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後十字靭帯再建術を施行したテコンドー競技選手への理学療法

はじめに

テコンドー競技は素早い蹴り動作やフットワークが要求されるため、PCLへの負荷は大きいものと推察される

本症例では、テコンドー競技特有のスポーツ動作においてPCLへの牽引負荷を回避した状態で機能維持ができるかに留意して術後理学療法を行った

具体例の一つとして再建靭帯にかかる牽引負荷を予測するために動作分析による評価に筋電図系を加え、術後管理を行った

症例

27歳男性で、テコンドー競技のフェザーウエイト級日本代表選手

現病歴

試合中に対戦相手に右下腿前面を蹴られ、右膝の痛みや不安定感を訴えるようになった。

受診の結果PCL損傷と診断された。

保存療法を行いながらテコンドー競技の練習や試合に参加していたが、右膝の痛みおよび不安定感は軽減することはなかった。

特に不安定感の残存が主訴であり、右蹴り動作時に下腿が牽引される感じを訴えた。

術前のストレスX線像による脛骨後方移動量は20.0mmであった。

保存療法で症状改善しないため、関節鏡視下でPCL再建術施行

PCL損傷で多いのが、交通事故でのダッシュボード損傷で衝突の衝撃で下腿前面をダッシュボードにぶつけることによる損傷
PCLの破断強度は2250N、ACLは1750N、MPFLは666Nのため、交通事故などの強烈な衝撃で断裂することが多い

リハビリテーション

PCLへの牽引負荷は主に膝屈曲時の下腿後方引き出しと、ハムストリングスの収縮によってもたらされる

PCL再建術後の理学療法のポイントは下腿後方引き出しに拮抗する膝伸展筋群の筋力強化

PCL再建術後の下肢筋力トレーニングは再建靭帯の保護のため下腿後方引き出しに留意して行う必要がある

筋力トレーニングプログラム作成のための筋電図評価

テコンドー競技のフットワーク等の練習に展開するためには荷重下での筋力トレーニングが必要

筋電図を用いて、膝屈曲に伴うハムストリングスの筋活動が少なく、下腿の後方引き出しに拮抗する大腿四頭筋の筋活動がみられる荷重下での筋力トレーニングについて検討

①クォータースクワットⅠ(下腿の前傾を促したスクワット)②クォータースクワットⅡ(下腿の前傾を止めたスクワット)③開脚スクワット④knee bent walking(KBW)の4つで比較した


結果、①クォータースクワットⅠ(下腿の前傾を促したスクワット)②クォータースクワットⅡ(下腿の前傾を止めたスクワット)において、ハムストリングスの筋活動が少なく、大腿四頭筋の筋活動が著明にみられた

③開脚スクワット④knee bent walking(KBW)はハムストリングスの筋活動が大きくみられたので、術後早期のトレーニングとしてはリスクがある

理学療法経過

術後10週:PCL用膝サポーターに変更

ジョギングを想定して自転車エルゴメーターを開始

リスク管理としてサドルを高く設定し、膝関節の屈曲角度を小さくした。膝窩部にテニスボールをテープで固定し、膝屈曲80°付近からテニスボールが下腿の後方引き出しを抑制するようにした。

術後12週:ジョギング開始

術後16週:ステップ開始

ツイスティング・健側蹴り時の患側軸足ターン開始

術後19週:患側蹴り動作開始

リスク管理として、ミットを蹴り過伸展を起こさないこと、ミットにインパクトした後に素早い膝屈曲を起こさないように注意した。

ハムストリングスのトレーニング開始

術後27週:痛み、不安定感の訴えが無い状態で練習復帰


術後43週:全日本テコンドー選手権に出場


参考文献

谷埜予士次:後十字靭帯再建術を施行したテコンドー競技選手への理学療法.関西理学.1:15-24,2001



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