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異世界のジョン・ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第4話 悪魔との契約
「さっさと願いを言えよ。でないと殺しちまうぞ」
動揺する石動に促すと、ハリーは斧を首元に近づける。
金属のひんやりとした感触が首元に伝わると、青年は死を覚悟する。
(……こ、殺される。ここまでなのか)
眼を瞑って、彼は最後の刻を待つ。
だが、一向に首が刎ねられた感覚はない。
おそるおそる瞼を開くと、眩い太陽の日差しが差し込んだ。
「その怯えよう、悪魔の召喚は初めてだな? こいつ程度の魂なら殺して奪うまでもねぇ。願いを3つ言い終えるまで、俺はテメーを地の底まで追いかける」
こいつはやると決めたら先ほど同様、容赦なく始末するはず。
そうしなかったのだから、現状は殺すつもりがないのだろう。
(……なんとか首の皮一枚つながったか。けれど願いは慎重にしないと。脅しに乗るな、俺)
下手に発言すると、それを願いの1つにカウントされてしまう。
そういう話は、山ほど見聞きした覚えがある。
不幸中の幸いで、今に至るまで一言も発していない。
逃げ出したくなる気持ちをこらえて、石動は汗でびしょ濡れの額を拭う。
冷静さを取り戻そうとふと横目で見ると、横たわった盗賊の頭や凍った男たちが視界に映る。
彼らに救いの手を差し伸べるべきか。
(……いや、無理だ。それを願ったら、自分たちの首を締めることになる)
この状況で他人を助けるほど、余裕などない。
まずは自分の身の安全を確保してから、この状況を切り抜けてから彼らのことを考えよう。
優先順位は自分と直美、その次に彼らでいい。
なら願いは1つ。
呼吸を整えた後、見上げると
「願いが決まったようだな」
見透かすようにハリーは呟く。
相手も人の魂を奪ってきたであろう悪魔。
一筋縄ではいかないだろうし、願いを増やせなんて願いには、キチンと対策をしているはずだ。
(悪魔交渉の適正。もしその才覚が眠っているなら、ここで開花させなければ。次はないんだから)
生唾を飲み込むと、頭で考え抜いた言葉を紡ぐ。
「まず僕たちの冒険への同行と、命令への絶対服従。これを約束してもらう」
「クク、いいだろう。まずは1つ。オレサマの気が変わらない内に次の願いを言いな」
悪魔は石動の願いを快諾した。
まだ魂が奪われていないということは、今の願いは1つ目か2つ目のどちらかだ。
万が一、次が3つ目の願いだったならどうすべきか。
(念には念を入れた方がいいだろう。魂を取られない方法がないか。いや、絶対に叶えられない願いを言う選択肢も……)
「2つ目の願いは、天使と悪魔の和解だ。できるか」
「あぁん?! 天使のクズ連中とオレたち悪魔は水と油。仲良くなんかできるわきゃねェだろがよ」
「そうか。この願い、悪魔には叶えるのが無理なようだな」
ほくそ笑む石動は歩み寄ると、啖呵を切る。
「3つの願いが叶えられないなら、魂はやれないな。魂をやる契約は果たされてない」
「ふざけたこと抜かしやがって。ここの連中、まとめてブチ殺してやる」
「もしそんなことをするなら、俺はお前に自死を要求する。術者の命令は絶対厳守、そうだろう?」
怒鳴り散らすハリーに、石動は毅然とした態度で反論した。
今まで青年に向けられていた刃は、石動の自死の命令によって、ハリーの首筋へ食い込んだ。
「……小賢しい真似しやがって。1つ目の誓約さえなけりゃ、オレサマが物理行使してたのによ。トサカにくる野郎だ」
両者一歩も譲る気はなく暫くの間、沈黙が流れた。
(折れたら悪魔の思う壺だ。踏ん張れ)
無言の時間が流れた後、先に痺れを切らしたのは悪魔オールド・ハリーだった。
「ああ〜っ! 人間っつうのは、どうしてこんなズルい奴ばっかりなんだ〜っ! 今月の魂蒐集ノルマ、終わってねーのによ!」
喚きながら地団太を踏み、ハリーが憤る。
悪魔も人間同様、大変らしい。
苦笑いしつつ様子を見ていると、ハリーは石動の方に向き直った。
「ありふれた名前の悪魔、オールド·ハリー。これからよろしく」
