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ライブレポ#3 後世へバトンを引き継いだ伝説の夜 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA

全ての出演者のレポートを書きたかったのですが、時間の都合上サザンオールスターズメインの記事になっています。また、ライブレポートと言うよりかは、私情を連ねている記事になっていますので、少し趣旨が違うかもしれません。ご了承ください。

めちゃくちゃ長くなったので、目次から選んで読むことをお勧めします。

急ぎの方のために、この記事で伝えたい要旨を並べておく。

  • サザンオールスターズの近年のライブ活動では度々人生最高を塗り替えてきたが、開演前から人生最高が確定しているライブは初めてだった。

  • 筆者初参加のロッキンジャパンは、トイレなどの設備やイートインスペースなど、音楽以外の部分もとことんこだわり本当に快適だった。

  • ヤバイTシャツ屋さんがサザンとの癒着を果たし、ももクロがロックフェスでアイドルがステージに立つことの意義を証明して見せた。

  • サザンの応援ソング的な立ち位置にある楽曲は、自らその地を踏みしめて、心の中の闘志が燃え上がり、自発的に自らの足で戦場へ迎えることができる応援ソングであると感じる

  • 音楽は自身の経験や時間とともに、あらゆる形に変化し自身の感性をさらに成長させてくれる。サザンは時間とともに深みが増す表現が多いので、紐解けば紐解くほど沼に落ちる。



最後の夏フェス

これを書いている今でも、地に足ついた感じがしていない。
既に1か月以上が経とうとしているのに、楽曲を聴くと興奮がいつでも呼び起せれる。
あんな夜を見せられたら、生きていることに感謝せざるを得ない。
今こうやって言語化しようとしても、何から書けばいいかわからない。

2024年9月。
ロッキンがひたちなかに帰ってきた。
世界を巻き込む未曽有の事態を乗り越え、5年ぶりの開催。
私は関西在住なので馴染みの薄かったフェスだったが、一音楽ファンとして行ってみたいフェスの一つだった。
ただ今年はモチベーションが違った。
私が最も好きなバンドが、最後の夏フェス出演を発表したからである。

最後の夏フェス出演発表

2024年6月25日。
サザンオールスターズが46周年の活動を発表した。
そこにあった「最後の夏フェス出演」の文字。
人間生きていたら「最後」というのはつきものである。
もちろんそれはアーティストの活動もだし、どんな出来事にも「最後」は必ず来る。
私の人生を最も彩るバンドが、いつか最後を迎えることに対する覚悟はできていたつもりだ。年齢も年齢だし、流石に長くはないだろうと日々受け取っていた。
ただ、これほど大きく「最後」というものを表に出すと、ものすごく寂しさがこみ上げてくる。
ああ、やっぱり終わりが近づいているんやな・・・としみじみと感じる。
と同時に、人生の中でこの終わりを生で目撃したいという思いが強くなった。

茅ケ崎ライブ2023

2023年、サザンオールスターズはデビュー45周年を迎えた。
あと5年で活動が半世紀を迎えるという節目の年に、地元茅ケ崎の凱旋ライブを行った。
コロナも明け、完全体での野外ライブ。
コロナ禍では無観客のオンラインライブを精力的に行い、音楽業界をはじめ日本中に光を差し込んでくれた。
桑田佳祐ソロ名義でも、2021年からライブを行い、徐々に活動の幅を広げていった。
そしてついに開かれた茅ケ崎での凱旋ライブ。正直これほど「記念」という言葉にふさわしいライブはないと感じた。

茅ケ崎ライブ 2023

オールクリーンアップみたいなセットリスト。
10年ぶりの地元凱旋を心から待ち侘び、茅ケ崎サザンCを連想させるような一曲目「C調言葉にご用心」から始まり、ロッキン一曲目を飾った「女呼んでブギ」や、「YOU」「涙のキッス」「栄光の男」などキラーチューンを冒頭から披露し、「OH!! SUMMER QUEEN」「そんなヒロシに騙されて」「君だけに夢をもう一度」と久しぶりに演奏されるナンバーを織り交ぜながら、「東京VICTORY」「太陽は罪な奴」「真夏の果実」「LOVE AFFAIR」などで会場のボルテージを徐々に上げつつ、「ミス・ブランニューデイ」「盆ギリ恋歌」「みんなのうた」「マンピーのG★スポット」とおなじみの煽りゾーンで本編を締めた。アンコールも「Ya Ya」「希望の轍」「勝手にシンドバッド」と世代を超えて誰もが知る曲で茅ケ崎の記念ライブを締めくくった。(私は3日目に参加したので、最終日のみ演奏されたアンコール一曲目の「ロックンロール・スーパーマン」は聴けなかった。)

