gapとアン。 vol.10
私はgap。
今年で30歳になる普通の男だ。
結婚して娘もひとり、仕事もなんとかやっていけてる。
あなたが子どもの時のヒーローはなんですか。
何戦隊がテレビでやっていましたか。
夢中で見ていたのは、じゃじゃ丸、ピッコロ、ポロリ?
ミド、ファド、レッシー、そらお?
時代が変われば思い出のキャラクターも変わり
ガチャピンとムックを知らない世代も増えていく。
(ここから妄想)
ピチョン。
ピチョン。
水滴が床に落ちる音だと思う。
その音はここから遠くで聞こえるのか、近いのか。
「うッ。。イッター。」
私は右側頭部の痛みで目を覚ました。
頭が重く、鈍痛というのか。
二日酔いの日に階段をダッシュで登った感じの痛みだ。
「こ、こはどこだろう…. 私は確かあの時….」
そう、確かに私はあの時。
サイバーエージェント 藤田社長に会ったんだ。
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「あっ、あなたは!?」
「初めまして。藤田と申します。」
「し、知ってますよ! 『渋谷ではたらく社長の告白』も『起業家』も『憂鬱でなければ仕事じゃない』も私、持ってます! まさかここでお会いするなんて….」
少し苦笑いを浮かべ藤田社長は私に近づいてきた。
握手を求め、私は右手を差し出した。
すると藤田社長は右手を、左の胸ポケットへ。
そして、何か封筒のようなものを取り出した。
「gapさん、実はあなたに依頼したいことがあります。
少し強引ではありましたが、私の秘書にここまであなたを案内してもらったのです。」
「秘書? まさか「てる子」のことですか?」
「ええ、彼女はサイバーエージェント社長室付755特別担当秘書なのです。
そしてこの地下施設の管理者でもある。
先日まで、ここリーガロイヤルホテル京都でフロント担当として働いてもいたのです。
ただし、それはこの地下施設の存在が明るみに出ないよう監視する意味もあったのですが……」
「そ、そうなんだ。てる子はあなたの指示で私をここへ…」
私の右手はエアー握手の姿勢のまま、少し震えはじめていた。
そして藤田社長はゆっくりと話し始めた。
「あなたには、ある人物にこの755に参加しトークを始めてもらうように働きかけてもらいたいのです。
その方は、当然オフィシャル化して人気トークになること間違いのない人物です。」
「あ、ある人物? ……… そもそも、なぜ私がその役目を担うんですか!? たくさん社員いるでしょうが!!!」
突然のことに私は語気を強めて言い放った。
いくら何でも話についていけない。
さっさとこの場を立ち去ろうと歩き始めたその時。
私の肩を誰かが強く掴み、強い力で引っ張った。
バランスを崩す私の顔に、黒い布が被せられた。
「何や!?」
抵抗しようとしたが、右手は震えて力が入らない。
カッコつけずに差し出した右手を早く引っ込めるべきだった。
悔やむ私を突然、
Don!!
ドラゴンボールばりの衝撃が右側頭部に走った。
わずかに見えた視界にはスパンコールが光っていた。
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......そうだ、あの時。誰かに殴られて気を失ったんだ。(たぶん「てる子」、いや絶対アイツ)
くそ、何で私がこんな目に。
薄暗い部屋だが、少し目が慣れてきた。
「ん、ポケットに封筒がはいっている。」
藤田社長が持っていた封筒だろう。
コードネーム 『プラチナム』
封筒にはそれだけが書かれていた。
一体、誰のことを言っていたんだ。
封筒の中をあけようとした時。
「気がついたようだね。」
部屋の隅から声が聞こえた。
「だ、誰かいるの!?」
ゆっくりと姿をあらわした”そいつ”は、「てる子」よりも異様な風体をしていた。
ツノを生やした真っ青な”毛むくじゃら”は、旨そうにラーメンを食べていた。
つづく。
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