見出し画像

「アートファクトリー城南島」で出会う、廃棄物と新聞、そしてあたたかい色彩の世界

「♡」は、noteのアカウントがなくても押せます。もしこの記事が「いいな」と思えたら、ぜひ気軽にポチッとしていただけると嬉しいです。フォローも大歓迎なので、そちらもあわせて応援してもらえると励みになります!

今回訪れた「アートファクトリー城南島」は、東京にありながら超僻地感を味わえる不思議なスポット。公共交通機関のバスが1時間に1本というレア度に加え、大田市場が利用する循環バスということで貴重な市場内をぐるりと巡る道中が体験できます。そんな意外性も含め、ちょっとした旅気分を満喫できました。

入り口から広がる三島喜美代さんの世界

まず出迎えてくれるのは、現代美術家・三島喜美代さんの作品。

Work S-10

まず出迎えてくれたのは、現代美術家・三島喜美代さんの作品(残念ながら昨年ご逝去されました)。印刷物を貼り込むコラージュで有名で、中には空き缶が本物に見えてしまうものも。「日本にもアンディ・ウォーホルがいた!」と思わず唸るポップさとアイロニーが共存しています。

Work 12-CS2

新聞紙というゴミになる素材を、陶器に置き換えることで生まれる脆さや危機感を表現しているそう。アーティストの着眼点が加わるだけで、日常が特別な存在へと変わるのだと改めて実感しました。

Box Charkcoal-N13

シラスや新聞、陶、鉄。何でも作品化!

九州南部の火山灰「シラス」、新聞、陶、鉄などを固めて作り上げた作品もあったり。広告業界の巨匠 ジェームズ・ウェッブ・ヤング は「アイデアとは既存の要素を新しい形で結びつけることで生まれる」という名言を残していますが、アートは、その極地を体現する世界だということがよくわかります。

Work 20-R2

巨大な迷路に迷い込む、情報氾濫の恐怖

そして深く進んでいくと、巨大な迷路のインスタレーションが登場。

Newspaper08

空間を侵食する巨大な迷路状のインスタレーションは、ポリエステル製の紙を何層にも組み合わせてあり、一歩足を踏み入れるとまるで情報の奔流に飲み込まれるような感覚を味わえます。狭い視界と行き止まりまさに氾濫する情報に埋没する恐怖をリアルに体験できます。

産業廃棄物もアートになる!

出口付近では“溶融スラグ”を素材にした作品と遭遇。不法投棄される廃棄物を約1400℃で処理し再生する工程が作品化されたもので、環境問題への痛烈なメッセージが込められています。

Work 14-S

その隣には、うず高く積まれた新聞紙や雑誌の束。先ほどの迷路がポリエステル製だったのに対し、こちらは陶製の新聞。旅行先で集めた紙が作品になるという発想が「私たちの生き方こそがアートになり得る」というメッセージを暗に伝えている気がします。

Work 92-N

江戸時代の浮世絵を拡大する意外な体験

別フロアには、江戸時代の絵画や浮世絵を高精細データで拡大したインスタレーションが並びます。

富嶽三十六景を間近でドーンと見上げる迫力はなかなかの体験。マグロを捌く男衆や市を仕切る旦那衆など、江戸時代の人々の営みが拡大されることで、細部までくっきり。サイズやスケールを変えるだけでも美術の見え方が一変することを感じました。

野中美里さん「いのちの色彩、つながる風景」展をまさかの先取り

ラッキーだったのは、1月25日から始まる「野中美里 いのちの色彩、つながる風景」展の展示準備に遭遇し、特別に制作途中の作品を見られたこと。

ご本人に直接お話をうかがえたのですが、見ているだけで“心がほっ”とするような色彩と、どこか懐かしい対象が溶け込んだ世界が印象的。その世界観にすっかり虜になってしましました。

どこか懐かしい風景や対象が出てくるのは、野中さん自身の体験した出来事や記憶を重ね合わせて描いた世界で構成されており、「自分にとって特別な記憶が溶け込んでいる」と語る野中さんの世界観が響きました。

意外にも、はじめは抽象的な線画で「つながり」を表現する作品を作っていたとのことで作風は全く違います。しかし、描く過程で次第に対象物や風景を作品に取り込むようになり、今の温もりある作風にたどり着いたとか。いつどのように作風が変わるかはアーティスト本人にも読めない。アートの変わりゆくプロセスこそ、クリエイティブの醍醐味なんだなと実感しました。

アート巡りの思いがけない幸せを味わう

アートファクトリー城南島に行って感じたのは、普段なら見落としがちな素材がアーティストの手によって再生され、新たな価値を帯びる瞬間の面白さ。新聞、空き缶、火山灰、廃棄物……どれも日常ではゴミ扱いされるもの。しかしアーティストの視点が加わるだけで、驚くほど力強く、あるいは美しく、意味深く変身するのだと感動しました。

そして、まるでテーマパークかのような迷路や拡大浮世絵のようなインスタレーションも体験型で面白い。最後にまさかのアーティストご本人との邂逅があるなんて、アート巡りの醍醐味はやはり「予想外の僥倖」に尽きるのかもしれません。ちょっとアクセスは大変ですが、その分大きな驚きや学びが待っている場所です。

https://drive.google.com/file/d/16nQIQHXU7qThxiT41Bigs9uEYsuEi2-a/view?usp=sharing

アートファクトリー城南島作品リスト他

いいなと思ったら応援しよう!

大田勇希|ハラスメントを哲学する
ハラスメントゼロの社会へ!サポートは財団活動費として大切に活用させていただきます。

この記事が参加している募集