何度行ってもサザンのライブ演出は想像を超えてくる。

一曲目の「C調言葉にご用心」の1音目で放たれた花火演出で、もう感動して涙していた。コロナや様々な困難を乗り越え、久々の生ライブの一曲目を派手に演出し、久々出会えたことに対する祝福を盛大に飾っていた。
「東京VICTORY」では四方八方をレーザーで包み込み、野外ライブなのに屋根があるような演出で会場を包み込んだ。あの幻想的な空間を演出できるのも、サザンならではだと思っている。

2019年の通称「ふざけるなツアー」ではこの「東京VICTORY」が一曲目だった。その時は最初のコール&レスポンスの際に、ステージを覆っていた白い幕にメンバー5人がこぶしを突き上げたシルエットイラストが映し出され、「時をかけるよ time goes round」の歌いだしで桑田さんのギターを演奏しているシルエット映像が浮かび上がるという演出だった。
この一曲目の演出を超えることがないと思っていたが、茅ケ崎ライブの「C調言葉にご用心」の一曲目の花火演出では、久々のサザンの野外ライブに対する期待感と初めて茅ケ崎でライブを見るという幸福感が入り混じり、「本当にここまで生きてきてよかった」と思える瞬間だった。
その後、将来この茅ケ崎に住みたいという人生の目標ができた。

ぶっちゃけこの茅ケ崎ライブでもう一つ記事が出来上がりそうだが、このくらいにしておこうと思う。ライブはそれぞれ意味があって、その時の心情により見方や受け取り方が違ってくると思っているので、優劣はあまりつけたくはないが、「最後の夏フェス出演」と銘打ったロッキンジャパン最終日のサザンオールスターズは、今後のライブ人生で超えることがあるのかと感じた。

初参加のROCK IN JAPAN FESTIVAL

私は関西に住んでいるので基本的には関西公演のライブやフェスに参加している。学生なので遠征するのにも限度があるし、大学院で研究活動をしているためなかなか時間をとることが難しい。
参加したことがあるフェスは、毎年インテックス大阪で年末に行われるFM802が主催の「RADIO CRAZY(通称レディクレ)」、夏に舞洲で行われるキョードー大阪が主催の「OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL(通称ジャイガ)」の2つである。フェスよりワンマンライブに参加することが多いが「レディクレ」は高校時代から毎年参加していて忘年会的な位置づけになっている。

大きなフェス会場は広大な敷地が必要のため、大都市から離れているへき地で開催されることが多い。
そのためあまり普段はいかないような場所で大きな音量で音楽を浴びることに対する非日常感や、「音楽が好き」という目的を持った人々が一堂に会し一つのコンテンツで感情を表現できる場所が大好きである。

今回初めて参加したROCK IN JAPAN FESTIVALは、上記の空間に合わせて、今までのフェスで一番「快適」で心地よく参戦できるフェスだった。

僻地で開催されるため交通の便が不便だったり、数万人が移動するため帰りの導線が悪くなるのは仕方がないことである。それでもシャトルバスの運行や規制退場など、運営側は日々工夫をしている。
ROCK IN JAPAN FESTIVALは、快適にフェスを楽しめるための努力が詰まっていた。

まず一番は、「トイレの数が多い」ということ。
会場の至るところにトイレが置かれていて、特に食事スペースの「茶屋ビレッジ」の近くに置かれていたのがすごくありがたかった。
またオブジェや撮影スポットを多く設置し、一つのスポットに固めず導線を確保してる点や、椅子スペース・テントスペースを設けて体を休めるスペースを提供していたり、家族連れの音楽ファンにも快適に楽しめる設計となっていた。過去出演者のサインが描かれた弾幕がずらっと並び、これまでのフェスの歴史を一気に体感できるスペースもあった。ここでひたすら歴史を辿り、アーティストらが当時感じていたステージの空気を共有している感覚があった。

