三年間を振り返って
2021年
3年U組 多層 のん
今、こうして卒業の日を迎え、高校で過ごした三年間を振り返ると、なんと短い年月だったのかとも思えますが、私の一日が三千日であったことを考えると、それはまた長い長い時間であったとも感じます。
入学の日、共に架空ヶ崎高校の門をくぐった幼馴染の未構さんにとっての一日はわずか5秒でした。次の瞬間、彼女は高校の、いや人生の全過程を終え、大いなる輪の向こう側に消え去りましたが、私の胸には今でもその笑顔が残っています。
それから先も、高校生活の中で多くの出会いと別れがありました。次元交響楽部に入部し、幾億の仲間たちと音楽を奏でられたことは一生の思い出です。一年の夏、初めてのコンクールで私が胸を高鳴らせながら吹いたファゴットの最初の一音は、今頃隣に座っていたクラリネットの儘境さんの耳に届いているのでしょうか。つい三日前、第一バイオリンの響きが私の耳にもようやく聞こえてきた時、私は改めて時の流れの悠久さと残酷さを実感し、涙を流しました。三年の秋、虚像祭での『Vanitas vanitatum omnia vanitas』の演奏を終え、満足感と寂しさと共に音楽室に戻った時、顧問の阿多儀先生は入部オリエンテーションの挨拶を終え、満足そうに、期待に満ちた微笑みを浮かべて顔を上げていたことも忘れられない思い出です。
私がこうしてこの文章を書き上げるまでの間にも、数多くの後輩たちが入学し、卒業し、あるいは大いなる輪の向こうに行っているのでしょう。そして私が同じように卒業し輪を越えたその後も、数多くの先輩方は学校生活を続けていくのでしょう。
しかし、一時とはいえ、私たちの時間がこの架空ヶ崎高校で重なり合ったことは間違いのない事実です。その奇跡を胸に、私はこれからも歩んでいきます。
(多層さんはこの文章を書き上げた後、相対性エレベータの相互干渉に巻き込まれ、一日が0.2秒となったため一足早く大いなる輪の向こう側に旅立たれました。次回のご活躍を心から願います)
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