見出し画像

バンドを組む残像【毎週SS】

「父上、母上
私は忍びの道を捨て、家を出ます。
不逞な愚息をどうかお許しください」

そう書置きを残して、私の本体は姿を消した。


「なぜだ?」

俺はこの書置きを書いた「愚息」、その分身。
「忍法・陰分身の術」とかで半分かすれたような描き方でいっぱいでてくるアレである。

本体、即ち「愚息」は忍術に秀でておらず、
当人もその実を悟っていたこともあり、
部屋では常に「普通に生きたい」と嘆いていた。

それはまだいい。

「なんで俺も一緒じゃないの!?」

あろうことか、分身である俺はなぜか本体と分離され、
その本人が行方知らずという事態に困惑しかないのである。

そんな俺に対して父親は、

「お前も好きにしろ」とだけ言い渡され
事実上家を追い出されたのだ。

いや、どうすりゃいいのよ。

とりあえず働くしかないか。

仕方なく、駅前で求人票を読み漁っていた。
しかし分身であるこの身に真っ当な仕事などあるのだろうか?
そもそも本体と別に分身だけで働く場所なんてあるのか?
モヤモヤしながらふと横に目線を向けた時だった。

「あっ」

視線の先に自分と似たような姿の男がいた。
その瞬間すべてを理解した。

「バンドでもやる?」

不思議とそんな言葉が出ていた。
気が付くとお互い手を取り合っていた。
(510文字)


自分のプロフィールに
創作に迷走しているというのがありまして
こういう話を書いておきながら、
私の机の脇には、買って久しいDTMの機材たちが。
いつか活躍させねば。

やりたいことが多すぎるのも考え物ですな。

企画概要はこちらから。


読んでいただけただけでも大変感謝ですが、サポートしていただけると活動のさらなる励みになります!