ハードコンタクト特有の汚れ『油膜』
今じゃあまり見かけなくなったハードコンタクトレンズ。
ひと昔前はコンタクトレンズと言ったらハードコンタクトだったんですけどね。
そんなコンタクトレンズの古株であるハードコンタクトなのですが、このレンズにはソフトレンズには無い、とても厄介なトラブルがあるのです。
ズレるとかゴミが入ったら痛いとか、そういうトラブルではなく、とにかくいきなり見えなくなる!
昨日まで普通に見えていたのに今朝から突然見えにくくなる。見えにくくなるというより視界が真っ白になる!洗っても直ぐにまた真っ白!
ハードコンタクト装用者の方は、こんな症状で来院する方が結構いるんです。
蛋白汚れ?
多くの方は 《コンタクトレンズが曇る=蛋白汚れ》と判断しがちですが
いやいやいや!
違います!
この汚れは~~~~
油膜!
油膜とは、化粧品やクリームなどの油成分がコンタクトに付着してしまうハードコンタクト特有の油汚れ。主に女性に多いトラブルなのです。
まれにコンタクトのfittingにより出てきたり、目の状態により出てきたりもします。
1.症状
1くもる
2異物感
3ギラギラする
など
朝装用して、しばらく時間が経過すると曇って見え難い感じや、異物感がでてきます。外してクリーナーで洗浄すると綺麗になるのですが、またすぐ曇る。この繰り返しで一日何回も洗浄を繰り返すことになります。
何故、綺麗になったのにすぐに曇るのか?
それは、すべての油を綺麗さっぱりと除去することは難しいからです。
丁寧にクリーナーで洗っても、レンズ周辺部に残留していることが多く、その少しの油が時間経過とともにまたレンズ表面に広がってくるのです。
2.確認方法
油膜と判断するには問診の時に話を聞けばある程度推測できます。しかし、洗ってから水分取って顕微鏡で観察しても油膜はほとんど見ることができません。
油膜を確認するには、患者さんにレンズを装用してもらい、スリットで観察します。目に乗った状態だと簡単に油膜のギラギラが見ることができます。
また、購入して暫く調子良く使用していて、最近になって突然曇りだしたなどは油膜の可能性大ですね。(稀に、レンズ変形などもあります)
3.処置
市販されているクリーナで除去をするならば、ジェルクリンが一番油膜には効果があると感じます。微粒子クリーナーも表面の油分を削ぎ落とす効果がありますが傷をつけるおそれがあるので注意が必要です。
洗浄の方法は、手の平にのせ円を描くように力をいれずに時間をかけて擦り洗いをします。洗浄後に装用してもらいスリットで確認してまだ汚れが残っていたら洗浄を繰り返します。
曇るまでは調子良かった場合は、特に規格の変更は必要ないでしょう。
しかし、明らかにFitting不良の場合はもちろん修正をします。
涙液交換を促すためにややフラットにしたり、サイズを小さくしたりすることもありますね。
4.対策
新しいレンズでも最初から油膜が付着している場合もあります。EXO2のような無水容器レンズは最初、疎水基が表面にきているため、このままだと油汚れが付着しやすくなっています。装用をする前に念入りに界面活性剤クリーナーで洗浄をしてください。
最強の油膜の予防策は化粧をしないこと。なぜなら、油膜トラブルの大半は化粧をする年齢の女性に多いからです。
あとは、眼を乾かさない、洗浄に時間をかけるなどが対策になります。
最後の手段では、油がほぼ付かないソフトレンズにするとか。
5.パターン
油膜の方の解決パターンですが、院内クリーニング&洗浄方法を教えてあげるだけで解決するパターンもあります。しかし大半の方は曇ったら適宜洗浄をすることになりますね。
毎日10回、20回と曇る度に洗う。
これが耐えられなくなり再来院。
こうなったら新しいレンズに変えてあげる方が早いです。しかし、今まで問題なく使用していたレンズならば規格は変えない方がいいと思います。下手にBCなどを変えてしまうと何が油膜の原因なのかもわからなくなります。
新しいレンズ(取り出し時は念入りに洗浄)を装用しても症状が変わらないのであればここでBCやサイズの変更を考えます。場合によってはレンズのメーカーを変えることもありますね。
油膜で来院
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洗浄・指導(曇る度に洗浄を指示、様子を見ながら使用してもらう)
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曇りで再来院(JCLで調子良い時期あったなら基本同じで処方)
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くもり再来院(規格変更検討)