『狼の口 wolfsmund』フランス語版を再翻訳6 サイコパス代官編
こんにちは。
じめじめするうえに気温差がすごくて大変過ごしにくい日が続いていますね。体調も崩れやすい日々ですがなんとかやっていこうと思います。
今回は、5巻の代官がブルクトーを裏切って逃げてしまうシーンをやろうと思います。代官は作中では基本的に酷いことやってるシーンばっかりですが、このシーンは特にサイコパス度高くて好きな場面でもあります。
原文→仏語訳→拙訳の順です。
ぐずぐずやっているから敵が増えるのだ この役立たずどもが
Si vous n’étiez pas aussi lents, aussi…dégagez, bande d’incapables!
貴様らがこれほどのろまでさえなければ…道をあけろ、役立たずども!
まずはブルクトーの台詞から。基本的に部下にはきついブルクトーですが、ここの訳はより攻撃的というか更に当たりがきつい感じになっています。それとこの後のコマで面白いのが、原作では「ブルクトー様」と呼ばれていたのが "captaine"(隊長)と呼ばれているところ。3巻のアルベルトとバルバラの襲撃以降ブルクトーが再び門衛の長に任命されてるのでそれを反映していると思われます。細かくていいですね。
忙しくてすみませんねえ またひとつお願いしますよ
Désolé pour ce surplus de travail… mais ça devenait urgent!
余分に働かせてしまってすみませんね…ですが緊急事態ですので
ここはまあほぼ原文通りですね。超過労働で悪いんだけど緊急事態になっちゃったからよろしくねという感じです。
で、次々襲いかかってくる農民軍を相手に無双するブルクトーですが、あまりにも数が多いのでどうしたものかと代官に話しかけようとした瞬間、代官がいないことに気付きます。ブルクトー達が戦っている間、代官は自分だけさっさと逃げていたのだった…
ヴォルフラム…きさま
Wolfram… Espèce de…
ヴォルフラム…この野郎…
裏切られたのを知って語気が乱れるのは原文も仏語も同じ。
ともかく覚悟を決めたブルクトーは再び農民軍相手に無双を始めますが、クルトを殺しきれていなかったのが契機となって農民軍に数の力で抑え込まれ、あえなく殺されます。そして格子戸を引き上げヴァルター達も中庭に侵入して合流。それを避難した先から見ている代官の台詞がこちら。
まあともかく 無事に避難はできました これもブルクトーの献身のおかげ
Je me suis éclipsé juste à temps… Je savais que Bruchthor préférerait mourir plutôt que de se rendre… Ici, je suis en relative sécurité!
タイミングよく避難することができました…ブルクトーは降伏するくらいなら死んだ方がましなのだと私はわかっていましたからね…ここなら比較的安全です!
うん、ゲッッッスいですね。(褒めてます) ほんとお前そういうとこやぞみたいな。(すごく褒めてます) しかも仏語版になってさらにサイコパス度が上昇しています。je sauvais que…で「私は…であるとわかっていた」、…plutôt que〜で「〜よりもむしろ…」となり、要はあの人数相手に勝てるわけないけどブルクトーは降伏なんかするくらいなら死を選ぶような奴だから置いてきておいてあげたよ!私ちゃんとわかってるから!みたいな感じですよね。しかしこの台詞を心から言ってるならガチのサイコパス感が出ますね。原作の短い台詞を最大限解釈した面白い訳だと思います。
今回はここまでです。
誤訳や間違いなどありましたらどんどん教えてくださると嬉しいです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。それでは次回!