テクシーさん。#3
-kaori-
駆け足で駅へと向かう。
阪急電鉄本社の脇を通り、Nu茶屋町を通過し阪急梅田駅へ急ぐ。
「はぁはぁ。少し息が上がってるな、ちゃんと体力つけないとな..」
会員制のジムには入っているが、この1ヶ月まともに利用していない。
せっかく大きくなってきた大胸筋も少し脂肪がついてきた。
ジムなんてたどり着く前に気力が失せちゃうんだ。
よほどテンションが高くないとわざわざ自分を追い込みに出かけるなんて億劫でしょうがない。
それじゃ時間がある時に家の周りを走ればいいのじゃないか?
いやいや街中を走るのって嫌なんだよな、なんかアレでしょ。
恥ずかしいんだよ、バカみたいで。
街中をランニングしているやつも洒落たスポーツタイプの自転車に乗ってるやつも同じさ。なんだね、恥ずかしくないのかな。
飯を食うのにわざわざ並ぶバカと一緒さ。みっともない。
一目見て目的がわかる佇まいなんて粋じゃないね。
ましてや誰かとつるんで走ってるやつなんか最悪。
洒落くさい。
自分ってものをしっかり持たないといけないよ、最近の世間様はね。
「はぁはぁ。....オレは周りから..どんな風に、はぁ、見られてるのだろうね...」
ようやく駅へ着いた時は約束の時間ちょうど。
向こうから長い髪をなびかせ、ハイヒールを鳴らせこちらに歩いてくる女性がいた。
息を整える青づくめの男に慣れたように声をかけてきた。
「一緒に帰りませんか?それともランニングのお邪魔かしら?」
いたずらっぽく笑う女性は常盤貴子を思わせる可愛い大人の女性だ。
「邪魔なんてとんでもない、kaori様なら喜んで」
(23:30 梅田駅。距離は徒歩約10分。)
kaoriさん。彼女が本日2人目のお客様。
つづく。
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