Nikon NIKKOR-H・C 5cm F2について
私がLeica IIIfで愛用しているレンズです。
戦後の混乱から回復しつつあった1948年に日本光学工業(現在のニコン)社によって製造、販売が開始されたレンズとなります。
私が所有しているのはLeica用のL39マウントになりますが、当時は他にNikon S用のSマウント、Contax用のCマウントが販売されていたようです
私の持っているレンズ付属のキャップはNiccaと刻まれており、当時のカメラメーカーであるニッカ社へ供給され、同社のカメラに装着して販売されたレンズの内の一本のようです。
レンズの来歴や写りについては、ニコン自身が「ニッコール千夜一夜物語」の中で詳しく解説しています。
このレンズの珍しい特徴として、1.5feet(45cm)までの接写が可能、という点が挙げられます。
今となっては珍しくもないですが、Leicaをはじめ各カメラの距離計が1mまでしか測れなかった当時、カメラで焦点を合わせられない近距離まで寄れる珍しい存在です。
もちろん、1mより近づくとカメラでは焦点が合わないので、目測での撮影になります。
私の場合、ストラップを伸ばすと大体50cmとなるので、大まかな距離をそれで測り、後は絞りを絞って被写界深度を稼ぐことで焦点を合わせています。
また、ミラーレスカメラならそんな苦労をせずとも、ライブビューで液晶を見ながら普通にピント合わせが可能です。
被写界深度を稼ぐために絞る必要もありません。
開放で撮ると中心部はしっかり解像しながら、背景はきれいなボケが表現され、どこか絵画的なとても美しい表現をしてくれます。
その隠された一面に、初めてデジカメで撮影したときは嬉しい驚きを覚えました。
デジタル時代になってその能力をフルに発揮する、稀有なオールドレンズです。
もちろん、近距離だけでなく遠景の撮影も見事に描写してくれます。
70年以上前の古いレンズですので、状態の良いものは少なくなりつつあります。
ただ、中古レンズのサイトなどを見ていると、3~5万円程度で実用可能な品が販売されているようです。
私が購入した際は、3万円ちょっとでした。
Leicaのレンズに比べればまだ手ごろな価格で、状態の良い品が入手可能なようです。
描写性能がLeicaレンズを超えるかどうか、Leicaのレンズを使ったことが無いので何とも言えませんが、はっきり言えることは私自身がこのレンズの描写を大いに気に入っている、ということです。
戦後の混乱からようやく抜け出しつつあった時代にこのクォリティーのレンズを生産できる。
改めて戦前から連綿と続く日本の光学技術の歴史の長さを実感します。