風を治すクスリ【毎週SS】
「どうしてこんなんなるまで放っておいたんですか」
医者もすっかり呆れ顔だ。
「あーあ、森も動物もみんな吹き飛んでますよ。これじゃあ生き物は当分住めませんね」
「先生、なんとかなりませんかね」
「なんとかって言われてもね」
「前の患者さんは、すぐに治るって話じゃないですか」
「あれは自分の月ぶつけて顔面マグマにしたんで塞いでやっただけですよ。それとこれとは話が違う」
「いっそのこと逆に回ってみるか?」
「そんなことしたら、尚のことみんなふっとびますよ。治療薬出しときますから」
「薬だって。そんなんじゃいつ治るかわかんないじゃねぇか。」
「あのね、風にも治し方ってもんがありますよ。そうじゃなきゃ、緑豊かな星になんか戻りませんよ」
「先生……」
「今は根気よく行きましょう」
その星は、医師の言葉にそっと頷いた。
診察室を出た顔は少し穏やかだった。
「次の方、お入りください」
「昨日から熱が出まして」
「ああ風邪ですね、抗生剤出しときますよ。はい次」
(410文字)
子供の頃、私は風邪をひきやすくしょっちゅう病院に行っていました。
小児科はもちろん耳鼻科にも行きまして、とくに中耳炎に行ったときは大変でした。
というのも、私先生の前で突然大泣きして困らせたんですよ。
しかもその理由が注射が怖いとか薬が嫌だとかではなく、
「見たいテレビに間に合わなかったことによるショック」で泣いちゃったんですよ。そりゃ先生も困惑するわな、と。
ごめんね先生。
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