「ケッ、仕方ねぇ。悪魔にとって契約は絶対だからな」
憎々しげに見下ろす悪魔に
「お前が殺した、そこの男は治せるか?」
そう訊ねると、悪魔は間髪入れずに会話を続ける。
「あぁ、オメーの知り合いか? 生憎オレサマは癒やしの魔法は使えないぜ。治してほしけりゃ、他の悪魔を呼ぶための生贄をよこしな。生きた雌鶏(めんどり)がありゃ、助けられる」
「違うさ、赤の他人だよ。それどころか、僕たちを殺そうとした連中さ」
石動が他人だと告げると、ハリーは面を食らったように眼をパチクリさせた。
信じられないといいたげな表情だ。
自分を襲った赤の他人を助けるなんて、自分でもどうかしていると思う。
けれど何故か、助けてしまったのだ。
「他人だったら、くたばっても構わねェだろ。なんで助けようとした?」
「人と悪魔は違うんだよ。キミには理解できないだろうがな」
「理解なんざしたくもねぇよ。ロクに魔法も使えねぇ下等生物のことなんかよ。まぁ、契約中だけは同行してやるが」
ハリーはニタリと口角を吊り上げると、身体を揺らして彼を嘲笑う。
やはり悪魔は悪魔。
人とは相容れない存在なのだ。
契約でがんじがらめに縛らないと、いつかとんでもないことをしでかしそうだ。
(的確な命令で、悪魔を指示しなければ。悪魔交渉の適正を活かして)
とはいえ契約は終え、一件落着。
仲間の一員として、まずは彼女に挨拶をさせなければ。
「というわけだから、直美さん。今後はこの悪魔も冒険に連れていくよ」
「よろしくな、嬢ちゃん」
挨拶するハリーを一目見るや否や、ダンゴムシのように丸まった直美が
「ひぃぃい、そんなのが私の冒険についてくるの? 早く捨ててきなさい!」
錯乱気味に喚く直美に、石動は小動物を甘やかすように、声を掛ける。
「まぁ、落ち着いて。頭数は多い方が君と僕の目的が早く達成できるよ。だから怖くても我慢して」
幼少期に怖いものに、トラウマでもあるのだろうか。
それなら仕方ないが、ただ知識がないから、怖がっている可能性もある。
契約を済ませたこと。
悪魔は術者の自分に従うこと。
直美の嫌がる行動はさせないように命令できること。
冒険の戦力となること。
なんとか落ち着かせるべく、順を追って説明していった。
「お、怯えてなんかないわ。悪魔なんて存在するわけないんだから〜っ! じゅ、十字架……持ってない! もう終わりよ〜!」
「魔法の存在も充分オカルトだと思うけど、魔法はよくて悪魔は受け入れられないんだ?」
「なんだ、この女は。オレサマは捨て犬かなんかだと思ってるのかよ……」
ハリーが呆れ気味に呟くとその一言がツボにハマり、緊張が途切れて石動は吹き出す。
その瞬間、青年はさっきまでの緊張が途切れたのを自覚する。
「なーに笑ってやがる? 気に入らねぇな」
「いや、賑やかな旅になりそうだと思って」
「ヘラヘラしてられるのも、今の内だけだ。オレサマはいつだって、お前を殺す機会を伺うからな」
ハリーはそういうと、斧を担いで石動を睨み据える。
本当に殺したいなら黙っていればいいのに、妙に律儀な奴だ。
この悪魔も直美と同じように、普段とは違う一面があるのだろうか。
「……そうか。人はいずれ死ぬ。早いか遅いか、それだけの違いだよ」
「ビビリ女と違って、こいつは肝が座りすぎだな。クソ、調子が狂うぜ……」
「ビビってないわよ!? 私をよく見なさい! どこがビビリなの!」
生まれたての小鹿のように脚をぷるぷる震わせて、直美は強がってみせた。
あまりに説得力のない発言に、石動とハリーは白い眼を向ける。
ただ直美が、このままでは困る。
まともに会話もできないし、ハリーが悪魔の姿では行く先々で悪目立ちしてしまう。
(……視線が僕にも集まるよなぁ)
それは石動にとっても死活問題だ。
彼が思考を巡らすと、ある一つの解決策を思いつく。
人ならざる悪魔なら人の姿を模倣するのは、朝飯前だろうと。
「ハリー、別の姿になれるかい? 彼女が怖がるから頼むよ」
「悪魔だからな、お安い御用だぜ。エルフ、ドワーフ、ノーム、ワービースト……どんな種族の女にするかで、テメーの趣味が丸裸になっちまうな?」
