気まぐれショートショート 台にアニバーサリー
「きゃー、○○君がトロフィー落としちゃった」
「先生大変!ウサギ小屋からウサギが逃げちゃってるって」
「飾りつけの段ボールどこやったっけ」
「教頭先生、今業者の方から駐車場のスペースが足りなくて重機が入れられないと連絡が!」
校舎のあちこちからトラブルの声が聞こえてくる。
私は今、校長室で一人なんとか平静を装っている。
ああ、胃薬が欲しい。
「校長先生。ちょっとよろしいでしょうか」
「ああ、うん。今行きます」
本当に気が気でない。
結局、式典の準備は半分も終わらなかった。
仕方なく、私含め明日の朝早く職員総出で残りを対応することとなった。
対策会議で流石に疲れた私は一休みせんと校庭に出た。
朝礼台の端っこに、1羽のうさぎが座り込んでいた。
昼間の太陽でほんのり温かくなった台の上で昼寝でもしていたのだろう。
すっかり居心地よさそうにその場を占領していた。
「こんなところにいたのか。君、すっかりお尋ね者だよ」
うさぎは「知らん」と一蹴するかのように鼻をひくひく動かすだけだった。
ただじっと、沈んでゆく夕日を眺めていた。
「ここは、君にとって良い学校かい」
なんとなく聞いてみたくなった。
(478文字)
3月からnoteの世界に足を踏み入れ、本当にたまたまのご縁ではじめたこの"#毎週ショートショートnote"。気付けばもう半年以上お世話になっている次第です。自分でもびっくりしています!
たらはかにさんはじめ、温かく迎え入れてくださった皆様には本当に感謝しています。ありがとうございます。
2周年おめでとうございます!
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