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ステージイベントのメイキング撮影法【演奏会・ミュージカル】

メイキング撮影というジャンルをご存知だろうか? 「映画が出来るまで」とか「どのように撮影されたか」という撮影現場の舞台裏、もしくは被写体の裏側を暴く撮影だ。プロの方ならあたりまえな撮影ジャンルの一つだろう。

今回はそんな「裏」の撮影での立ち居振る舞い、注意点などを主に書いていきたいと思います。

この記事は記録ビデオ業者としてのステージメイキング撮影ですので映画撮影などのメイキング記事ではありません。あしからず。  


メイキング撮影とは

メイキング撮影とは基本的に「本番では見れない映像」、もしくは「本番をより良く魅せる」という特性を持つ。

例えばミュージカルならば、キャストの入り・リハーサル風景・オフショット・ディスカッション(ダメ出し)・お見送りなど、舞台作りの工程を撮影することで、どうやって本番を迎えたかが分かり、さらに本番だけの映像よりも作品が良くなることがあるんです。

そして、リハーサル・ゲネプロなどを撮影することにより「本番」のカメラ位置からは無理な構図で撮影ができるし、被写体の魅力を十二分に表現することも可能である。  


メイキング撮影のポイント

メイキング撮影をするにあたり、どういった内容が絵になるのか?というのを考察する。

映像にメリハリをつける シーンというのがある。簡単にいえば「場所」。いつも同じ場所で撮影するのではなく、可能な限り動き回ることで映像にメリハリをつけることができる。

舞台・客席・楽屋・ロビー・会館の外など、とにかく絵になりそうなモノなら撮影しまくる。編集においても同じシーンよりは格段にやり易くなるだろう。  

被写体の表情をよく見ること たとえば練習風景。辛そうな顔だったり、笑っていたりと様々な表情が現れる。

この表情を見逃さず捉えることができると映像の価値は格段に上がる。 人が感情移入しやすいのは表情が一番有効だ。

その中でも「辛い」表情は特に人の目を引き付けることができる。 演出家からの執拗なダメ出しに泣きだしそうになるキャスト達。怒られても怒られても立ち上がろうとする姿は見る人を感動へと導く。  

本番では撮れない構図を多様する

本番の撮影では固定カメラである場合が多い。カメラ台数が多ければ構図のバリエーションも増えることになるが、2・3台などの少ないカメラでは構図が限られてくる。

そういった時にメイキングで補ってあげればクライアントの評価も上がり易い。

ワキ役などの映りが悪い傾向にある被写体も同じ。本番では主要キャストが嫌でも目立つのでワキ役は特にメイキングで補ってあげることが肝要である。  


メイキング撮影の注意点

本番撮影が「陽」であるならばメイキング撮影は「陰」。カメラマンは忍んでは息を殺し、被写体を注意深く撮影するわけである。

さながら忍者の如く立ち居振る舞いをすることがメイキングカメラマンにとっては重要なことである。

しかし、オフショットなどを撮影する場合、忍者の如く被写体に迫ろうとすれば怪しまれることこのうえない(笑。

なのでシーンによって立ち居振る舞い方を臨機応変に変えていく必要性があるのだ。   リハーサル・ゲネプロでの注意点 被写体構成は「キャスト」と「裏方」。裏方とは主に演出家・舞台屋さんである。

リハーサルの目的は本番へ向けての練習であるから、当然ビデオ撮影のために行っているわけではない。なので、カメラマンは・・・ 裏方(演出家・舞台屋)とキャストの導線上に立ってはいけない。

目的を妨げることはステージそのものを冒涜することになりかねないわけである。これを知らない新人君においては一番注意しておきたい。

あくまでステージ作りが最大の目的であり、撮影は三の次。裏方には存在をなるべく知らせない位置から撮影することが大事。

しかし、だからといって遠巻きから撮影したのでは迫力にかけてしまうだろう。

ポイントとしては両花道・両ソデ・裏方の真後ろ・この三点からの撮影をおすすめする。

そして、ころころ位置を変えてはいけない。あまり動くと目障りになるからである。少なくとも場所を決めたら5分はそこから離れない。 キャストを撮る場合にもいえることだが、待っていないと撮れない絵もあるのだ。ひたすら良い絵が出るまで待つこと。  

オフショットでの注意点。オフショットとは主に「開放された姿」である。リハやゲネプロ以外の被写体を指す。 会場入り・準備・談笑・食事など、張り詰めていた空気とは違い、被写体の表情も柔らかくなる。

上記で書いたメリハリの一つで、映像にアクセントを加えることができる。 さて、こういった撮影をする場合、リハとは全く逆な立ち居地をカメラマンは迫られることになる。

リハが忍んで撮影するとういうことなら、オフショットは陽な空気を自分から出さなくてはいけないからだ。

何故に陽の空気を出さなくてはいけないのか? 写真屋さんを見るとよく分かる。写真屋さんはビデオと違い1枚1枚が勝負である。

「はい!いくよー!撮るよー!いいねー!」など、被写体とのコミュニケーション無しでは良い絵が撮れないことをよく知っている。

ビデオカメラマンも全く同じ。リハと同じスタイルでオフショットをただ黙って撮ってるだけだと被写体から敬遠されてしまう。 ちょっとアブナイ人と思われてもおかしくない。

ただでさえスチルカメラより大きいカメラなわけだし、威圧感もバリバリである。 なので、ビデオカメラマンは撮影する前に、被写体とコミュニケーションをとっておくことが肝要なわけである。

コミュニケーションといってもハツラツさをアピールするわけではなく「撮影してもよろしいでしょうか?」程度で十分である。 あとはムリヤリでも笑顔を作ることで被写体とのコミュニケーションは成立する。

そうしておくことで柔らかい表情を生ませ、良い映像を撮影しやすくなる。 しかし、くれぐれも撮影する前に喋ること。撮影中に喋ってはダメですよ(笑

 

カメラマンは場数を踏んでナンボ

メイキング撮影は作品をより良いものにするための大事な要素である。 本番撮影だけでは表現しきれないものを表現できるということは、クライアントにとっても有益な撮影であることは間違いない。

しかし、撮影の仕方によっては迷惑をかけることもある。そのあたりの空気感はやはり現場を多くこなさないと見えてはこないだろう。

ビデオカメラマンは場数を踏んでナンボ・・・。 どうかこの記事を読んでいただいたビデオ業者の方・・経験があまり少ない人ほど多く撮らせてあげてください。

あたりまえだと思うかもしれませんが、撮りがヘタだからといって撮らせないと、ますますヘタになっていきますから。

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