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今年の年末は帰省する貴方が知っておくべき、負の遺産の相続に関するお話②
何かと避けられがちな縁起でもない話、相続。
負の遺産から逃れる算段だけでなく、
生じさせない為に貴方が出来ることを解説。
皆さんこん〇〇は。
独立系 FP 事務所、ガーデン・イールズの藤岡です。
今日この1日も24時間しかない中、本記事をお選び頂き本当に有り難うございます。
今回は少し前に投稿した負の遺産相続に関するコラム、その後編となります。
前編では相続から目を背けてはいけない理由、相続に向き合うということの意味、早めの着手が望ましいこと、などをお話させて頂きました。
本記事は前編をお読み頂いていることを前提に執筆しております。
先にこの後編ページをお開きになられた方はまず、前編をご一読下さい。
“負” の遺産とはどういったものか
遺産と聞いて一般的にイメージされるのはやはり、貰った人に何らかの利益をもたらすものだと思います。
一番分かりやすいのは現金ですし、宝飾品や貴重品、そして土地建物、自動車も、多くの場合は含めることが出来るでしょう。
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前編でも記しました通り、相続が発生すると、亡くなられた方(被相続人)の財産や権利義務は、その全てが引き継ぎの対象となります。
まずはこの、 “全てを引き継ぐ” の意味を肌で理解する必要があります。
故人の遺産には、プラスに働くもの、そしてマイナスに働くもの、そのどちらもが含まれるからです。
ですから、このプラスとマイナスをきちんと区別したいのなら、それは “資産” と “負債” 、これらの言葉を用いて捉えることが重要になります。
資産と負債をお金に当てはめますと、資産であれば銀行預金、逆に負債ならクレジットカードのキャッシングや、消費者金融などを通じて生じた借金になります。
この両方が相続の対象となり、そして後者こそが負の遺産、ということになる訳です。
一応念を押しておくとすれば、借金の返済は “義務” であり、つまり故人が果たせなかった義務も相続(引き続ぎ)の対象になる… ということです。
“負” の遺産のやっかいさ
全貌の掌握が容易では無い
負の遺産がやっかいなのは、その全てを把握するのが資産の時より大変だということ。
身内であっても借金の存在を隠したがる人はいるもので、亡くなった後の取り立てで判明するようなこともあります。
一つその類の負債が判明すると、他にもあるかもしれない… と、俄然不安になってきますよね。
本当に洗いざらい調べようと思ったら、司法書士などの先生のお力を頼りとせざるを得なくなります。
連帯保証の有無はさらに把握困難
そんな先生のお力を持ってしても無いことの確証が取りづらいのが、連帯保証債務の有無です。
例えば父親の可愛がる後輩が事業を立ち上げるのに借金をして、父親がその借金の連帯保証人になっていたとします。
父親が亡くなって通常通りの相続を済ませていると、その後輩の事業が失敗して借金を払えなくなった時、貸し手は貴方に「返してや!」と怒鳴り込むことが出来ます。
遺産相続は、その当時にあると知っていたかどうかに関係なく、その全てが引き継がれたものとして扱われるのです。
残された実家を負の遺産と気付けるか
そして上記の2つより、さらに気付きにくい負の遺産が存在します。
それは故人の生前のお住まい。
そう、多くの場合は貴方も独り立ちをするまでは住んでいた、ご実家のことです。
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両親がご存命のうちは終の棲家として生活の拠点となり続けた家も、主が天に召されれば残された者たちへの財産となります。
その家を誰も住まないままで放置していると、維持費や固定資産税だけが掛かり続ける負の遺産、つまり “負動産” となってしまうのです。
借金のような明瞭な不快さが無く、またそのご実家に思い入れがあれば手放す決断も難しくなるのが、この負動産のやっかいなところ。
何とか処分に乗り出す心の整理が出来たとしても、今度はタダ同然にしても買い手がつかない、建物を解体するなら数百万も必要… など、思いもよらない困難がつきまといます。
一見資産と見えた実家が、めくってみればジョーカーのような振る舞いで負債になってしまうのかどうかについては、関係する家族の気持ちも確認しながら慎重に見極める必要があります。
“負” の遺産から逃れる方法
遺された財産がマイナスの価値を含む可能性がある場合は、その相続を回避する以下のような法的手段が存在します。
相続放棄
