2021年に観たエキサイティングな映画(旧作)を紹介します
新作映画も良いのですけど、他に何かないかしら、と思った際に是非。昨年観た映画の中から、個人的にエキサイティングだった旧作映画を紹介します!
バジュランギおじさんと、小さな迷子(2015年:インド)
「長い」という唯一の難点を除けば、本当に最高の映画。
あらすじ:パキスタンに住む声が出ない女の子シャヒーダちゃんがお母さんと一緒にデリーの有名な寺院に行ってお祈りをするのです。しかし、帰りに汽車で彼女はお母さんとはぐれてしまい、一人ぼっちに。たまたま彼女に出会った仕事もしていない能天気なバジュランギおじさんはそんな女の子を助け、どうにかして家に帰してあげようとするのですが、とにかく場所がわからない。どうやら隣国のパキスタンらしいと判明したものの、国境閉鎖でどうする?というお話。
ストーリーや内容について全く知らないまま見始め、最初は「コミカルでキワモノの子供をダシにしたロードムービー」ぐらいにしか思ってなかったし、実際中盤あたりまではそんな感じなのですが、もう途中から涙が止まらなくなりました。シャヒーダちゃんの無垢で健気な感じに、バジュランギのちょっと間抜けだけど真面目で一直線なところに、そしてそんな二人を応援し、温かくて熱いメッセージで呼びかける地元のテレビメディアに、心を動かされる訳です。
インドとパキスタンという、隣国でありながら頻繁に国境が封鎖されるなど紛争が絶えない国で、憎しみ合いをやめないかという切実な市井の人々の嘆きが根底にはあると思うのですね。だからこそ胸を打つと。
素敵な映画でした。拍手。
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未来を乗り換えた男(2018年:ドイツ・フランス)
あらすじ:現代のフランス。祖国ドイツで吹き荒れるファシズムを逃れてきたゲオルクが、ドイツ軍に占領されようとしているパリを脱出し、港町マルセイユにたどり着く。偶然の成り行きで、自殺した亡命作家ヴァイデルに成りすました彼は、船でメキシコへ発とうと思い立つ。そんなとき一心不乱に人捜しをしている黒いコートの女性とめぐり合ったゲオルクは、彼女に心を奪わる。しかし、女性が捜索中の夫は、ゲオルクが成りすましているヴァイデルそのものだった…。
今まさにドイツに侵略されているという、架空の世界線にある現代のフランスを舞台に、亡命を願うゲオルク、マリー、そしてマリーが身を寄せる医者リヒャルトの3人が織りなすサスペンスチックな人間模様というストーリーなのです。なんとも文字にしづらい複雑な感情が去来。あと観終わった後げんなりしながらもお話に想いを馳せるという不思議な体験。誰も悪くないのに何もかもうまくいかないという運命のいたずらを観ながら、ぼんやりと昔観た映画「シェルブールの雨傘」を思い出していました。
運命に奔放される3人の言いようのないやるせなさ、この一言に尽きる気がします。
設定は現代でありながら、下敷きとなっているのが終戦直前の1944年に発表された小説「トランジット」であるせいか、劇中に携帯電話やパソコンなどのガジェットが一切登場せず、「現代のおとぎ話」とでも言ったら良いのか、不思議な世界観に包まれています。
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音楽(2020年:日本)
あらすじ:不良高校生の研二がなぜか突然「バンドをやる」と宣言、友人の太田と朝倉を誘ってバンド「古武術」を結成。そんなある日、似たようなバンド名「古美術」で活動するフォークシンガーの森田から、町の「フェス」に誘われる・・・
「不良高校生がバンド」と聞くと、熱い情熱の青春ストーリーかと思いきや、まさかこんな展開になるとは・・・でした。なんとものんきでちょび髭を生やした不良の研二が醸し出す存在感が良い。あと、大事なところでひとこと言う時の「間」が長くて、ついつい引き込まれてしまうのです。
一番評価したいのは、「ロトスコープ」という手法を使い、実際に人間が動く映像を手書きでトレースしているため、楽器を演奏する動きに「嘘」が無いこと。これが、演奏シーンの感動に厚みを与えています。
ここで書くべき話題では無いですけど、「ラ・ラ・ランド」とかに感じる音楽的な「そうじゃ無い」という違和感をこの映画からは一切感じないのですね。それは、演奏そのものに嘘が無い、そのことに尽きるのかな、と。
