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【徹底解剖】Break out of your bubbleみんなが好きな"あの場面"

リトグリにとって、ガオラーにとって、すでにとても大切な曲になった、魂の一曲「Break out of your bubble」。通称Bob。曲が主題歌として起用されているドラマ「宙わたる教室」も大変好評、ますます注目されています。

このnoteでは、この超名曲の中でも最もみんなが熱くなるうちの一つ、“あの場面“で音楽的に何が起きているのか、特に今回は歌詞ではなく音そのものや演奏の仕方、譜面にフォーカスして徹底解剖します。

あの場面とは

そんな名曲で、多くの人が「大好き」という場面がこちらだと思います。

Cメロ〜落ちサビの17小節

ここです


MAYUのボーカルから始まるこのパート、ライブでもMVの世界観をそのまま表すように、6人が向かい合って、体を揺らし、全身で音楽を共に創る喜びを表現しながらクライマックスへとドラマを作っていくその様は、2年をかけて創り上げたこの6人の信頼の姿。

この部分について語っているガオラーの方の感想を引用します。

まとめると

Cメロ
・MAYU、miyouのメロディへの想いの込め方が凄まじい
・コーラスの迫力、顔を見合わせながら1つになっていく感じが感動

落ちサビ
・別の特別な世界、優しく包み込んでくれる感じ
・(ライブ版で)一斉にマイクをあげて歌い始めるのがすごい

というような感想だと思います。

僕も箇所はBobの中でも特に好きで、特にライブ版を聴いてからより一層好きになりました。

ここからはCメロ、落ちサビそれぞれで、何がどうなってそういう感想になっているのかを解剖していきたいと思います。

バラバラの6人が息が合っていく感動

MAYUとmiyouのメロディへの想いの込め方が凄まじい

Little Glee Monster公式Youtubeより

MAYUとmiyouのボーカルパート。Bobのメインボーカルパートはどこをとっても情熱的で、想いが込められていると思いますが、一際この場面のボーカルは曲の流れの中で

歌詞はこうなっています。

(MAYU)
過ぎ去りたい過ちが
過ぎし日の面影が
後ろ袖に絡みつく

(miyou)
Ah僕は戻らない
小さな殻はもう脱ぎ捨てると決めたから

後でも語りますが、Cメロは曲全体の中で転換点となる特別な位置付けを持っています。歌詞もまさにそれと同じ。

それまでの歌詞は殻に閉じこもっていた自分から見える景色を歌ったもの。
殻を破るって怖い
でもしてみたい
そんな葛藤を描いたもの

でも、ここで一気に殻を破り始めたからこその悩みに変わるんですよね。
頭の中だけではなく、現実に一歩ずつ進み始めた感じ。そんな想いが歌詞から伝わってきます。

MAYU、miyouの歌唱もそんな切実さ、リアルさを出しているように聞こえます。

そしてMAYU→miyouのボーカルの切実さ、この想いの込め方、そしてリアルさ、これって実は数ヶ月前にも僕らは体験していなかったでしょうか、というのが僕の気づきです。

そう、Fragileです。

(MAYU)
他人を責めることが苦手で
自分を責めてばかり生きてきた
(miyou)
本当は弱いこと 本当は辛いこと
もう少し許せたなら
許せたなら

BobのCメロのMAYU、miyouから感じる”なにか"って、ここで感じたものと近い気がしませんか?歌詞のリンクもしている気がしますし。

これは単に歌い方の細かいニュアンスだけではないと思います。息混じりの深い声?絞り出すようなエッジボイス?それは他のメンバーもできます。これはもはやスキルの問題ではない、何か声が持つそのものの色や力が関係しているのではないか、と感じています。つまり、解剖不可な魅力があるのではないか、というのが僕が考えたことです。

この二人の持つ独特で強烈な”過去から未来への繋ぎ方”があるように思えてなりません。

コーラスの迫力、顔を見合わせながら1つになっていく感じが感動

この説明、大変長いですw
でもここには大変壮大な仕掛けがありつつ、仕掛けだけ成り立ち得ない、6人の素晴らしさがあるので細かく解説させてください。

つまり、

・譜面的にも”一緒になっていく”ような展開が巧みに組まれている
・ただし譜面通りにやったからといって”一緒になっていく”が表現できない

という不思議な話です。それを感じて欲しいので、長くなりますw

前提として、このBobはサビにカノン進行が使われていることが、Cメロを際立たせるための大切な要素になります。

「カノン進行」という言葉は聴いたことがある人が多いかと思います。文字解説よりもこれを見ていただくのが早いでしょう。とても馴染みがあり、耳障りのいい和音の流れだと思います。

