鉄分と微生物と
いつの間にか梅雨入りしている世。
電車の中では人の吐く二酸化炭素や体温の熱気で車窓が曇る。
雨に打たれて喜ぶ牛蛙。
雨が上がった後の匂いは、どうやら植物中の鉄分と地表の微生物とが混じったものらしい。
人間は大体その場の匂いでその時々を記憶に残している。
湿気のある季節は本当に嫌い。
だけど、雨の切ない匂いは嫌いじゃない。
雨は、切なさと記憶を蘇らせてくれる。
別に切なさが好きなわけではない。
切なさと同時に出てくる、今悩んでいることをより深く考えさせてくれるのだ。
生きている。そう思わせてくれる。
今の自分は何ができるんだ?
あの人のために何ができるんだろうか?
何のために、何のために、と 色んな疑問の答えをひたすらに探していく。
まるでゴールのない迷路のように、永遠に悩みを抱える。
解決したと思ったら、次の悩みが出てくる。
生きている。
耳を澄ますと、ポツポツと雨の滴がアスファルトの上を叩きつけているのが聞こえる。
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