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お前が来いよ【毎週SS:非情怪談より】

「もしもし、あたしリカちゃん。迎えに来てほしいの」
「はい?」

仕事終わりのスマホに着信が来た。

「今池袋なの」
「『池袋なの』言われましても」
「仮にリカちゃんだとして、来るのはそっちでは?」
「来てくれないとあなた死ぬわ」

今ってそうなってんの?

渋々、言われたままに車で向かう。
指定された某百貨店の駐車場に車をとめる。

「~~からお越しの○○様。お連れ様からお言伝を預かっておりますので、
1階サービスカウンターまでお越しください」

なぜ俺の方が呼び出される立場なのか?
ぶつぶつ文句を言いながらエレベーターにのって1階にあがる。

「○○様でいらっしゃいますか」
「ええそうですが」
「実はお連れ様がご購入なさったお品物について一部お支払いが
済んでいないものがありまして、代わりにご精算頂けると伺っております」
「はぁ!?」

ここまで来た手前、自分は無関係ですなどとも言えず。
仕方なく決済を済ます。
結局リカちゃんは見つからず、再び駐車場に向かった矢先のことだった。

「もしもし、あたしリカちゃん。ごめん今手が離せなくて」
「冗談じゃねえよ。何が目的だよ」
「ねぇ迎えはまだなの?」
「何なんだよ。迎えって。お前そもそも誰だ……」

タァーン

耳元から銃声のような音がした。

「おい大丈夫かよ!?」
「大丈夫、威嚇射撃だから」
「はぁ?」
「今銀行強盗した帰りだから、急いで逃走用の車が必要なの!」
「ふざけんな。誰が行くかそんなもん」
「来てくれないと、あなたも困るのよ」
「知るか。お前が勝手にやってることだろうが」

「お兄さん、ちょっといいかな?」

急に背後から声をかけられて驚き振り返ると、
屈強な警察官が2名が仁王立ちをしていた。

「な、なんでしょう?」
「今電話されてましたよね。どなたからですか?」

一瞬自体が飲み込めず思考が停止する。

「私と何度も話してたから仲間と思われてるのよ、あなた」

「てめぇ、絶対見つけてやるからな!!」

ブツ切りし全力で警官を振り切った俺はその後、
半ばやけくそでリカちゃんを追いかけた。
(827文字)


いくらなんでもここまでするリカちゃんはいないと信じたい。
皆さんも不審な電話には十分注意しましょう。

先週に引き続き、なんだかんだオリンピックを楽しんでいます。
もう後半戦ですが、個人的には
柔道81キロ級の永瀬貴規選手の決勝戦を見れたのが良かったです。
あれはいい試合だった。

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