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写真家として売れっ子であるという事

  LEICA使いの女流写真家から「売れる写真家になるにはどうすればいいでしょうか」と尋ねられ、私はこう答えた...

写真家とは

 写真家に免許は無い。勿論世界中に権威のある連名や協会のようなものはあるが、そこに加盟していることの有無と写真家であるかどうかは関係が無い。逆に言えば写真家とは自称でしかなく、貴方も今日から写真家といえば、そうなのである。

写真館に産まれて

 私の母方の実家は長野県松本市の(小さくない)写真館であった。父方の祖父は早世し、私の父母は幼なじみだったことから、母方の実家が事実上の実家のように暮らしていたし、私はそこで産まれた。さて亡くなった母方の曾祖父、当時まだ元気だった祖父、叔父、祖父や叔父のスタジオで働く写真家達、私の従姉妹達まで写真家を多く輩出している、いわば「写真一家」である。祖父の代までは山岳写真とスタジオでの記念撮影で食えていた。叔父の代ではそれに加え、カラープリントと修学旅行の随行カメラマンで凌ぎ、残りを作品作りにあてた。私の従姉妹世代からは、建築写真家、星の写真家、ポートレート&SNS専門など、ニッチなマーケットに挑んでいるようだ。私はと言うと、他に幾つか収入源もあるので、写真だけで食べなくても良い状況にあり彼らと純粋に比較はできないが、世界を回りながら趣味と実益の間くらいでペースや仕事を選んで撮影ができている状況だ。

写真と技術

 昔は今よりも写真機が高額で、専門的な知識も必要だった。なので私の叔父や従兄弟の写真家は芸大の写真学部などに通ったりした。私は独学だが、写真一家で育ったので、フツーの独学ではない。里帰りしたときのお小遣い稼ぎは暗室での現像やら、スタジオ撮影での機材セッティングやら、モデルの子供達を笑わせることなど、意外と身につけるのが大変そうなスキルを早期に身につけていたのだ。ともかく、現代に於いては撮影という技術と機材がコモディティ化した。では写真を撮る職業とはいったいなんだろうか、売れる写真家、お金を払ってでも撮影して貰いたい写真家とはどういう人物だろうか、などは、考えさせられる。

売れる写真家ということ

 JapanLeicaUsersGroup(JLUG)で知り合った 女流LEICA使いの写真家から「売れる写真家になるにはどうすればいいでしょうか」と尋ねられてこう答えた。

「私も知らないです。ただ、案外容姿の良い人が男女とも売れたりその真逆だったりしますよね。テーマが絞れててそれが作風とあってる人、時代にも適合した人は売れる条件揃ってますね。あとは運か野心

 こんなSNS時代でも、素材では無くアートとしての写真はプリントが効くので、自費では無く写真展を開く、写真集を出すという時点で売れっ子の仲間入りだとは思うけど、テーマが絞れてる作品群は立体的で深みが出るので扱いやすい。普通にカレンダーとかにもなりやすいし。

 あとはコッチも難易度は高いけど、世界的に権威のある写真コンテストで賞を獲ること。私も若い頃にNYのコンテストで末席に引っかかった事がある。そんなものでも名刺代わりにはなったりする。

 もっとも日本は(昔はともかく)今は写真家に支払われるコストは本当に安いので実力がそこそこあっても、写真で食べていくのは大変。英語ができる方は海外で仕事をするか、海外の雑誌、新聞、ネットメディアに写真や企画を持ち込んだ方が全然単価が高い。写真家に求められる英語力は日常会話で十分だし。

個展、写真集

 偉そうな事ばかり書いているけど、おまえはなんなんだ、と突っ込まれてしまいそうなので自分の目標も書いておこう。私は自分の美意識を写真という手段で伝えることが目的なので、クライアントから頼まれる仕事というのを基本的にはお受けしていない。またそのような汎用性もない。ただ、これまで世界中をまわって撮影してきた中で、自身の感性で切り取った幻想的で抽象的(見る人に想像の余地を沢山遺すような)優しくて綺麗でロマンティックな作品を撮り続けて、近年個展や写真集にまとめてみたいと思っている。老後の趣味でも良いけれど…。それよりは少しはやく、ネ。



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