gapとアン。 VOL.15
私はgap。
今年で30歳になる普通の男だ。
結婚して娘もひとり、仕事もなんとかやっていけてる。
恋愛ドラマと言えば?
「あすなろ白書」「東京ラブストーリー」「愛してると言ってくれ」
「ロングバケーション」「花より男子」...
世代によって答えは違う。ジェネレーションギャップ。
じゃあ刑事ドラマと言えば?
「太陽にほえろ」「踊る大捜査線」
私はこれ一択。
「刑事貴族」
ところであなたは何が思い浮かびますか?
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「脱げない! この着ぐるみ、頭が取れない!」
私は着ぐるみの頭を夢中で引っ張った。
上に下に右に左に。
体をくねらせ引っ張った。
「脱げないよ! .......いくら試しても無駄だよ。」
青いヤツがぶっきらぼうに言い放った。
「お前だろ、今、カチャって! ロックしたのお前だろ! なんだよ、なんなんだよ。」
力まかせに着ぐるみを脱ごうと引っ張る。
「僕らはもう、彼らから課せられたモノをクリアしないと日常には戻れないよ。
そして、この着ぐるみも脱げない。 」
「・・てことは、じゃあ君も誰か有名人を755に参加させることを頼まれているの?!」
「その通り。 これを見て。」
青は一枚のメモを目の前にかざした。
「あなたには、ある人物を755に参加させる為に動いてもらいます。
その有名人が誰なのかは、東京でお話ししましょう。
まずは東京へ向かってください。
あなたと同じ様に部屋に男がいます。
あなた達は互いに協力し、お互いの目的を遂行してください。
まずは、その男にあなたと同じ様に着ぐるみを着せ脱げない様にしっかりとロックしてください。
あなたが着ぐるみを脱ぐには、その男をあなたと同じ姿形に変え、
私の依頼に応えてください。そして・・ 」
私はメモを奪い取り、床へ叩きつけた。
「くそ! 全部、あの社長の差し金か! なんだってんだ!」
私はメモを踏みつけ、壁を何度も叩いた。
「まだ続きがあるよ、最後まで読むんだ。」
青に促されて私は続きに目を通した。
「・・・そして、まずは着ぐるみを着た二人で東京で向かってください。
そしてあるイベントへ潜入してください。
これ以上の詳細は東京で。 藤田」
理解するのに少し時間が必要だった。
「...イベント? この格好で。」
何だか力が抜けた。
なんで私がこんな目に…
私は泣いた。
脱力感と虚無感と未来に待ち受ける辱めに対し、心が折れた。
「元気だせよ。」
私の肩を叩きながら明るい声で毛むくじゃらが話しかけてきた。
「もう、協力していくしかないんだ。
言わばコンビを組むんだ。僕たちは。」
私は黙って頷いた。
「...ところで、二人組といえばあれだろ。」
ん?
「やっぱりコンビを組むからには。」
戸惑い私は声が出なかった。
そんな私を気にもせず毛むくじゃらは少し高揚した口調で早口に話を続ける。
「コンセプトは危険でセクシーで、そしてシニカル。
ここまで言えばわかるよね」
ん?
「うん、そうだね “あぶない刑事”だよね。」
ん?
「"タカ&ユージ” それが僕たちのゆるユニット名ね。」
ん?
疑問符が目に見えるなら、私は既に疑問符に押しつぶされているだろう。
タカ&ユージと聞いて、ピンとくる世代が果たして755を利用しているのだろうか。
タカ&トシの方が、いくらかマシなんじゃないか。
何故にこの青い毛むくじゃらは乗り気なのだ。
「これからはパートナーとしてお互い協力していこう。」
握手を求め右手を出す青。
頭がショート寸前の私は黙って、右手を差し出す。
そして二人は確かに握手をした。
「よろしくね、ユージ!」
どうやら私は柴田恭兵になった様だ。
“舘ひろし”こと、青い”タカ”はニヒルな笑いを浮かべた。
ように私には見えた。
続く。