カノン進行の特徴はいくつかありますが、その一つは「ベース音が綺麗に下降していく」ということです。

Bobのサビのベースは以下のようになっています。

※なお以下に紹介するstand.fmに掲載の音源はURLを知っている方(=これを読んでくれている方)のみの限定公開となります。

綺麗に下がっています。これを2回繰り返すような動きがサビです。
Bobは1サビ、2サビ、落ちサビ、ラスサビ、と計4回、つまりカノン進行は8回登場します。

ここからが本題です。

Cメロがどうなっているのか、というとまったく逆の特徴を持っています。つまり、ベース音がどんどん上昇していくんです。しかも、ほぼずっと(6小節間)

こんな感じです。

つまり、まずCメロがこの曲の中で際立って違う雰囲気を持っているのはサビとまったく逆の特徴を持った箇所であるから、ということが一つ言えると思います。でももちろんそれだけではありません。

Cメロは最初の4小節とあとの4小節で違う雰囲気を見せるところにさらにドラマがあります。

簡単にいうと前半はバラバラに動いていて、後半は一気にまとまって動くように変化します。そしてこの前半のバラバラ具合がすごい、カオスなんですよね。

ここはわかりにくいので順番に見ていきましょう。

まずは先ほどのベースのみの音にアサヒとmiyouのコーラスを追加します。コーラスは3パートに分かれていて、基本になるのがこの二人。アサヒが上、miyouが下だと思います。(最後の音だけmiyouとかれんがスイッチ)

そこに下からかれんが絡んできます。かれんを加えたものがこちら。他にもここはたくさんの音が鳴っている場面なのですが、そんな中少しの動きではありますが、一人パートで低くても埋もれていないかれんはさすがです。

これがコーラスの2パート目

そしてコーラスの3パート目は結海。これがすごい。「Bobはリトグリ史上最も高い音が出てくる」ということですが、みなさんサビのあの高い音だけだと思っていませんか?実はこのコーラスにさりげなく出てくる音も最高音であるハイG#です。結海はさらっとコーラスでやっていますが・・・

それを含めるとこうなります。

譜面にするとこんな感じです。

この曲のすごいのはバラバラにしているのがコーラスだけではない、ということです。この前半4小節はストリングス(バイオリン)がやばい!こんな感じの譜面なんですが、、、

音を実際に入れるとこんな感じです。原曲では最初は目立たなくしながら徐々に大きくしていっているのですが、ここではあえて同じボリュームで入れてみました。

ぐちゃぐちゃな感じが出てきました。そこにメロディを足します。

譜面にするとこうなります。

とにかくCメロ前半の4小節はいろんなものが複雑に絡み合っているのがお分かりいただけたかと思います。

で、うってかわって、後半は途端にシンプルになります。

ここは一気にコーラスを全部追加したものを聴いていただければわかります。

ストリングスも最後に登場するのみ。(でも実はマンドリンがそれまで違う動きをしていたりはしますが・・・)

通して全部載せにすると、こうなります。

・前半後半通して、ベース音がどんどん上がって迫ってくる
・前半はバラバラ→後半は一気に揃うというコントラストがついている

というのが感じ取りやすくなっているのではないでしょうか。

が、一方で原曲との雰囲気の差も感じられたでしょうか。そう、これでは逆に、シンプルになっていくが故に盛り上がりきる感じがしない。譜面は巧みに書かれているけれど、それだけでは盛り上がらない、リトグリが一つになって表現をしないと曲として完成しない仕掛けがここにあります。

ここが、6人の歌唱のすごいところなんです。コーラスの前後半での音量バランスの付け方、MAYU→miyouの歌いつなぎ方でこの8小節に感動的なストーリーを与えています。
さらに、特に後半の4小節、みんなの耳に聴こえ、目に見えている「コーラスの迫力」「一つになっていく感じ」の秘密の大きな理由が”ブレス”です。あの、目を見合わせ、体を譲りながら音を合わせる、あの一体感と勢い。音楽的に言うなら、これは“ブレス“だと思うんです。

ブレスというのは何も「呼吸量を確保する」だけではありません。むしろボーカル“セクション“としてのブレスの意味は、タイミングと勢いを揃えること。僕はジャズビックバンド出身で、同じように“セクションで音楽を作る“ということを考えてきたのですが、このブレスがとても大きな要素の一つ、いや、むしろこれがすべてとまで言っていいかもしれません。

