gapとアン。 vol.06
私はgap。今年で30歳になる普通の男だ。
結婚して娘もひとり、仕事もなんとかやっていけてる。
日本人の平均身長は欧米に比べて低いという事実、感覚は誰しもが理解していることだろう。
183cmの私は日本人の平均身長よりは高い。
ここで日本人の平均身長を数字にして記載しないことに理由はない。
単に面倒くさいだけである。
子供の頃から背が高いヒエラルキーで育ち、170cmに届かない身長の級友から「10cm身長分けて欲しい」とよく言われたものだ。
だからと言って背が低い友人をバカにしていたかというと、決してそんなことはない。むしろ自分が身長が高い低いなんて、どーでもよかった。
身長のコンプレックスがない代わりに日常生活において不便を感じてはいた。
電車のドアは身を屈まないと入れないや、サイズにあう服や靴などがない。
180cmを超えると日本ではオーバーサイズなのだ。
.............
.......どのくらいの時間を歩いたのか。
鴨川、五条、七条、そして京都タワーの真下を横切りJR京都駅を通り過ぎた。
少し私の前を歩く「てる子」。
歩きながら「てる子」は、ぽつりぽつりと自分のコトを話してくれた。
中学を卒業してから身長が30㎝伸びたこと。
高校生の時に宝塚音楽学校を受験して受からなかったこと。(服装から推測するに、まだ引きずってる様子)
最近勤めていた会社を辞めたこと。
久しぶりに話す「てる子」は最初こそ、ぎこちなかったものの、慣れてきたのか会話の途中で少しはにかんだ笑顔をみせていた。
見た目に最初こそ戸惑いはしたが、なんだ昔と変わらず良い子じゃないか。
自分より目線が上にある女性は久しぶりに会ったな。
会話を楽しむ様になった私は、いよいよ本題に入ろうとした。
gap「ところで、電話で話していた君の...」
てる子「せ、先輩!」
会話を遮る様に「てる子」が言う。
「てる子」はつづけて。
「.....ゆっくり話しませんか?
.....部屋で」
「え?」
「てる子」が差し出した右手にはホテルのルームキーが。
ふと気づくと、僕たちは
リーガロイヤルホテル京都の前に立っていた。
つづく。