石動にハリーは軽口で嘲笑する。
そんなつもりはなかったのに。
苛ついた青年は、頬を膨らませて反撃する。
「人間の男の姿で頼むよ。少年でも青年でも老人でも、見た目は君の自由にしてくれ」
「ククク、後から女にしろっつっても、オレサマは願い下げだからな。眩しいだろうから、目ェつぶってな」
言われるがまま瞳を閉じようとした刹那、青年はカッと眼を見開いた。
この悪魔を完全に信用したわけではない。
念の為、釘を差しておこう。
「まさか眼を瞑った間に不意打ちしたりしないだろうな。ハリー、契約者の僕に嘘はつくなよ」
「……疑い深いねぇ。そうでなきゃ、悪魔を従える資格はねぇがよ。信じられないなら命令しな」
「オールド·ハリーに命じる。契約者の許諾なく、人を襲うことを禁ず」
言われるがまま命令をしてから、青年は安堵の溜息を漏らす。
命のやりとりは、まだ続いている。
正気がいつまで保てるだろう。
「おい、コラ。終わったぞ」
目を開くと逆立った金髪と三白眼の男が、僕の目の前に姿を現した。
190cmはあろう長身と筋肉質な体は悪魔の頃と変わりないが、体中に無数にある傷が、歴戦の猛者の雰囲気を醸し出している。
厳ついが、王国を探せば普通にいそうな風貌の冒険者だ。
だが、どこか人ならざるもの特有のオーラを肌身で感じた。
ハリーがその場にいるだけで肌が痺れるような、そんな不快な感覚に見舞われるのだ。
「ククク、悪くねェ姿だ。人間共も、この見た目なら迂闊に近寄れないだろ」
「だろうね」
堅気の人間には見えない姿を見て、青年は心の底から同調する。
「あの人たち、大丈夫なのかな」
「大丈夫よ。あの氷、そのうち溶けるから。キツイお灸をすえないと、繰り返すでしょ」
確かに命を奪おうとした罪は報いる必要があるだろう。
やられたらやり返すのが最適と、ゲーム理論でも証明されている。
僕はそれ以上、追求しなかった。
「ハリー、あの遺体をフィリウス·ディネ王国の教会まで運んでくれ」
「あいよ」
ハリーに亡骸を持たせると、石動の元に直美が駆け寄った。
「もしかして蘇らせる気? まぁ、教会に持っていけば元通りになるだろうけど」
「蘇生させるかはともかく、このままは気が引けるし。やっぱり直美さんは嫌、だよね」
放置すれば、寝覚めが悪くなる。
だが復活させて、また襲ってくる可能性も0とはいえない。
彼女からしたら、たまったものではないだろう。
反対されるダメ元で聞いてみると
「……貴方がいうなら。でも、また襲われる可能性だってあるし、迷惑かけちゃう……」
伏し目がちに、申し訳なさそうに呟いた。
乗りかかった船だ。
いまさら彼女だけに、この悪党の命を背負わせる訳にもいかない。
「二度目は情けをかける必要なんてないよ。また襲われたら、この男をどうするか、君が好きにすればいい。僕は君の裁量に従う」
「……そうね。それまでには、結論を出すわ」
感情が昂っていたが、今はかなり落ち着いている。
この大陸に適応しすぎただけで、彼女自身は割りと平凡な女の子なのだろう。
「じゃ、いこうか。直美さん、ハリー」
そういうと石動は、堆く積まれた石の城壁へと向かう。
三歩後ろを歩いて付いてくる直美に覇気はなく、危なっかしい。
だから今は、僕が代わりに彼女を先導しないといけない。
王国へ戻る帰路ではハリーだけが静寂を破るように、文句をブツブツと言っていた。
男の遺体を送り届けた帰り道にて
帰り道に石動と直美は貰った報酬で、男の遺体を教会に預けた。
あの男が勝手に悪魔ハリーを呼び出して、勝手に亡くなった。
僕たちに非はない。
けれど人1人の命から解放され、肩の荷が下りたのか、直美の表情は少し晴れやかになったように見えた。
「直美さん。装備のお金の話なんだけど」
「大丈夫よ、装備代は天引きしたから。報酬は60Gだから残りは48G。はい、これ」
「あ、うん」
そういって直美は報酬60Gを等分し、天引きして残った金貨18枚を手渡す。
何もしていないのだが、本当に貰っていいのだろうか。
罪悪感を感じながらも、お金がなければできることは限られてくる。
僕はありがたく受け取ることにした。
「しっかりものだなぁ。直美さんは。僕みたいな人間には、直美さんがついてくれないとダメだよ」
