者は知ることができません。

このようにコミュニケーションを行っていく上で必要な基本となる情報の差の乖離が大きいです。

画像3

医療ってサービスを受ける側とサービスの実施する側の情報の格差が一番ある領域なんじゃないかと言われております。(医療がサービス業ってことでなく概念のサービスってことね)

なので、前提として情報の非対称性があり、それぞれの情報の共有ができてないと、よりコミュニケーションにおけるノイズ(行き違い)が生じてしまいやすいということですね。

例えで考えてみると…

あるレストランでご飯を食べたとき、そのご飯が美味しいか美味しくないか、良いレストランか悪いレストランなのかはわかりますよね。

それは、今まで他のレストランに行ったり、家で料理をしたり、普段毎日ご飯を食べてて、情報の差が大きくないからです。

医療だとある治療や検査をされて、病気の話をされても、なんとなくわかった気になるくらいのことが多くて、結局分からないことのが多くないですか?これは情報量の差が大きいからです。

また、獣医師が忘れてはいけないことの一つに

獣医療の知識は獣医師が一番持っているはずですが、そのペットの情報については飼い主さんが一番持っているということを忘れてはいけません。

やはりこの点でも獣医師と飼い主さんは一緒に治療するということが重要です

じゃあ、情報量の非対称性を埋めるためにどうするかですが…

これはしっかり伝えること!!そして聞くこと!!

これに尽きます!笑

自分の知っている情報をベースに話すのではなく、相手の知っている情報量をベースに伝えることが重要です。

一つノイズが生じてうまく処理できてないと、基本的にはズルズル続いていきます。なので、ノイズが生じたかな?というときや、新しいことを話した診察の終わりには、

「何か気になってることはありますか?」

「この話を聞いてどのように考えましたか?」と聞いてみることにしてます。

「何か質問はありますか?」

「何かわからないことがありますか?」も重要ですが

例えば、腫瘍の話や腎不全や心臓病の治療って専門的要素が強かったり、長期的になることも多いし

(今まで、犬や猫を飼ってて同じ病気を経験したことある人なら、なんとなくイメージがつくかもしれませんが)

人間の病気だってイメージつきにくいのに、動物の病気ならなおさらイメージが湧きにくいと思います。

「どこが分からないのかが、わかってない」飼い主さんも多いと思います。

なので、ひとまず今日の話を聞いて

「どのように感じたのか・考えたのか」を飼い主さんに伝えてもらうことは、相手の価値観、考え方を知る重要なことだとと思います。

そして、分からないことは家に帰って色々考えることが出てくるので、そのことは「次の再診のときに相談しましょう」とします。

今の世の中、大抵の人は自分の家族(ペット)が病気を伝えられたら、ネットで調べる人がほとんどだと思います。

ネットには正しい情報正しくない情報がありますので、間違った情報を鵜呑みにしてミスコミュニケーションが生じないよう、気になることがあったら教えてくださいと伝えます。

なのでシンプルですが
まずは、何か気になることがあったら気兼ねなく聞いてくださいね、言ってくださいねと言う雰囲気作りが重要だと思います。

画像4

(かわいい猫は頭に乗っけたくなる)

その動物達、家族に合う治療があるはずなので、一緒に考えていきましょう。

参考:保健医療専門職のためのヘルスコミュニケーション学入門



いいなと思ったら応援しよう!