2005年出演時のサイン

サザンとの「癒着」を果たしたヤバイTシャツ屋さん

「正直朝から」「ヤバTはきつい〜」

朝からうるさくてすみませ〜んと、でかい音を鳴らし、ロッキン最終日の幕開けとなったヤバいTシャツ屋さん。ヤバTといえば、5、6年前にTokyo FMで放送中の「桑田佳祐のやさしい夜遊び」にて、「癒着⭐︎NIGHT」が桑田佳祐が選ぶ2019年の年間ベスト曲にランクイン(確か9位とかだったような)していたのを想起させる。この時、あの桑田さんがヤバTを聞いてる・・・?とめちゃくちゃ驚いた思い出。そしてその癒着⭐︎NIGHTを「桑田さんに褒められた曲やりまーす」と4曲目に披露する。

この曲を桑田さんは「健康なのか病んでるのかわからないけど素敵」とコメントしている。ヤバTの音楽は歌詞がいい意味で「ふざけている」ものが多いが、ある意味で人間味が滲み出ている楽曲が多いと感じる。

失った学生生活を取り戻すために背伸びして
社会に出てから変な飲み方を覚えるようになりました
無理ない範囲で好きなようにだけ楽しんでるから幸せですから
なんやかんやハッピーです

癒着⭐︎NIGHT 1Aメロ

大人って言い訳上手でいいね 
都合のええように解釈しはるね
ギブアンドテイクでいい関係 
まあいっか 手を取り 踊り見して

ラスサビ前

これだけ人間味あふれる歌詞をポップでリズムのいい曲に乗せて歌うのは、サザンの楽曲に通ずるものがある。こういう曲がかなり好きで、好む理由としては人間誰しもが持つネガティブな感情を肯定してくれる感じがするからだ。こんな曲をステージ上の3人が楽しそうに演奏しているところも魅了ポイントである。

私はあくまで音楽は「音を楽しむ」ものだと思っているため、リズム感や語呂の良さが好きになるためのキーとなっている。その上で何かメッセージや、伝えたい裏の部分を汲み取れた時に、初めてプレイリストを席巻する。また、人間の陽と陰が垣間見える歌詞は、私の心に強く響いてくる。ポジティブネガティブどちらの比率が高いかは人それぞれだが、どちらか一方が0になることはないと考えている。音楽の中でそれはヤバTが証明していて、さらに過去を遡ればサザンオールスターズがその基礎を築いている。だから、この「癒着⭐︎NIGHT」は私がヤバTにハマった理由となっている。

その他近所に馴染みのあったはずの「JUSCO」を舞台にした曲、「サークルバンドの代表格」であるサザンオールスターズに想いを馳せ、自分がでかいステージに立ち続けることを宣言し、さらに次なるサークルバンドへのエールをもたらす「サークルバンドに光を」、現代の技術進化により便利さがより際立っている「無線LANばり便利」など、日常を細かく切り取っている視点はヤバイTシャツ屋さんならではのスタイルだろう。
音楽は聴いていた時期の景色を想起させてくれると言う自分の信念にピッタリ合わさっており、その思い出に歌詞の内容が相まって想起した景色の解像度が上がる。聴いているだけなのになぜか涙が出てきたり、笑みが溢れたり、奮い立たせられたり、様々な感情を呼び起こす魔法を、日常の空気を汲み取りいい意味で「ふざけた」歌詞に乗せることがヤバTの表現する音楽だろう。もはや何も「ふざけて」いない。

自分たちの歌いたい曲を作り続ける。どれだけ低迷したとしてもそれを貫いてバンドをやり続ける。この数万人のステージの次の日には秋田で300人の箱でライブをするというストイックさも、バンドが「好きなことを好きなようにやる」という信念の元に活動していることの表れだろう。

アイドルがロックフェスのステージに立つ意味を切り拓いたももいろクローバーZ

2組目はももいろクローバーZ。アイドルがロックフェスのステージに立つことについて様々な意見が飛び交っているようだが、音楽に障壁はないしそんな軽々しく消費されるコンテンツではない。それを何年も前から真っ向から証明して見せているももいろクローバーZ。

僕とももクロとの出会いは中学~高校生辺りだが、他のアイドルとは違ったオーラに魅了されていた。笑顔の魅せ方、ライブ中のバラエティに富んだ演出、特に国立競技場にてジェットコースターで登場してくるシーンが印象的だった。ただ可愛さ、スタイル、ダンスのみで魅せるものではなく、人を寄せ付ける愛嬌やバラエティさ、いい意味で人間臭いアイドルという表現をしたくなる。

