「がんばれ」は、時に決別として機能する
ずっと応援していたアイドルの、唯一無二の真っ白いキラキラの彼が事務所を辞め、1ヶ月以上が経った。
その突然の発表からは、2ヶ月が経過しようとしている。
今日わたしたちファン(と呼んでもよいだろうか、呼ばせてほしい)は、
彼の新しい夢と輝くような笑顔を目の当たりにしながら、とても複雑な気持ちになった。
主語を大きくしてしまったので補足をすると、
もちろん純粋に応援している人もいるだろうし、むしろ今の彼に対してのほうが惹かれる人もいると思う。
でもYouTubeの生配信コメント欄には、アイドルでなくなった彼を惜しむ声や
「グループを辞めてやりたいことってこれなのか」といった、限りなく失望に近いような言葉が飛び交っていた。
みんな、色々な思いを抱いているのは確かだが、
少なくともわたしはオタクをこじらせているので、まっすぐに「がんばって!応援するね!」とコメントできるような気持ちにはならなかった。
ここでわたしがオタクあるあるの「お気持ち表明」「ひとり語り」を久々にかましたくなったのも
とても複雑で言語化しがたい感情に襲われて、
整理したいと思ったし、今しかちゃんと考えられないだろうなと思ったからだ。
生配信直後、久々にこの界隈用のアカウントに入りツイートをした。
もともと彼らのスタイル自体「俺たちについてこい」というタイプではあったが、
そこを離れた彼単独の今日の発表は、秘匿されていた内容というのもありわたしたちにとっては「そうくる!?」という内容だったし
すごい速度でアイドルの世界を切り離して文字通り爆走していく彼に、感情的には完全に置いてけぼりになった。
ついていけなかったのだ。
わたしたちはアイドル髙橋優斗をずっとずっと見てきたから、
この1ヶ月半も、何をしでかすのかわからない存在としての彼からの供給を、
勝手にアイドルのものとして受け取っていたのだと思う。
ただそれは余韻であり都合のいい解釈でしかなかったし
実際のところこの1ヶ月半は
「わたしたちが見てきた、わたしたちが愛している世界」との断絶に向けた、ある種の執行猶予期間だったのだ。
そうか、そりゃそうだよなと思った。
彼らが5人で決断するにまで至った膨大な議論の一部が、しかも断片的にしか与えられていない状態でも
今まで彼がアイドルとして成してきたことと重なるようなことが夢ならば
外に出るという選択を他4人(特に緑くん)が後押しするはずがないからだ。
みんな頭ではわかっていたことだけど、今日、その事実に直面した。
ここで「がんばれ!応援してる!」と言うべきなのは、
夢を語って全力を尽くす人間に対しての礼儀だとも思うし、
これまで応援してきた大好きな彼にかけるのに最も相応しい言葉だから違和感はない。
髙橋優斗は髙橋優斗のままで、チャハチャハとした笑い声も語る言葉も、わたしたちが応援してきた彼そのものだ。
でも、もうアイドルじゃない。
キラキラとした衣装は黒いスーツに変わり、台本を持っていた手にはパソコンが抱えられ
わたしたちの目の前を颯爽と駆け抜けたローラーシューズを彼が履くことはもうない。
それを認めたくないから、胸を張って「がんばれ」と言えないのだと思う。
わたしたちのなかにいる、アイドルの髙橋優斗との決別が、できないのだ。
どう考えても、出来すぎたアイドルだった。
周りより遅い入所でありながら抜擢に次ぐ抜擢、グループの結成。
すさまじい努力や葛藤もあったと思うが、
わたしたちの前に現れる彼はいつも圧倒的な輝きを纏っていて、全ジュニアのセンター・そして帝国劇場の0番に立ち続けていた。
愛されるのは才能だとよくいうけれど、その言葉そのままのような人だ。
髙橋優斗の代わりになれるアイドルは、他にいない。
いつかの夏の「次のデビューはHiHiJetsが最速で獲りに行く」という言葉がまだ頭の中にある。
そうして表明してくれるのが何よりもうれしかった。
ここでは言うのも野暮なくらい色々なことがあり、結果的にそうはならなかったけど
あの瞬間の彼らは間違いなく本気だったし、
次を思わせる彼らの言葉が聞けない現状からすると、あの瞬間にはとんでもない価値がある。
でも、5人がデビューすることは、もうない。
数々の先輩グループが活躍する土俵に、「髙橋優斗」の名が載ることはなく、
世間的にはちょっと名の知れたジュニアが退所した、というニュースだけで、それも揉まれて流されていく。
それが、どうしようもなく、悔しい。
彼ら(5人のHiHiJets)に魅せられ、自軍に絶対的な自信があったわたしたちは
突然未練たらたらの亡霊になってしまった。
だから髙橋優斗が退所して、年始に詳細不明のコンサートがある現状で
落ち着いて物事を受け入れられるはずもないのだ。
時間が解決することとそうでないことがあるのは生きてきた中で理解しているし
これに関しては、その思いの強さのあまり後者に該当すると少なくともわたしは思っていて、
何か強烈なきっかけがないと永遠に亡霊のままさまよってしまう気がしている。
そこまで意図があるかは置いといて、
今回の彼の発表は「きっかけ」としてわたしたちに決別を促すものだった。
そう考えてみれば、突拍子もないことでわたしたちを驚かせながらも
変わらない笑顔で自分は前を向いていることを強制的に理解させるやり方は実に彼らしいな、と感じた。
彼を愛してきた人間たちは、それぞれのタイミングで、このきっかけを受け入れるかたちでよいのだと思う。
現にここまで書いたものの、
わたしもまだ「がんばれ」というある種の決別の言葉を言うには早い感情にある。
ただ、たぶん彼はまだとんでもないことを企んでいるだろうし
いちいちそれに驚きたいし、その抜群の愛され力に振り回されてみたいと思っている。
アイドルとしての髙橋優斗をきちんと思い出のものとして仕舞うには
もうちょっと時間がかかるかもしれないけど、
相変わらず「ついてこいよ」と走って行ってしまうあなたを追いかけるのは大好きなので
なんとか食らいついていきたいと思っているよ。
HiHiJetsを、髙橋優斗を愛してきたみなさまがよく眠れますように。
おやすみなさい。