340_昔話34
昔話34
普段自分語りする機会ってあまりないと思う。語ったとしても話がバラバラになっちゃったり、聞いてもらえなかったりしますよね。なので興味がある人だけ読んでくれればいいし、長いから飽きちゃうかもしれないけど興味を持ってくれる方のために一生懸命伝えていきます。
6年間勤め上げた沼の話
私は、2021年2月28日をもってピザ屋のバイトを辞めた。人生の出来事で、劇的かつ分岐点でもある。なぜ辞めたかというと、ひとつは大学卒業の時期だからだ。コロナ禍で気付けば学生最後の年があっという間に終わりかけている。世間はあと半月ばかしで新生活を迎える。まあ同級生と一緒に晴れて飛び立とうって感じが理由のひとつめ。ふたつ目は、写真家としての仕事が徐々に増えてきていて、やっと軌道に乗り始めているからだ。4月の収入見込みは新卒初任給くらいだ。十分生きていける。そして、その先も同じくらいの収入を続けていけそうだからというのが理由のふたつ目だ。
まあ、辞めた理由とかこれからの話はさておき、6年間勤め上げた沼の話をします。この「沼」というのはピザ屋のことだ。私は、ピザ屋バイトのことを、沼だと思っている。この「沼」はネットスラングで、沼にハマってしまったかの如くズブズブと沈んでしまい、その世界から抜け出せないところまで落ちてしまった事を指す。
そう、ピザ屋バイトは始めたら最後、簡単には抜け出せない沼なのだ。そして、もしピザ屋バイトを始めたい人がいたら私は全力で止めたいとも思っている。
6年間も続けていたのに何言ってるんですかと言われそうだが、やっていたからこそわかる理由がある。
そもそも、ピザ屋バイトが絶対悪のように聞こえた人もいるかもしれないが、そんなことはない。良いこともいっぱいある。実際、私もその良いところに救われた場面が何度もあった。だから絶対的に否定しているわけではないと言うことをご承知おき願いたい。
それではまず、なぜ抜け出せないのか。
これは、上記の通り、良いことがいっぱいあるからだ。まず、時給が高い。東京都の最低時給が1013円だ。地方出身者はこれだけでも高いと感じるだろうが、ピザ屋バイトはなんと高校生でも最低1100円だ(私が勤めていた店舗)。ピザを配達する係になれば、1200円スタートで、そこからレベルごとに昇給がある。高校生でも月給10万以上稼いでいる人もいた。私が聞いた中での最高月収は60万円だ。まあこれは、1ヶ月間休みなしで働いていた人の場合だが。とにかく時給は高いのだ。
また、休憩時間が長いことも理由として挙げられると思う。なぜかと言うと、休憩時間が長ければバイト同士でのコミュニケーションが多くなり友達が増えるからだ。学生はどのコミュニティにも友達関係を求める。学校でもバイト先でも仲の良い友人が多い方がいいと言う考えだと思う。仲良しが多いとなかなかそこから離れたいと思えなくなるだろう。そして、同年代が多いと言うことも理由に挙がる。同年代、特に高校生や大学生が多いと、話も合うし友達にもなりやすいし、恋人にだってなってしまう。バイト仲間全体で密な関係になっていく。だから辞められないのだ。受験に失敗しても、失恋しても、なんだかんだみんな慰めてくれる。そんな場所になる。
営業していれば暇な時も、忙しい時もある。暇な時は仲良し同士で楽しくおしゃべりして、忙しい時は力を合わせて乗り越えて、その後の達成感がやりがいになる。普通の休憩以外に、タバコ休憩もある。喫煙者の特権とも言うべきか。私は禁煙者なので関係ないが。タバコ休憩に行く人はとても険しい顔をして出ていくが、帰ってきた時には広角が緩み気持ちのいい顔で戻ってくる。上下関係はあるが、部活の様な厳しいものでもないし、仕事を覚えるための環境だってある。
いいじゃないか。抜け出せないというか、抜け出さなくてもいいじゃん。時給も高い、みんな仲良し、最高のバイト先じゃんって思う人もいるかもしれない。そんなことはないのだ。私はこの最高と言われる環境が問題だと思うのだ。
次に、なぜ全力で止めたいのか。それは先ほども述べたように上記の様な環境が問題だからだ。一言で言うと、馴れ合いをしに来ている人が多すぎる。学校じゃないのだ、仕事場なのだ。
当時の私は、後輩たちにしっかり指導する人間だった。店長に頼まれたわけでもなく自ら嫌われ役を買って出た。相当キレていたのかなと、今振り返ると別人だと思う。でもある日を境に私はおとなしくなった。いくら言っても指導にならないからだ。私が指導した直後はその通りやるが、そこ以外では何も注意せずに働いているのだ。こうやってね、が聞こえていないのだ。私が真剣に向き合っても後輩たちは真剣には向き合わない、ただの馴れ合いを求めてきているのだ。そう感じたら真剣に向き合うことがばかばかしくなった。
馴れ合いが100%邪魔だと言っているわけではない。しかし、甘い環境に浸かっていたい人間が多すぎてとてもじゃないが一緒に入ることはできなくなってしまった。
そんな甘い馴れ合いの環境が未だにあるのだ。
こんなところがピザ屋バイトで、こんな理由で私はおすすめしないと言うことだ。ピザ屋バイトはとてもいい。時給が高いから、フリーターはこの仕事一本で十分生活ができるし、学生は周りの友人より簡単に稼ぐことができる。同年代が多くすぐ仲良くなるし、友人も増えて恋人もできるかもしれない。
しかし、この環境に慣れて、甘えて落ちて、抜け出せなくなる。いつしか、裸の王様になってしまう。
全否定したいわけじゃないってことをもう一度言っておく。高時給で楽しいピザ屋バイト。結局は考えてバイトしなさいってことを言いたい。
自分は何が目的でここにいるのかと言うことを常に自分に問いながら働く。甘えたいなら甘えればいいし、稼ぎたいなら馬車馬の様に働けばいい。絶対になんとなく働かないでほしい。
とりあえず働こう、で働いている人間は必ず沼に沈む。何も考えなくても生きていける沼に沈んで裸の王様になって生きていく。ピザ屋のこと以外何も知らずに、ピザ屋でだけ威張って他ではどうしようもない人間になる。
これはピザ屋バイトだけに限った話ではない。他のバイトだって、職場だって、クラスや部活、サークルでだって起こりうる問題だ。自らが立っている場所を確認して、今自分は何のために働いているかを常に確かめて生きる。人間は楽な方へと簡単に流されてしまう生き物だ。だから常にどこに立っているかを確認して、生きて行こう。
「なんで?」という疑問を持って考えて、理由や意味をとことん追求してほしい。
しっかり目的を持って働こう。今目的がないなら、ピザ屋を極めてもいいしね。ピザ屋バイトもできなかったら何もできないと思うし。
沼にハマる前に考えよう。
ピザ屋さん今までありがとうございました。
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