なんせ、いつも全力なのである。その全力さと言うのもステージ上の4人だけでなくバンドメンバー、オーディエンスの熱量も全力なのである。音楽レポートを常に発信しているソノダマン様の記事でも同じような熱量を肌で感じていた。私もその全力さ、ひたむきさに魅了された一人である。詳しいステージはソノダマン様が解像度高く記事にしていただいているので、こちらをご覧になってほしい。

家族で参加したのだが、母が「ももクロのファンは本気」と言っていた。アイドルのライブは初めてだったので私もその迫力に鳥肌だった。高校生の時まあまあ狂ったように「BLAST!」を聞いていたのでいつかそのオンステージを見てみたいと思っていた。

そしたら序盤で「サラバ、愛しき悲しみたちよ」ラスト2曲が「BLAST!」からの「行くぜ!怪盗少女」ではないか。一気に高校時代の青い記憶が蘇り、初のアイドルのステージで涙を流した。ヤバTの時にも体現した、「音楽は聴いている時の景色を作る」を肌で感じた。「本気」でステージの熱気に応えるオーディエンスの迫力と景色を作る音楽が、涙を誘った。

そんなももクロの玉井詩織は、昨年の茅ヶ崎ライブでレポートを任され、終演後のサザンオールスターズと接点を持っている。そこで「しおりと言う名前は栞のテーマが由来である」と話していて、いわゆる名付け親との対面で感極まっていたシーンが印象的である。


2005年出演時

サザンオールスターズ

最後まで「サザンらしさ」を前面に出した最後のフェス

9月下旬とはいえ日中は肌が焼けるような日差しで少し汗ばむ気候ではあったが、だんだん日は傾き、秋風感じる気候となってきた。夕日が沈む手前の薄暗さで心が穏やかになる景色になってきたが、実際は体に緊張が走る。
ついに、伝説バンドの最後の出演時間がやってくる。
アーティストの開演を知らせる映像に「サザンオールスターズ」の文字。
これを見れることはもうない。

SEもなくメンバー1人1人が端から出てくる。そこに何もド派手な演出はない。一礼をしながら出てくるあの謙虚な姿は、45年以上続けてもなお日本の一線を直走る理由ではないだろうか。
一曲目、聞こえてきたのは「女呼んでブギ」。サザンオールスターズのライブはいつも一曲目で心掴まれる。前述した2019年のふざけるなツアーでの「東京VICTORY」はもちろん、2015年の「おいしい葡萄の旅」では当時18年ぶりの演奏となる「Tarako」が一曲目に演奏されたり、前回のロッキンジャパンでは史上最強のイントロと呼び声高い「希望の轍」など1音目で心掴むものが多い。

今回はどんな感じだろう・・・と思っていたら違う形で「サザンらしさ」を出し最後の演出を飾っていた。いわゆる「下ネタ曲」である。
出てきて早々「女呼んでもんで抱いていい気持ち 夢にまで見た rug and roll 女なんでそんなもんさ」とか歌うもんだから流石の一言で感心した。盛大に「最後の出演」という期待感が大きく、日本中の音楽ファンから注目されていて丸くなるかと思えばよかった、いつものサザンが見れると確信した。

思い返せば、本編のセットリストの一曲目と最後の曲はいわゆる「下ネタ曲」であった。サザンの下ネタ曲は、歌詞なんて関係なくて歌ってて気持ち良いリズム感で歌ってたらいいわ~みたいなテンションが多い。
ただ、たまに人間の欲望に忠実に従い、落ちぶれてしまう有様を皮肉を交えて歌った曲が節々で見られる。現代世界にも溢れている男女の関係によるトラブルに一石投じる形なのか、ただの下ネタ曲ではなく聴く手も考えさせられるものが多い。それ特に本編最後で演奏された「あの曲」が一番思うだろう。

サザンオールスターズの応援歌

一曲目を熟練のパフォーマンスで締めた後、「サザンオールスターズで~す!!!新曲やりま~~す!!!」と叫んだ後に聞こえてきたのは2024年の夏に配信リリースされた「ジャンヌ・ダルクによろしく」。グルーヴ感ある前奏で盛大に火花を散らした瞬間、貫禄あるギターロックに痺れたうえにド派手な演出で一気に心掴まれ、すでに泣いた。この曲、まじでかっこよすぎる。

