テクシーさん。#6

-rumi-

待ち合わせの時間は5分過ぎた。

阪急梅田BIGMAN前。

ここは梅田での待ち合わせの定番スポットである。ターミナル駅の中心にあり、JR、私鉄、地下鉄が交差する雨風が防げるスポットは、金曜日の夜ともなれば老若男女が肩をぶつからせながら歩き、待ち合わせをする人々で溢れている。

平日の24時前でも帰宅する会社員などが多く、人通りは多い。

わかりやすいように"紀伊国屋書店の入り口ユニクロ側"と待ち合わせは決めていた。

「遅いなぁ。電車はもう着いているし、遅れる連絡もないしな。」

飲み会の帰りなのか大学生らしき数人が笑顔でお互いの顔を覗き込みながら歩き話している。

「懐かしいな..  オレも昔はよくBIGMAN前で待ち合わせてデートや合コンしたなぁ。」

ここ梅田で勤務していた自分を重ねて見ていた。

「もう会社辞めて10年か。あっという間だな、ほんと。」

どん。

急に誰かと肩がぶつかる感触があった。

「きゃっ! ごめんなさい!!」

紺のブレザーに学生鞄を腕にかけた女子高校生だった。

額に汗をかいて、ひどく動揺している様子だ。

「いえ、大丈夫です。..それより君こそ大丈...」


「こら---!!!  待て待て待て!  誰かそいつを捕まえてくれ!!」

数人の警察官が2階のフロアからこちらに向かって叫んでいる。


すると女子高生は隣で立っている私に体当たりをし、警察官達とは反対方向へと走り出した。

「ごめんなさい! ごめんなさいぃぃ! ごめんなさいぃぃぃぃ! ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

謝りながら叫ぶ女子高生、それを追いかける警察官、帰宅の路につく多くの人で賑わうBIGMAN前は騒然となった。



「な、何なん...」

あっけにとられ突然の騒動にiPhoneを落としてしまい、拾いながら後ろ姿を追った。



逃げる女を追う警察官、道をあけ見守る大勢の人人人。

彼女達が見えなくなってもしばらくは辺りは静まり返っていた。




時間にして30秒ほど経ったであろうか。

「あーーーーーーーーーーーーーーーー! スミマセーーーーーーーン!」

先ほどの逃げた女子高生が今逃げた道を引き返して戻ってきた。もちろん後ろには警察官を引き連れて。

「え!?え、ちょ。」



DoooonNN!!!!



女子高生は三度私に激しくぶつかり二人とも床に倒れこんだ。

「何だよお前は!」

息を切らせながら、まだ化粧を覚えたての本田翼が体育の時間終わりの様な爽やかな顔をした女子高生は私の胸ぐらを掴み、顔を引き寄せてきた。


「はぁはぁ、ハァ。... すみません、..い、一緒に帰りませんか..はぁ、か?」

「え?  まさか、rumi様?」


もし私が彼女と同じクラスの童貞イケテナイmanカースト最下層野郎なら確実に恋をしたであろう笑顔で彼女は微笑んだ。

「rumiです、....よろしくお願いします....はぁ...はぁ。」


群衆をかき分けて警察官がやってくるのを目の端で捉えた。




私は彼女の手を握り、走り出していた。


つづく。


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