【91】ドラマ"相棒"から学ぶ:「心の余裕」が物語に「余韻」をもたらす
Season20も終盤に差し掛かり、実に20年以上も続く大人気刑事ドラマシリーズの『相棒』。実は自分はこのドラマSeason12くらいまでは全部見ていて、その後も結構好きなのですが、何が魅力的なのか解説していきます!
20年続く大人気ミステリー!歴代相棒は4人!
テレビ朝日は同じくミステリードラマとして『科捜研の女』もSeason21という長寿ミステリーが盛り上がっていますね。それにしても、20年間の放送というのは、圧倒的な人気があるからこそ、でしょう。いやはや、本当にすごいものです。
言わずと知れたこの大人気ドラマシリーズですが、杉下右京を演じる主演俳優は水谷豊さんです。水谷豊さんは以前までこういったイメージなかったみたいですが、いつも長い台詞回しも淡々と述べていて、本当にすごい実力派俳優さんですよね。
右京は特命係という「人材の墓場」に追いやられているのですが、このドラマではその右京とタッグになって捜査をしていくという社会派ドラマです。
既にその「相棒」は4代目になっています。
1行でそれぞれ説明するとしたらこんな感じでしょうか。
●1代目:ちょっと間抜けだが熱きアクション派の相棒・亀山薫(寺脇康文)
●2代目:時々右京を裏切ったりするが尊敬もしてる神戸尊(及川光博)
●3代目:エネルギッシュな若さと反骨心が魅力的な甲斐享(成宮寛貴)
●4代目:渋みある飄々とした性格が意外とマッチする冠城亘(反町隆史)
ファンも選ぶ!やっぱり亀山が一番?
結論、自分は亀山時代が一番好きですね。
「相棒」っていうタイトルにある通り、杉下右京という固いキャラクターとの調和がなんとも相棒らしくてばっちりでした。お互いに補いあいあっている感じでしょうか。
また、彼がコミカル要素を引き出してくれるので、45分のドラマとしてみて割とふり幅が広いように思います。今の冠城もあれはあれで味があって良いのですが、あまり「幅」を感じないんですよね。極端なことを言うと、渋いおじさんペアの刑事ドラマという感じ。
亀山時代は、美和子さんが阿呆な亀山に怒鳴ったりするシーンがあったり、伊丹刑事との中学2年生みたいな喧嘩のやりとりがあったりしました。視聴者がついてきやすように分かりやすい解説を亀山がしたりと、見る層も幅広く受け入れているような印象。一見、ストーリーと関係ないどうでもよいパートに見えて、結構こういったシーンが後々大事な真実に繋がってくることも多いです。
特にSeason1や2など、序盤はこの脚本構成が非常に長けている印象があります。実際1万人のファンにアンケート取ると、Season1のお話が第1位と第2位になっています。(2019年の記事です)
『相棒』ファン1万人アンケート!“もう一度見たい10作品”はコレだ!
ドラマで大事なのは「心の余裕」?
これは、完全に僕の持論なのですが、物語というのは、メッセージやドラマを沢山詰め込めば良い、というわけではないと思うんですよね。
大学時代に映画製作した時に脚本を研究?しながら書いていて強く思ったことは、本当にうまいドラマの脚本って、「心の余裕」を感じるんですよね。
表現しづらいのですが、パツパツに詰まっていないイメージです。これは脚本だけじゃなくてきっとカメラ割りや役者さんの「間」というのも関係してくるものです。しかし、一番の基盤は脚本にあると思っています。
この「余裕」は「ふり幅」ともいえるかもしれません。それが分かりやすく比較できるのが、歴代相棒での比較だと僕は思います。番組やスポンサー、視聴者の意見は別として、一つのドラマとしてのクオリティを追求するなら、亀山時代の脚本は格別に良いと感じます。
神戸くんの裏切りや甲斐くんの暴力的な情熱とかもいいんですよ、ただし、亀山時代にあって、最近ないものは、間違いなく「余裕」です。
家に帰って美和子さんとどうでもよいことを話しているシーン。
ついにやけてしまうような、伊丹刑事と張り合う現場。
落語のチケットさえあればその独特な口調と捜査で協力する鑑識の米澤さん。
その他にも部長や参事官、官房長官などいずれも非常に良い味を出してひとつのドラマとして完成していました。ちょっと笑いながらリラックスできたり、ちょっと友情や愛情を考えてみたり、ちょっと上司部下の関係ににやけてしまうような面白い会話であったり。
どれも不要なシーンにみえて、なんやかんや最後にひとつのヒューマンドラマとしてうまく集約される。
より多くの「余裕」をうまく物語の核に繋げていくことで、より深い「余韻」が残ります。
社会の不条理を問う相棒。次は誰だ!?
とはいえ、相棒はかなり完成度高いドラマであって、今なお多くのファンがいるのも事実です。挑戦し続けるからこそ、新たな道を拓いているとも考えることができますし、一貫して伝える「社会の不条理」「正義とは何か」みたいなメッセージは非常に勉強になります。法で裁けない犯人や社会的弱者のお話など、「なるほどぅ」と悶える圧巻ストーリーが多いです。
ただ、ドラマも映画も製作する方がつくりたいようにつくるものであって、外野からああだこうだいっても仕方ありませんね。勿論、現在の『相棒』も、真相究明に至る経緯や犯人たちのドラマが熱いものがあったりすると思いますので、悪しからず。
反町さんは今年3月で相棒卒業らしいですが、5代目はどなたになるのでしょうか。水谷さんの年齢もあるので、次の相棒が最後になるのでしょうか?
初の女性相棒や田中圭さんなど話題に上がっていますが、今後に注目ですね。
それではまた!
↓職場の方とのチャット。仕事中の「余裕」がこれです(違うか)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
正義とは、自分と相手で異なり、
そして、今日と明日でも異なる。
人間が争い合うのはこれに尽きる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━