生まれ堕ちたる身の上 歌は平和を奏でる武器でしょう
闇を光ん中へ飛び出そう Ahh 祭典(おまつり)を皆が待ってる

2A

45年たった今でもこんな勇気をくれる、心を掴めるフレーズを世に出せるのか、本当に「モンスターバンド」すぎる。TBS系のスポーツテーマ曲で、華やかさとは裏腹にこんなにも泥臭く、正面からぶつかっていけるような、心奮い立たせられるような楽曲に仕上げてくるのはもう言葉が出ない。

私の印象として、サザンオールスターズの応援ソング的な立ち位置にある楽曲は、前で引っ張ってくれる感じでもなく、後ろから背中を押してくれるものでもなく、「後ろで俺たちいるから、正々堂々と戦ってこい」と自らその地を踏みしめて、心の中の何かが燃え上がり、自発的に自らの足で戦場へ迎えることができる応援ソングであると感じる。決して、誰かに引っ張ってもらう・押してもらって動いているのではなく心の中の炎が燃え上がり自分の足が動く原動力になっている。御年68歳なった伝説バンドのフロントマンが歌う「熱いステージが始まるよ」ほど心高ぶるフレーズはない。

さて、ここから前半戦を駆け抜けていくのだが、非常にカロリーの高いセットリストとなっている。今年の新曲が聴けたと思えば、もう40年以上前の楽曲となっている「My Forplay Music」が聴こえてきた。前奏のピアノフレーズ・ギターリフが40年たっても色褪せていないのも凄みである。
その次に聞こえてきたのは、私が2013年、当時中学1年生の夏に人生初ライブを経験し、その時に初めて生音を感じた楽曲「海」であった。「灼熱のマンピー★Gスポット解禁!」の神戸公演1日目で最初に演奏された曲だった。

このイントロずるい。イントロで一気に目の前が、夕日が照らす浜辺で黄昏る映像が想起される。当時人生初のライブで、初の野外ライブでそれまでは電子変換された音楽のみの世界だったが、演奏者がいて、歌唱者がいて、生の楽器の音が響き渡るあの瞬間は今でも忘れられない。それほど思い入れのある曲である。

続いて、「神の島遥か国」「栄光の男」とライブで同じみのナンバーが演奏される。曲だけで「夏らしさ」「サザンらしさ」の雰囲気を包むのがたまらない。それはその次の「愛の言霊」もそうである。この曲のミステリアスな感覚は見るものを引き込んでくれる。さっきまでの夏らしさとは裏腹に、お経のような、何かを暗示しているかのような怪しげな空間を演出する、この落差こそがサザンの特徴だろう。


前回2019年主演時の放水シーン

後半戦へ

「いとしのエリー」が演奏される。イントロでもう泣ける。当時この曲が発売された時のことを親に聞いてみると、「勝手にシンドバッド」でデビューし、その次に「当たって砕けろ」と言うポップでふざけた歌詞を歌うバンドかと思っていたが、急に名曲のようなラブソングを発表して「只者ではない」と思ったよう。こんなにも温度差のある曲が書けるのかと、当時からその片鱗を見せていた。

ここで「思い過ごしも恋のうち」が演奏される。正直これは予想していなかったし、「これファン以外で知ってる人いるかな?」と思うくらいだった。ふざけるなツアーで初めて聞いて、「もうこれはこの先聴けるか怪しい」と思っていたから尚更だった。この曲のテンポ感といい、これから後半戦の幕開けを漂わせるようなセットリストである。

サザンのライブに行けば、45年以上の歴史があるので「こんな曲普段聞かないぞ・・・・」「この曲なんやっけ?」っとなるようなレア曲が中盤〜終盤前に演奏される。フェスでは「この曲フェスでやるんか」と思う曲も演奏される。前回では「せつない胸に風が吹いてた」がその立ち位置だろう。

さて、ここで2回目のMCの後、コールアンドレスポンスが鳴り響く。ひたちなかに桑田さんの声と共に、詰めかけた5万人もの声が鳴り響く。5年ぶりのひたちなか、最後のサザンオールスターズ、様々な色の声でステージを色付ける。

