究極のマーケティングバイブル。田端信太郎×箕輪厚介が座右の書として推奨!
【超訳】マーケティングとは商品ではなく知覚をめぐる戦いである。顧客の知覚を得るためには、一番になれる新しいカテゴリーを創出し、一言で表すコンセプトを刷り込むこと
世の中のマーケティング本の全てがこの本をパクっていると言っても過言ではない。初版は1994年。しかし、古さを帯びるどころか、ますます磨きがかかっており、マーケティングの源流を辿ると必ずこの本に行き着く。そしてマーケティングは専門用語や難解な仕組みではなく、王道の定石をいかに抑えるゲームであるかを明瞭簡潔に教えてくれる。22の成功法則を押さえることができればゲームの覇者になれる。早速紹介していきたい。
マーケティング不変の法則(全22の法則)
一番手の法則
カテゴリーの法則
心の法則
知覚の法則
集中の法則
独占の法則
梯子の法則
二極分化の法則
対立の法則
分割の法則
遠近関係の法則
製品ライン拡張の法則
犠牲の法則
属性の法則
正直の法則
一撃の法則
予測不能の法則
成功の法則
失敗の法則
パブリシティの法則
成長促進の法則
財源の法則
1.一番手の法則
一番手になることは、ベターであることにまさる
マーケティングの課題は、「あなたが先頭を切れる分野を創造すること」である。そして他に優っていることよりも、先頭を切ることのほうが大切だ。ここに全てが集約されている。例えばアメリカで最初に設立された大学を知らなかったとする。最初のものの代わりに代表的なものを思い浮かべることによって正確な推測ができる。たいていの人は、ハーバードの名を挙げることになるだろうが、ハーバードこそが最初に設立された大学なのである。(2番目に設立された大学はウイリアム・アンド・メリー大学だがこれはほとんど知られていない)
最初のブランドが一般に先行的立場を維持できる理由は、そのブランド名がしばしば商品の総称になる。最初のブランドが先導商品になり、後に続くブランドの売上順位も参入の順序に合致する場合が多い。なぜなら、マーケティングは知覚をめぐる戦いである。心に入り込んだ最初の商品を優れた商品であると知覚する。商品をめぐる戦いではないのだ。そのため、成功するために必要なのは、業界最良の商品と比較するベンチマーク戦略ではなく、常に良い商品を作り出すことを主眼に置き、競合他社よりも優れていることを成功の鍵だと信じるベタープロダクト戦略を採用すべきだ。
2.カテゴリーの法則
あるカテゴリーで一番手になれない場合、一番手になれる新しいカテゴリーを作れ
新製品を開発するとき、真っ先に検討すべきことは「この新製品は競合商品よりもどこが優れているか」ではなく「どこが新しいか」ということだ。この新製品はどのカテゴリーで一番手かということだ。ブランドについては忘れる。そのカテゴリーの一番手として売り込むことは、そもそも競争相手が存在しない勝負にできるのだ。
3.心の法則
市場に最初に参入するより、顧客の心の中に最初に入るほうがベター
心の法則は知覚の法則に続く法則である。マーケティングは商品ではなく、知覚をめぐる戦いだとすれば、市場より心が優先されなければならない。マーケティングにおいて最も無駄な行為は、人の心の中を変えようとする試みである。徐々に入り込み、ゆっくりと時間をかけて好意を醸成するのは愚策である。心の中には一気に入りこまなければならない。解決策の一つは単純で覚えやすいネーミングだ。顧客の心をつかむにあたって単純で覚えやすいネーミングによって助けられた。スタートラインに立った5つのコンピュータ機種があった。「アップル2」「コモドール・ペット」「IMSA18080」「MITSアルテア8800」「ラディオ・シャックTRS-80」さて、どの名前が覚えやすいだろうか?