家庭裁判所にて相続放棄を申述すれば、被相続人の財産について、それを相続する全ての権利を放棄することが出来ます。
価値のあるものだけを都合良く相続することは不可能ですので、故人の財産が明らかに債務超過であれば、諦めて全てを放棄することが視野に入ってきます。
手続自体はそれほど難しいものではありませんが、相続放棄が出来るのは、貴方が被相続人の最後を看取ってから3ヶ月以内。
財産の確認は急いで行う必要があると言えるでしょう。
限定承認
一方で限定承認という選択肢もあり、こちらは故人の財産が足し合わせてプラスかマイナスか、不明瞭な場合に有効。
というのも、限定承認の申述を行っておけば、トータルのプラス分だけを相続出来るようになるからです。
申述の期限は相続放棄と同じく、相続の発生を知ってから3ヶ月以内ですが、限定承認は相続する人全員が共同で行う必要があります。
一族の財産を健全に保つということ
記事の構成を整える便宜上、まずは負の遺産を回避するための手法から述べましたが、本当にお伝えしたいのはここから。
この年末、帰省した貴方に試みて頂きたいのは、被相続人であるご両親が、負の遺産を生じさせてしまうような事態に向かっていないか、の確認なのです。
負債を作らせない
例えばご両親が人の頼みを断れない性格であったり、年のせいで忘れっぽくなってきているような場合は注意が必要です。
詐欺のやり口は年々巧妙になっていく一方なのに、それらから身を守らなくてはならない親の判断力は、低下の一途を辿っているわけですから。
固定回線は迷惑電話撃退機能が付いたものに買い替えれば効果は高いですし、怪しいパンフが置かれていればそれとなく、問い質してみるべきでしょう。
また、金融機関などからのお知らせメールを受信する設定にしているようなら、それらはもう全て停止しておいた方が無難かもしれません。
フィッシング に引っ掛からないよう、そのような案内・警告のメールは全て怪しいと判断させるよう仕向けるのです。
老後資金がショートしていないか
次はもっと深刻な話で、既にリタイヤされているご両親が、将来の生活資金に不安を抱いていないか、に関してです。
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想定外に早く預貯金が底をつきそうな見通しがハッキリしてきた時など、本人たちだけに任せず、一緒になって打開策を考えるつもりがあることを、ちゃんと伝えてあげて下さい。
持ち家を売却・処分する方向で進められるなら、最近はリースバック、リバースモーゲージといった、そのまま住み続けながらも資金を確保出来る手段があるにはあります。
ただこれらは、言葉を選ばずに言えば “足元を見た” 金融商品であり、一般的には費用対効果の低い選択肢であるのが現実。
賃貸への住み替えが受け容れてもらえそうなら、スタンダードな売却を行って引っ越した方が、手残りは多くなる可能性も十分にあります。
例え年を取っていなくても、お金に瀕すると視野が狭まり、論理的な決断が出来なくなりがち。
必ずしも貴方自身が詳しくなる必要はありませんので、不動産や相続の分野に強いファイナンシャル・プランナーなどに相談出来る環境を確保しておきましょう。
因みに… 懐具合のお伺いというのは、血の繋がった親子でもなかなか難しいものではありますよね。
お金の使い方に明らかな変化があったり、生命保険の解約を考えていたりすれば兆候アリと考えられますので、タイミングを逃さずに聞いてみて下さい。
最後に
最も大事なことは、被相続人の財産も自分ごとと捉え、つまり一族の財産を健全に保つことを目的として考えることです。
本人や自分自身はもちろん、関わりのある親族、皆が喜ぶことを目標にして行動していれば、前編でお伝えしたチームワークも自ずと良くなってくることでしょう。
人生の中で相続に深く関わる機会は、大きく分けて2回。
それは財産を分けて受け取る時と、最後に分けて明け渡す時です。
願わくば、まずは受け取る側になる、まだまだお若い皆さんの側でも能動的に動いて頂きたいと思い、この記事を書き上げました。
宜しければ帰省の道中にももう一度読んで、少しでも作戦を考えてから、ご実家の敷居を跨ぐようにされて下さい。
X(旧 Twitter)ではさらに踏み込んだ話や、時にはクセの強い持論を書き殴っていることもありますので笑、プロフィールページのリンクよりチェック&フォローをお願いします。
最後までお読み頂き、有り難うございました。
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう。
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