ブレスというのは不思議です。ただ、息を吸えばいいのではなく、相手の呼吸が目で見えるようになると自然に音が合うのです。逆に言えば、見えるようにするということでもあります。お互いの息遣いがピッタリあったとき、凄まじい音楽の迫力が生まれます。このCメロの迫力は6人の息遣いがピッタリ合っているところから来ているのだと思います。

厳かな落ちサビの裏には巧みな仕掛けが

逆に落ちサビは「いつものサビのコード進行(=カノン進行)」です。
この落ちサビの凄さは、僕は
・カノン原曲のような厳かさと優雅さ
・それを保ちながらリズム的にはバッチリに噛み合っている
ということだと思います。

別の特別な世界、優しく包み込んでくれる感じ

まずは伴奏から、伴奏はベースはチェロになり、3本のストリングスが”まるでカノン”のような優雅な伴奏をしています。

この雰囲気が全体のサウンドを作っている感じが、この曲の中でも”特別”な場面を演出しています。もともとカノンはバッハを代表とするバロック時代の曲。室内楽や教会音楽が主の時代のものです。この元々のカノンのサウンドを出しているのがこの落ちサビなんですよね。

これは一見耳障りがいいだけに聞こえますが、歌っている本人たちからすると非常にシビアで難しい楽譜です。ドラムなどが混ざっていればリズムがとりやすいものの、頼れるものがメロディとコーラスのお互いの音だけなんです。

2拍ずつ「出だしのタイミング」だけはありつつも、その間が伸ばしなのでリズムがない。一方で6人はリズムのある音を出し続けています。

リズムというのは不思議で、常に動いてくれていた方が”合っているか”確認しやすいんです。"Break out of your bubble♪"って歌っている間にストリングスは動いていない、拍が合っているか確認できるポイントは一箇所もないんです。
(ライブではクリック音がイヤモニから聞こえてるかもしれませんが・・・)

しかも、その動きがコーラスだけならまだしも、メロディとコーラスは違う動きをしているという、さらに厄介な状態です。
次に、メロディとコーラスのトップノートだけを抽出して、同じ音量バランスにしたものを聴いてください。

全然違うリズムが絡み合っているのがわかるでしょうか。6人は楽しそうに、幸せそうに、さりげなーく難なく歌ってますけど、これ、ちゃんとリズムが噛み合うのってすごいと思いませんか?

逆に言えば、これが噛み合うということは、ちゃんとリズムが保たれているということです。先ほど聞いたようにストリングスが伸ばし音だけの中で、メロディラインとコーラスがしっかり噛み合うことでリズムを保っていたのですね。
(これは相当練習したと思います・・・)

コーラスを4和音にして、バランスも調整するとこうなります。

さらに、カノン進行でベースラインのチェロがどんどん下降していくのも足します。

これで落ちサビを構成する要素はすべて揃いました。最後に全部乗せです。

譜面にするとこんな感じになっています。譜面は至ってシンプルに見えるんですが、実は難しいことをしていたんですね・・・

一見優雅で流れるようなサウンドは、シビアなリズム感覚の上に成り立っているのだと思います。

一斉にマイクを上げるその時・・・

まずは具体的に。ここです。


今あらためて見ても鳥肌が立ちます。
しかし、このnoteをここまで読んでいただければ、これがなぜ息ぴったりにマイクをあげているのか、もうお分かりではないでしょうか。

この場面は一瞬音がなくなる、一瞬の”休み”の場面
でもそれは休みではないんです。彼女たちの中には音楽が流れ続けていて、マイクの所作でさえ、彼女たちにとっては”ブレス”の一つなのだと思います。

もはや自然に”揃ってしまう”という方が近いのではないでしょうか。そうやってこの曲のこの場面を作ってきたからこそ、自然にできてしまった凄み・・・それがこの「マイクを一斉にあげる」というところにまで出てきてしまった。
凄すぎるぞリトグリ、と言いたいです。

やっぱり"あの場面"が好きなのは

あらためてこの感動的な17小節間について書いてみて思うこと。それは「こういうリトグリが見たいんだよな」ということです。巧みに計算されたコーラスアレンジ、それを実力で完璧に仕上げるスキル、しかしそれだけではない、チームで一つの音楽にするための工夫、音楽的に言えばブレス、人間的に言えば息が合っている、という状態が作られるまでの音楽へのこだわりと仲間への信頼。それを「これだ!」と見せてくれたような17小節がこの場面なのだと思います。

最初から6人はすごかったけど、今10周年を迎えた彼女たちは”グループとしての最強”になったなと心の底から感じます。
これからも、この17小節で見せてくれた感動を、いろんな曲で見せてくれたらファンとしてこれ以上幸せなことはないなと思います。



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