聞こえてきたのは「東京VICTORY」。イントロのコールアンドレスポンス、手拍子、これほど「ライブに来た」と実感する曲は無い。

時が止まったままの あの日のMy Hometown
二度と戻れぬ故郷

ラスサビ

被災地のふるさとのことを想った一節だが、ひたちなかでこの部分を歌うことに大きな意味がある。5年ぶりのひたちなかロッキンが復活したが、複数ステージなど完全に復活した訳ではなかった。ロッキンの蘇我に移動し、新たな時代が始まろうとしていたが、あの頃の熱気に戻れるのか。あの頃のひたちなかに戻れたのか。ただもう邪推かもしれない。これだけの人が、生きる伝説を見に来ている。そしてその伝説が、次の伝説へバトンを繋いで、「夢の未来へSpace goes round」「みんな頑張って」と歌う。ラストのロッキンで非常に意味の大きい後半戦の幕開けを、この曲が飾った。

灼熱の季節が過ぎようとしている。
もう既に日は落ちて、涼しい風が肌を通過する。
夏の夜に相応しい、「真夏の果実」が聞こえてきた。
いつ聴いても浜辺で黄昏ている情景や、波音が掻き立てる鼓動を肌で感じとれる。魔法のような曲である。
サザンを初めて生で体感している隣の大学生が、涙していたのを横目に、クライマックスを迎える。


サザンのライブの真骨頂、「煽りゾーン」

さて、ここからが本番である。
本番というか、ここまでの雰囲気を全て覆す「煽りゾーン」がやってくる。
サザンのライブの真骨頂であるこの本編最終ゾーンは何もかもぶちかましてくる。

最初に聞こえてきたのは、今年発売されたディスコ×バンドサウンド×ポップスという異種格闘技戦のような楽曲、「恋のブギウギナイト」。サザンの楽曲の特徴として、ライブ化けが凄まじい曲が多いということ。普段なら目立たない、あまり刺さらないなあと思っていた曲が、ライブで聴いた時に印象がガラリと変わる。サザンのライブに飽きない理由がこれである。
正直この曲も最初聴いた時は刺さらなかった。桑田さんが好きなように遊んでいる曲としか思えなかったのだが、TBS系列で放送されたCDTVで、とにかくライブで聴きたいという想いが強くなった。妖艶な動きをするダンサーと共に、ディスコ調のナンバーに乗せて体を揺らせる。今までの雰囲気を一気に一蹴するなんともサザンらしい1曲だ。

ここから怒涛のクライマックスへ突入する。「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」で綺麗且つ禁断の夜を飾れば、炎演出に乗せて演奏した「マチルダBABY」がドロップされる。。ステージ上では(物理的に)熱気がさらに上がり、会場のボルテージはMAXに近い。この曲もライブ後半お馴染みの曲で、ライブ化けが物凄い。このロックサウンドな曲が現代でも増えて欲しいなと思うばかりである。さらに聴こえてきたのは「ミス・ブランニューデイ」。これもイントロの鳥肌具合がたまらない。四方八方へレーザーライトが放出され、熱気がさらに上がってくる。
このミス・ブランニューデイだが、現代を生きる人達に1番聴いて欲しい楽曲である。その理由を後日記事にしようと思う。

さて、ここでMCが挟まれ、「緑黄色社会もよろしく」と次なるバトンへ繋ぐことを宣言すると、サザンライブお馴染みの放水が始まる。そう、「みんなのうた」が聴こえてきた、

いつの日か この場所で逢えるなら やり直そう

ラストサビ

夏フェスラストのひたちなかで、このフレーズを歌うってことは、、、とちょっと期待が寄せられる。「秋ならね、、、、」というMCからも胸が高まる要因だが、「またいつか必ずどこかで会おう」とみんなに伝えているような気がした。それほどこのフェスには思い入れがあるし、正直メンバーも寂しいと感じているのだろう。だからこそ、次なる逢瀬でもう一度分かち合おうと、再会を待ちわびている。そんなの、生きる理由に他ならない。悲しい現実や苦しいことを水に流して、明るい未来をこれからも追い続ける。

さあここで低音ベースのギターフレーズとともに映像にロッキンジャパンのロゴが映し出される、、、、と思ったらお馴染みのギターリフに変わり大きく「G」の文字が出現する。会場のボルテージは既にMAXを超えている。
花火演出とともに、今の時代なら明らかにコンプラに引っかかる映像演出が繰り出される。もう今ならそんなの関係ない、「マンピーのGスポット」が演奏されれば、みんな心も体も火照り上がる。
ど下ネタなフレーズを歌いながらステージ上では色気あるダンサーと「マンピーズラ」をつけた桑田との掛け合いが繰り広げられ、いわば「深夜テンション」のようなカオス状態を演出する。いい意味で誰もがバカになれるこの曲がライブには欠かせない。