手書きというと、この映画は監督の岩井澤健治さんがたった一人7年間の歳月をかけて描いた4万枚を超える作画でできているのです。全部一人で、と聞くと「JUNK HEAD」の堀監督と通じるものがありますね。こちらも7年間かけて作ったストップモーションアニメなんですけど。
というわけで、ほのぼのコメディかと思いきや本当に熱い音楽が繰り広げられる映画「音楽」、タイトルがタイトルだけに検索しづらい以外は本当にオススメです。
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フロッグ(2019年:アメリカ)
あらすじ:とある郊外の森で、10歳の少年が行方不明に。捜査を指揮することになったグレッグ刑事は、犯行が過去に発生した一連の事件と似ていることに戦慄を覚える。なぜならその犯人はすでに逮捕されて獄中にいたからだった。そんな中、グレッグは家庭にも問題を抱えていた。妻の不倫がばれ、家庭内がズタズタになっていたのだが、同時に家の中で不可思議な出来事が起き始める・・・
というわけで、誘拐事件と自宅で起きる不審な出来事、という2つの事件を主軸にお話が進んでいくのですが、映画の中盤からガラリと雰囲気が変わり、第3の軸を中心にストーリーが回り始めます。この展開が面白くて、最後までハラハラ。どちらかというとどんでん返し系の映画ですので、事前情報を全く入れずに見るのがオススメ。もう一つの「フロッグ」の意味に気付けるでしょうか。
お伝えしたいことはたくさんあるのですけど、何を言っても後半のネタバレになってしまうので、感想を伝えづらい映画ではあります。
「シャッター・アイランド」なんかもそうですけど、分かった上でもう一度観てみると、何気ないグレッグの表情などに違った発見があって「なるほど、そういう感情」とわかるのもまた面白いという。
「何かいる気がする」っていう不穏な空気の演出がとても秀逸で、気持ちよく怖がれるのですねー。
『ザ・トランスポーター ロンドン・ミッション』では酷評されたアダム・ランドール監督ですけど、そこは無かったことにして是非観てほしいと思う作品です。
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移動都市/モータル・エンジン(2018年:アメリカ)
あらすじ:世界を60分で崩壊させた戦争から数百年、人々は荒廃した土地に資源を求め都市を移動させながら生活していた。 そんな移動都市の頂点である巨大都市ロンドンで、史学士見習いのトムはある日ロンドンに「喰われた」小さな採掘都市から紛れ込んだ1人の女性と出会う。
もーとにかく冒頭10分の映像が神がかりすぎててですね、ずっとこれで行ったら良いんじゃないと思うのですが・・・
↑の写真が全てを表しているのですが、巨大都市の下にこれまた巨大なキャタピラだの車輪だのを取り付け、都市が荒野を走り回って他の都市を捕食(?)するというハチャメチャな世界観が最高に素晴らしい。ハウルの動く城とマッドマックスを足して、ちょっぴりスターウォーズっぽさも加味した上で薄味に仕上げました的な映画となっております。派手なアクションシーンが2時間たっぷり楽しめますのでそこはオススメ。
監督は「キング・コング」で視覚効果を担当したクリスチャン・リヴァース、脚本・制作に「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン等のスタッフが結集し、これでもかという力技の迫力ある映像がてんこ盛りなのですが、なぜか興収は芳しく無かったようですね・・・なぜ・・・
元になっているのが2001年に発表されたSF小説の「移動都市」シリーズ。小説は4部作となっているので、モータル・エンジンにはまだ続きがあるのです。原作のストーリーを丁寧に描こうとしたせいで、詰め込み感が強く話がとっちらかってしまったという部分はあります。
でもね、映画なんて減点評価していたらつまらないのですよ。自分が最高だと思える部分を思い切り加点して、楽しんでいきたいなと思う訳です。なので「移動都市/モータル・エンジン」は最高の映画です。
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以上です。今年も新旧にこだわらず、様々な映画に手を出してみたいなと思います。