Shared Decision MakingとInformed Consent ってどうゆう関係?
前回紹介した、Shared Decision Making(SDM)覚えてくれていますか!?
覚えていてくれてありがとうございます!ドンっ!
質の高い医療決断をすすめるために、最善のエビデンスと患者の価値観、好みを統合させるための医療者と患者間の共同のコミュニケーション・プロセス(Spatz, Krumholz et al.2016)
「最善のエビデンス」✖️「患者の価値観や好み」を「共同のコミュニケーション」ですね
今回は、もともと医療者と患者間のコミュニケーションでとりあげられることが多かった言葉
Informed Consent(IC)とSDMの関係性について話していきます。
ICとは、「医療者と患者との十分な情報を得た上での合意」を意味する概念です。
もともと医療者が医療行為(手術、投薬、検査など)を行う上で患者にその詳細を説明し、実施の合意を得るという感じで使われ始めた言葉です。
これってSDMと似てるのかな?って考えられる方もいるんじゃないでしょうか。(みなさん鋭い!)
まず結論から言いまして、
SDMとICは全く別物です!!今回はその詳細を説明していきます。
まず、初めにICよりSDMのがいいよって話ではないです!
それぞれの特徴に伴う長所と短所がありますので話していきますね。
まずは初めに、ICは「合意を得るという結果が重要」です。
もともと訴訟文化であった欧米から広がった概念のICは、説明義務違反の医療訴訟を防ぐべく広がり、決定を患者の自己責任とするところがあるため、
「リスク等を伝えた上であなたから合意を得ました」という医療者主導であり、合意したという結果が重視されます。
なので、ICは選択肢へ合意する・しないが着地点となります。
SDMは「合意を得るまでの過程が重要」とされます。
患者の価値観や背景などを医療者の持つ情報(治療法等)を合わせて両者で意思決定をしていったという過程が重視されます。
なので、SDMは着地点は最初から明確に決まってなく、医療者と患者が話し合っていく過程で見つけていきます。
なので、決定の責任は、医療者と患者が共有するとされます。
じゃあ、次にそれぞれが推奨になる場面って何でしょうか。
ICが推奨になる場面は、医療行為の確実性が高く、生命のリスクが高い状況です。
獣医療だと、異物による腸閉塞の時って外科手術で摘出するしか手段がないですね。それに緊急性が要されます。
この時は飼い主さんの価値観、好みで最善の治療は基本的に変わらないので、外科手術をするかどうかのICが適切な意思決定になります。
SDMが推奨になる場面は、医療行為の不確実性が高く、生命のリスクが高い状況です。
獣医療だと、
腫瘍疾患全般が当てはまると考えられます。腫瘍の種類によっても異なりますが化学療法を用いるのか、外科手術や放射線治療を用いるのか、もしくは緩和ケアを行っていくかなど飼い主さんと動物ごとに治療の選択肢が変わり、
また治療の確実性(奏効率、生存期間、副作用等)は高くないことが多いです。
なので、腫瘍疾患は飼い主さんの持つ価値観や倫理観、またその病気について獣医師が持つ医学情報を共有し、どの選択をするかにSDMの実施が推奨されます。
(下記参考文献より)
このように病気の内容によっても、ICとSDMのどっちが推奨されるか変わってきます。
また獣医療では、その病気の内容だけでなく飼い主さんの価値観や意向、金銭状況などによっても適切となる意思決定方法は変わり、同じ病気でも状況に応じて適切な意思決定方法は変わります。
重要なことは、
その病気の状況の確実性と不確実性を理解したうえで、飼い主の持つ情報と獣医師の持つ情報を共有し、どの意思決定方法を選択するか考えるということですね。
適切な意思決定方法を行うことで
飼い主さんと獣医師がお互いに満足度が高い治療につながるでしょう!
参考文献:これから始める! シェアード・ディシジョンメイキング 新しい医療のコミュニケーション 中山健夫