実は結構詩的表現が多いこの曲は、欲望にまみれた人間を赤裸々に表現している。サザンの曲は紐解けば紐解くほど沼に落ち続ける。それは時期によってもだし、年齢を重ねる毎にその深みは増してくる。昔何気なく聴いていた曲が、今では涙を誘う曲になっていたり、知らない間に心が奮い立たせられる欠かせない一曲になっていることもよくある。子どもの頃に意味もわからず聞いていた楽曲が、本当の意味を理解した瞬間に成長を感じる。耳から取り入れる感性の増強剤は、これからも死ぬ時まで付き合っていくだろう。

ラストサビのド派手な花火演出で本編フィナーレを飾り、汗と涙が入り交じったライブは一旦幕を閉じた。

次の音楽界を引っ張るアーティスト達へバトンを繋いだ伝説の瞬間

アンコールで再び登場し、感謝の意を述べる。
ここまでのレジェンドでも、ここまで腰が低い。いつまで経っても自惚れず、いつも周りの方たちやファンに感謝する姿勢は私達も見習いたいものである。

さあここで聴こえてきたのは史上最高のイントロ「希望の轍」である。次なる音楽界を引っ張っていくであろうアーティストへバトンを繋ぐ、そんな轍をサザンが作ってくれる。これほど頼もしい道標は他にない。

さあラスト、陽気なパーカッションが聴こえてきて、「勝手にシンドバッド」が始まる。お馴染みのコールアンドレスポンスを通してド派手なフィナーレをスタートさせる。全ての伝説はこの曲から始まったのだ。46年前に発表されてから今まで歌い継がれてきた名曲である。そんな曲が令和の夏フェスのラストを飾るとは、どう表現したらいいのか分からないほど凄まじいことである。

ラストサビで桑田が「今日の出演者出てこい!!」と叫ぶと、本日のステージを盛り上げた出演者が出てくる。朝からひたちなかを盛り上げたヤバイTシャツ屋さん、アイドルはロックフェスでも輝けることを証明したももいろクローバーZ、圧倒的な歌唱力と演奏で現代のポップスバンドを引っ張る緑黄色社会、ジャパニーズHIPHOPの先駆者Creepy Nuts、真っ直ぐ心に突き刺すロックサウンドで平成後期の青春を飾るWANIMA、もはや伝説に突っ込みかけている大御所ロックバンドのTHE YELLOW MONKEY。これほどサザンの前にふさわしいラインナップは無い。

「ヤバT最高!!!」「Creepy Nuts!!Creepy Nuts!!」「ももクロありがとう、しおりちゃんありがとう!」「緑黄色社会今後はよろしくね、」「WANIMA歌上手いな!!!」とこれからの音楽界を背負っていくアーティスト達に労いの言葉をかける。もう涙が止まらなかった。この瞬間に立ち会えて本当によかった。そして最後はイエモンの吉井に締めの合図を任せて、本編最後よりド派手な花火演出で約100分のサザンのステージが終幕する。そして最後には、自身の名前が桑田さんの影響であることを公言しているももクロの玉井詩織に、桑田から締めの言葉を任される。そして出た言葉は「桑田さんのおかげで詩織という名前になりました」。これ以上の言葉、感謝の意は見当たらない、120点満点の言葉だった。本当に尊敬する人の前でこんな言葉が出るだろうか。この言葉が出たことが自分の事のように嬉しくなり、もう涙が止まらない。この記事を書いている時も涙を堪えながら書いている。一生忘れられない瞬間だった。

こんなにもこの日にふさわしいラインナップはない。

音楽は、最高だ。

もうこれが完成している頃には、ロッキンからはや1ヶ月半が経つ。ただ人生最高の瞬間には変わらないので、今でもこの日のことを思い出しては物思いにふけている。この記事で全て消化できるかと言われると、そんなことは出来ない。絶対もっと語り継ぐだろうし、死ぬ間際までこの瞬間は忘れられないだろう。こんな感性を持てた自分へ誇りが持てるし、こんな感性に育ててくれる音楽は、やっぱり最高である。最高という言葉で片付けたくないが、色んな意味が含めて、最高である。

そして、、

来年よりサザンオールスターズのツアーが開催される。
また、3月にはアルバムが発表され、まだまだその活躍は足を止めない。
是非1度、この目で伝説を確かめて見てほしい。
もうこのトレーラーの曲でちょっと泣きそうになる。


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