4.知覚の法則
マーケティングは商品ではなく、知覚の戦いである
あらゆる事実は相対的なものである。真実とは、多かれ少なかれ、一人の専門家の知覚以上のものではありえない。マーケティングが商品の戦いであるなら日米両国における自動車の販売順位は同じであるはずだが、異なっているのは顧客の心の中の知覚が異なっているからだ。私たちは信じたいと思うものを信じるし、同様に味わってみたいと思うものを口にするのだ。
5.集中の法則
マーケティングにおける最も強力なコンセプトは、見込客の心の中にただ、一つの言葉を植え付けることである
ただ一個の言葉、ないしはコンセプトに焦点を絞り込むことによって、心の中にそれを”焼き付ける”これが究極のマーケティングだ。フェデラル・エクスプレスは見込客の中に「翌日配送」を埋め込んだ。ハインツは「どろりとしたケチャップ」というケチャップの濃さという最も大事な属性を浮き彫りにした。その他にもドミノ➡︎宅配、ペプシ➡︎若者、ボルボ➡︎安全性などが該当する。そしてマーケティングにおいて一番無駄な行為は、自分が使ってきた言葉をほったらかしにして、他人の支配下にある言葉を物色することである。その言葉が決まったら市場で、その言葉を守るためにあらゆる手を尽くさなければならない。商標登録して利権を確保することではなく、他者に自らの言葉を使わせて、カテゴリーの重要度を高めることが大事である。
6.独占の法則
2つの会社が顧客の心の中に同じを言葉植え付けることはできない
一番の間違いは、競合相手の商品コンセプトの重要度を高めることで、相手の立場をいっそう強化にしてしまうことだ。多くの場合、リサーチと呼ばれる素晴らしい仕掛けにより、見込客のグループインタビューが実施され、顧客やサービスに求める属性の希望リストが届く。しかし、ここに資源投下するということは、独占の法則を破ったことに対する代償を支払わせる顛末で終わってしまうのだ。
7.梯子の法則
採用すべき戦略は、あなたが梯子のどの段にいるかによって決まる。
マーケットシェアと顧客の心の中にある梯子段上のあなたの位置との間には相関関係がある。下段にいるブランドの二倍のマーケットシェアを持ち、すぐ上段にいるブランドの半分のシェアを持つというのが一般的な傾向だ。小さな梯子でのナンバーワンよりも、大きな梯子でのナンバースリーのほうがベターな場合もある。私たちは、顧客の心の中にある梯子のどの位置にいるのか。ひょっとしたら梯子に乗っかってすらいないのかもしれないことを認識するところから始めるべきだ。
8.二極分化の法則
長期的にみれば、あらゆる市場は二頭の馬の競争になる
成功するマーケーターは、上位の二社に入ろう精力を集中する。初期の成長市場にあったたっては、ナンバースリー、ナンバーフォーの座も魅力的に映る。しかし、時間が経つにつれて、顧客にも事情がみえてきて、トップブランドの方がよりましに違いないという素朴な考えに至る。「このブランドがベストであるに違いない。なにしろトップブランドなのだから」
9.対立の法則
ナンバーツーの座を狙っている時の戦略は、ナンバーワンの在り方で決まる
梯子の上から二段目にしっかりした足場を築きたいときときは、梯子の上段にいる会社を研究すべきだ。その会社の強みはどこか。ナンバーワンのエッセンスを見つけ出し、顧客にそれと反対のものを提供することである。つまり、ナンバーワンの対極に位置することによって、ナンバーワン以外の全ての企業からビジネス機会を奪うことができる。競合相手に対するネガティブキャンペーンが効果をあげるには、その中に真実の響きがなければならない。マーケティングとは多くの場合、正当性をめぐる戦いである。最初にわれこそ本物なりのコンセプトをつかんだブランドが、多くは競合相手を偽者呼ばわりできるのである。
10.分割の法則
時の経過とともに、一つのカテゴリーは分割し、二つ以上のカテゴリーに分かれていく
コンピュータ、ビール、音楽、国家でさえも一つのカテゴリーとして始まる。しかし、多くの企業経営者がこうした分割のコンセプトを理解するどころか、カテゴリーは互いに結合していくという幼稚な考えを抱いている。業界のナンバーワンがその座を維持する方法は、新たに登場するカテゴリーにそれぞれ異なるブランド名を使用することである。会社はえてして、あるカテゴリーに使った有名なブランド名と同じブランド名を、別のカテゴリーにも使うという過ちを犯す。
11.遠近関係の法則
マーケティングの効果は、長い時間を経てから現れる
バーゲンセールは、短期的には売上げを増やす。しかし同時に、正規の価格では買わないように教え込むことになる結果、長期的には売上げを減らすことになる。これは、実は「正規の値段が高すぎる」ことを語ってしまうのだ。
12.製品ライン拡張の法則
ブランドの権威を拡げたいという抗しがたい圧力が存在する
ライン拡張とは成功した商品(A-1ステーキソース)のブランドを使い、新商品(A-1鶏肉ソース)にくっつける手法だ。マーケティングは知覚をめぐる戦いであることに加えて、各カテゴリーのナンバーワンは、例外なく拡張されたラインの上にはないブランドだ。すべての要望に応えることはできない。あらゆるところで弱みを晒すよりは、どこか特定のところで強みを発揮すべきだ。IBMという社名はかつて「大型コンピュータ」を表した。今日ではありとあらゆることを表している。ということは、何も表していないということなのだ。
13.犠牲の法則
何かを得るためには、何かを犠牲にしなければらない