「これくらい普通でしょ。それよりお店に急ぎましょ。楽しみにしてるんだから」
お世話になった店員のいる飲食店に向かっていると、黒髪に黒いマントを羽織った剣士の少年が、すれ違いざまに話しかけてきた。
右腕には包帯を巻いており、痛々しい。
彼もリングワンダリングの迷い人なのだろうか。
「待ちな、そこの冴えない茶髪男」
「……えーと、それは僕のこと? 何か用?」
いきなり失礼な物言いで突っかかってくる彼に、石動は内心
(直美さんといい、この子といい、ここに来てから絡まれてばかりだな。やっぱり人と関わると、ろくなことがない)
文句を垂れ流しつつ、石動は適当に話に相槌を打った。
「俺にはお見通しだ。貴様が悪魔を付き従えていることをな」
「なんなのよ、この子。ちょっとおかしいんじゃない? 貴方も黙ってないで、言い返したら?」
「フン、図星のようだな。醜い女悪魔め」
「なんですって! こんの……クソガキ!」
当事者の石動が呆気に取られる横で、何故か直美の方が少年に怒声を浴びせた。
本人を差し置いてヒートアップしていく口喧嘩を、石動は困惑しながら静観していた。
(直美さんの言う通り、ちょっと腹は立つけども)
いきなりバカにされれば、誰でも腹は立つ。
少しばかりからかっても、バチは当たるまい。
そう思い立ち、意地悪な質問を投げかけることにした。
「ねぇ、僕ら3人の内の誰が悪魔だかわかる? 言いがかりでないなら、当てられるはずだよね」
無理難題を出してみると
「いいだろう、貴様らの挑戦を受けて立つ」
少年は威勢よく答えた。
本当にハリーの正体を見抜く悪魔を識別できる適性の持ち主なら、簡単に当てられるに違いない。
「あーん? なんだ、このチンチクリン。オレサマに文句でもあんのかよ?」
ハリーがガンつけ、少年を威圧する。
ガタイがいい大男の脅しに萎縮しているのが不憫で、石動はハリーを宥める。
「まぁ、落ち着いて。ハリー」
「クク、売られた喧嘩は全部買うぜ。今のオレサマは、腸が煮えくり返ってっからよ」
ハリーが血走った眼で少年を睨んではにかむと、口から犬歯のような鋭い歯を覗かせた。
悪魔としてはまともでも、人間なら正気ではない。
「えーと、そ、そう! 貴様とその女が悪魔だ!」
ビクビクしながら、少年が石動と直美の両名を指差す。
さすがのハリーといえど、街中で殺しはしない……はずだ。
となると、ハリーが悪魔だと見抜けなかったのだろう。
(あ、ハリーが悪魔だってわからないのか。ってことは、天使とか悪魔とかが好きな年頃なのかな。若気の至りだな。僕にもそんな時期があったよ)
納得した石動は
「ははは、ハズレだよ。それじゃあ失礼するよ」
そう言い残して、その場を去ろうとすると
「クッ、狡猾な悪魔め! 次こそは貴様の正体を暴いてやるからな!」
少年が叫び、一行は街の人々の視線を浴びた。
絡まれたのは自分たちなのに、まるでこちらが悪者扱いだ。
気がつくとシャワーを浴びた後のように、青年の体中は汗まみれになっていた。
―――突き刺すような人の目が自分を責めている。
(……気分悪い。これだから雑踏は苦手なんだよ。本当に勘弁してくれよ)
気が気でなく、石動は
「子供なんだし、大目に見てあげよう。それよりは、早くあそこまで急ごうよ」
用件だけ告げると、目的の場所目掛けて駆け出した。
「ユウに免じて許してあげるけど、今度見かけたらタダじゃおかないわよ!」
「威勢のいいガキだな。夜道に気をつけろよ。もしかしたら、悪魔に出会っちまうかもしれねぇからな。ククッ」
オールド・ハリー
MBTI:ESTP 192cm 体重不明
悪魔王サタン様に絶対服従を誓う、自他共に認める平々凡々な悪魔。
人々に堕落と文明を与えた原初の炎と、悪魔らしい敵への精神攻撃を得意とする。
とあるきっかけで魔術書を開いた石動に呼び出され、問答の末に、しぶしぶ彼や彼の仲間を守ることに。
最初は石動との契約を反故にしようとするものの、人間たちと触れ合ううちに、徐々に彼らに感化されて甘い性格になっていく。
生来の粗暴さと石動との契約の板挟みで、本来ならいらぬ苦労を背負い込む。
