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【有料】異世界のジョン·ドウ 〜オールド·ハリー卿にかけて〜 第39話 闘争と論争の悪魔 第40話 英雄イーサンと、とある冒険者たちの物語その1 第41話 英雄イーサンと、とある冒険者たちの物語その2 第42話 謎の声、視線への恐怖

第39話 闘争と論争の悪魔


肩を射抜かれたソフィの絶叫が、獣の叫びの如く辺りに木霊した。
鮮血の飛散は今からこの場が、戦場となる合図だ。
突然の強襲に青年の思考が止まり、その場に立ち尽くす。
直美は刀に手をかけて臨戦態勢に入り、ハリーは歯茎を剥き出し興奮した様子だ。
英子は口を抑えて瞳を見開き、動揺を隠しきれていない。
アシェルは薬品を取り出し、ウィッカは彼女の傷口へと近寄って身を案じた。
殆どの仲間が状況を受け止めきれずにいる空間は、静止した刻の針が動かないように感じられた。
呆然とした一同に声を張り上げて危険を伝えたのは、悪魔ハリーだった。

「しっかりしろ、テメーら。間違いねェ、コイツは上級悪魔だ!!!」

鼓膜どころか脳味噌にまで響く大声に、一行は瞼を閉じ耳を塞ぐ。
だがしかし、いいきつけにはなった。
現状を打破するには行動あるのみだ。
息も絶え絶えに出血した箇所を抑えたソフィは、眼前のイーサンになりすました敵を見据え

「……貴様は……何者……だ」

問いかけると顎を触り、悪魔は暫し彼女を凝視する。

「死に逝く者に教えてやる義理もないが。冥土の土産代わりに名乗ってやろう。俺は闘争と論争の悪魔レラジェ……邪霊六座のサルガタナス殿に仕えている」

人を傷つけるのに何の痛痒も感じない、抑揚のない冷徹な声色は、殺戮が日常的なのを想像させるに充分だった。

「なんだって!」

その時青年の頭にアモンが口にした、組織の名称が蘇った。
上級悪魔の六柱には霊がおり、さらに三体の配下がいると。
不意打ちとはいえ、ソフィに致命傷を負わせたのは揺るぎない事実。
ただ一つ確実なのは現時点の僕らにとって、分厚い壁を数面隔てた先にある、桁違いの実力の持ち主だということだ。

「俺はアモンのように甘くはないぞ、おしゃべりはここまでだ」

レラジェはイーサンの姿を保ったまま、矢をつがえた。
ソフィは目の前の悪魔が別人だと知って尚、彼を真似る理由は占札勇士とも称された彼女の心理的な瑕疵。
もし姿形を似せられるなら、悪魔でなくともとる最良の選択だ。

「ソフィさんは悪魔討伐の要だ。なんとしてでも守りきろう!」

単純な指示を送ると仲間の返事が、方々から飛び交った。
当然悪魔側はこちらの最も嫌がる、彼女の殺害に全神経を費やすだろう。

(悪魔たちが真正面から、彼女と立ち向かうことはないと思ったが……最悪に近い状況だ! これで他の高名な悪魔が、ここに集まりでもしたら……)

最悪の展開にならずには済んだが、劣勢には変わりない。
ユウは相対したレラジェを視界に捉え、思考を巡らせた。
自分が悪魔ならばどうするか、と。
対する相手は仮にも魔毒竜殲滅戦の生存者にして、大陸全体でも有数の実力を持つ。
戦闘が長引くのは必至だが、それは悪魔側も避けたいはずだ。
高名な戦士との激戦では、負け筋に繋がるのだから。
だとすると真っ先に断つべきは……!
瞬間、黒煙を上げる矢先は月明かりを浴びて鈍い光を放つ。
まともに当たれば、即死は免れない威力だ。
背筋から不快な汗が垂れ流れ、鼓動は収まらずに危険信号を伝えた。
―――だけどそれでも!
ユウは咄嗟に飛びかかると

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