ペットの飼育頭数に獣医師ができること
「犬と猫って減ってるか?増えているか?どっちでしょうか」
※ウサギや、鳥などいろんなペットはいますが、今回は特に犬猫について話してます。
この質問、獣医療業界の人に聞くと正解率90%くらいですけど
それ以外の人に聞くと正解率20%くらいの気がします。(伊藤リサーチ)
正解は、犬はぐんぐん減っていて、
猫は微増くらいです。(でも、今後の日本の人口減少を考えるとやっぱり減っていきますよね)
※そんなこと言いながらも、犬猫の合計は15歳未満の子供の数よりは多いです。
どうして、犬猫を飼う人は減っているのでしょうか。
・少子高齢化社会
・都市化(マンションとかでペット不可等)で飼える環境が整ってない
・ペットを飼うこと以外の楽しいことが増えた
・ペットの高額化 等
色々理由はあると思います。
実際に犬を飼わない理由を調べると、
1位 旅行などの長期の外出がしにくくなるから
2位 別れがつらいから
3位 世話をするのにお金がかかるから
とのことです。
(日本ペットフード協会 令和4年 全国犬猫飼育実態調査)
僕が注目したのは、2位の「別れがつらいから」です。
別れはつらいです。
僕も、大好きだったM・シュナウザーのルルが昨年、虹の橋を渡りました。今でも写真を見ると泣いちゃいそうになることもありますが、それでも一緒に過ごした時間は宝物です。
別れのつらさよりも多くの笑顔や幸せをルルはくれました。ルルは本当にいい子でした。
どうしても動物病院で働いていると、亡くなってしまう動物はいます。当然、飼い主さんはとても悲しい気持ちになるでしょう。
でも、そんな飼い主さんが
また新しい子を家に迎えて動物病院に連れてきてくれることがあります。
僕は「また飼ってくれたんだなー」って嬉しい気持ちになります。
時には、「この子も伊藤先生に診てもらいたくて連れてきました」なんて言われると獣医冥利につきるなと感じます。
このまま犬猫が減っていくと獣医師の仕事はなくなってしまうのでしょうか?
犬飼育頭数が減るなかで獣医師ができることは何でしょうか?
僕は獣医師と飼い主のコミュニケーションの力が重要になってくると思います!
以前から、僕が紹介させていただいているShared Decision Making(SDM)を獣医師と飼い主で行うことで
飼い主さんの診察満足度の上昇やペットロスの減少にもつながることが報告されております。(1)(2)
このように、
SDMの実施含め、獣医師と飼い主でより良いコミュニケーションを取ることによって
ペットロスが減らせたり家族の満足がいく治療ができるようになり
いつかまた新しくペットを迎えてくれる人が増えるのではないかなと思っています。
決して、とにかく多くの人にペットを飼ってほしいって思っているわけではないです。ペットを飼育することには責任が伴います。
僕が言いたいのは、コミュニケーションの力で
「また次の子を飼いたいな」という気持ちを持ってくれたらいいなという事です。
目の前の小さな積み重ねだと思いますが、こんなことを考えながら獣医師してます。
参考文献
(1)Ito Y, Ishikawa H, Suzuki A, Kato M. The relationship between evaluation of shared decision-making by pet owners and veterinarians and satisfaction with veterinary consultations. BMC Veterinary Research. 2022;18(1):296.
(2)Testoni I, De Cataldo L, Ronconi L, et al. Pet Grief: Tools to Assess Owners' Bereavement and Communication Skills. Animals (Basel). Feb 21 2019;9(2)doi:10.3390/ani9020067