一人称はオレ、オレサマ。
デヴィルの数多い名前の一つ―――オールド・ハリーがもっともありふれた形―――で、ほぼ確実に「襲う」や「蹂躙する」を意味する動詞 harryに由来する。
ドーセットのオールド・ハリー・ロックと呼ばれる海の岩は船に破壊をもたらした。
「オールド・ハリーを演じる」とは文字通り言葉の濫用や破壊的な振る舞いで「デヴィルの役割を演じる」ことである。
「ハリー卿にかけて」は、穏やかな呪いである。
オカルトオタクの悪魔、魔物設定秘話「悪魔オールド・ハリー」
この雑文に目を通す方は拙作の長編ファンタジー「異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~」を拝読された方だと思います。
読んでいただき、ありがとうございます。
新たな試みとして、悪魔や魔物の設定などについて語ることにしました。
初めての悪魔は小説名にもなった、オールド・ハリーについてです。
1:まずどんな悪魔か
これに関してはオールド・ハリー自体がマイナーにもほどがあるので、愛用書から引用させていただくと
デヴィルの数多い名前の一つ―――オールド・ハリーがもっともありふれた形―――で、ほぼ確実に「襲う」や「蹂躙する」を意味する動詞 harryに由来する。
ドーセットのオールド・ハリー・ロックと呼ばれる海の岩は船に破壊をもたらした。
で、イギリスの観光地ドーセットを起源とした悪魔。
wikiのオールド・ハリー・ロックスは世界遺産にもなった、イギリス海峡の海岸ジュラシック・コーストの一部。
そして同記事の伝説の部分には悪魔について触れられ
この地方では、伝統的に「オールド・ハリー(Old Harry)」という言葉は、悪魔を遠回しに指す語として用いられてきた。
そして伝説によれば、このオールド・ハリー・ロックスには、その悪魔が眠っていると言う。
オールドに関しては悪魔にありがちな尊称で、他にもオールドを冠した悪魔については、《悪魔の事典》に記述があります。
さて小説を拝読された方々は違和感があるでしょうが、ハリーは作中では火の魔法しか使用していません。
どちらかというと、火ではなく海と岩と関連。
ファンタジーの属性に例えるなら、水属性と土属性の悪魔だろうと。
これはハリーの過去編にて回収しますので、気長にお待ちください。
2:何故主人公の相棒にしたか
理由は単純に普遍的な悪魔を、相棒に据えたかったからです。
主人公自体も優れた面は多々あれど、人並み以下な部分も見受けられ、総合的な能力自体はそこそこ程度に落ち着くでしょう。
大物の悪魔だと相応に優れた人物にしたいので、主人公の枠は凡庸な悪魔にする予定でした。
3:悪魔の象徴性
ハリーの紹介で語られていますが、襲う、蹂躙という意味合いを持つ悪魔です。
作中でとある理由で主人公とハリーは、二人で一つの存在になりました。
殺人や暴力といった行為に
「心に悪魔が棲む」
と比喩されるように、主人公はある一家を憎悪し、その怒りに囚われています。
人の身で悪魔と魂を通わせる存在の主人公が、内に秘める悪意の象徴が、ハリーを含めた悪魔です。
そして悪魔に主人公がどう打ち勝つか、飼い慣らすか。
それがこの作品のテーマでもあるでしょう。
長々と語りましたが、今回はこれで終わりです。
さようなら。
拙作を後書きまで読んでいただき、ありがとうございます。 質の向上のため、以下の点についてご意見をいただけると幸いです。
好きなキャラクター(複数可)とその理由
好きだった展開やエピソード (例:仲の悪かった味方が戦闘の中で理解し合う、敵との和解など)
好きなキャラ同士の関係性 (例:穏やかな青年と短気な悪魔の凸凹コンビ、頼りない主人公としっかりしたヒロインなど)
好きな文章表現
また、誤字脱字の指摘や気に入らないキャラクター、展開についてのご意見もお聞かせください。
ただしネットの画面越しに人間がいることを自覚し、発言した自分自身の品位を下げない、節度ある言葉遣いを心掛けてください。
作者にも感情がありますので、明らかに小馬鹿にしたような発言に関しては無視させていただきます。