製品ライン拡張のとは反対である。犠牲にできるものは三つのものがある。「製品ライン」「ターゲット市場」「絶えざる変更」だ。製品ラインにおいて、ゼネラリストは脆弱である。小売分野でも成功を収めているのはトイザラスのような専門店だ。ターゲット市場において、ターゲットとは即、商品を買う顧客ではない。フィリップモリスがカウボーイに絞り込んでマルボロが成功したが、その市場にはあらゆる人たちが含まれているのだ。さらに、大事なことは一貫したポジションを維持するベストの方法は、何よりもそのポジションを変えないことだ。全ての人を満足させることはできない。幸運は犠牲をいとわない者の上に訪れるのだ。
14.属性の法則
あらゆる属性は、それと正反対の、優れた属性があるものだ
マーケティングはアイデアの戦いだ。独自のアイデアや属性を用意して自分の努力をそこに傾注すべきである。それがないのなら、徹底的に値下げをすべきである。新しい属性をもつ商品がどれのほどのシェアを占めることになるか予測することはできないのだから、決してバカにしてはならない。
15.正直の法則
あなたが自分のネガティブな面を認めたら、顧客はあなたにポジティブな評価を与えてくれるだろう
正直は相手の心を開かせる。自分について語るネガティブな言葉は、即座に本当のこととして受け入れられる。「名前」がよくない時、二つの選択肢がある。名前を変えるか、その名前を笑いものにするか、どちらかである。一つだけしてはならないのは、その名前を放っておくことだ。問題点を認めることによってメッセージを発信しようとすると、人は本能的に心を開くのだ。正直の法則には注意点が二つある。①ネガティブなメッセージが、ネガティブなものとして広く認知されることが肝心、②ポジティブな訴えに素早く移ることである。
16.一撃の法則
各々の状況においては、ただ一つの動きが重大な結果を生むのである
歴史の教訓によれば、マーケティングにおいて実効を上げうる唯一の行動は、一回きりの大胆な一撃である。競合会社の弱点はただ一箇所しか存在しない。攻撃力の全てを集中すべき目標地点だ。このようなただ一つのアイデア、ないしコンセプトを見つけだすには、マーケティングマネジャーたちが市場で起こっていることを把握しなければならない、泥にまみれた戦場の最前線まで足を運ばなくてはならない。要するに首を突っ込む必要があるのだ。
17.予測不能の法則
自分で競合相手のプランを作成したのでない限り、あなたが将来を予測することはできない
優れた短期計画は商品なり会社なりを差別化する優れた切り口、ないしは表現アイデアを提示してくれる。その後で一貫した長期のマーケティング目標をたて、そうした表現やアイデアや切り口を最大に効果あらしめるプログラムを作ればいい。長期計画ではなく長期目標である。ドミノピザのように短期に「宅配」、長期を「初の全国的な宅配チェーン」と据えたが、長期のタイミングで二つを同時に達成することもある。将来は予測することができないがトレンドならつかむことができる。これこそが変化を利用する方法だ。リサーチが一番役に立つのは過去を測定する場合であり、新しいアイデアやコンセプトは測定不能であることを肝に銘じるべきだ。
18.成功の法則
成功はしばしば傲慢につながり、傲慢は失敗につながる
うぬぼれはマーケティングの最大の敵である。成功要因はブランドネームでもなく、製品拡張でもない。真っ先に顧客の心の中に飛び込み、焦点を絞り込み、強力な製品属性を先取りしたことである。エゴは、事業における頼もしい推進力である。マーケティングは下っ端に任せておけるほど軽々しいものではない。
19.失敗の法則
失敗は予期することもできるし、また受け入れることもできる
大成功しているウォルマートには会社として失敗に対処することを可能とする別の手法がある。誰かが新しい企画に失敗しても、罰せられることはない。「もし何かを試みれば、その人は何かを得るはずだ。許せないのは、同じ過ちを二度犯す人間である」
20.パブリシティの法則
実態はマスコミに現れる姿とは逆である場合が多い
万事が順調であるとき、会社はパブリシティを必要としない。パブリシティを必要するのは、たいてい困った時である。歴史はマスコミでは成功しながらもマーケティングでは失敗した事例で満ち満ちている。新聞の一面は無視してもいい。未来への手がかりを探したければ後のほうに載っている月並みなベタ記事に目を通すべきだ。本当の革命は夕方6時のニュースではなく、深夜に予告なく、忍び寄るものだ。
21.成長促進の法則
成功するマーケティングは一時的流行ではなく、トレンドの上に築かれる
一時的流行は短期的に利益をもたらすが、乱高下を繰り返す。対するトレンドは長期的に極めて強力な力を発揮する。一番いいのは、一時的な流行には乗りつつ、水を差し長持ちさせることだ。自らの商品への需要を長く維持する方法は、その需要を完全には満足させないことだ。マーケティングにおいて利用すべきベストは、長期にわたるトレンドである。
22.財源の法則
しかるべき資金がなければ、せっかくのアイデアも宝の持ち腐れとなる
たとえ世界最高のアイデアであっても、実現する資金がなければモノにはならない。顧客の心の中に入っていくには資金がいる。そしていったん入り込んでも、そこに留まるにはまた資金が必要なのである。アイデアはありふれていても、100万ドルの資金を持ち合わせているとすれば、優れたアイデアしかない場合よりも遥かに成果をあげることができる。資金の伴わないアイデアは無価値である。成功するマーケターは常に先行投資を行う。そして収益を再投資する。マーケティングん世界を動かすものは金である。
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