ユダヤ暦で過ごす1年〜イスラエルのお祭り②〜
シャローム♡先週に引き続き『ユダヤ暦で祝われる祝祭日』をテーマにお届けします。
2020年のテルアビブにて、実際にお祭りに参加することで見えたユダヤ人の歴史、価値観、イスラエルの魅力を綴ったPart2(完結編)です。
・先週の記事はこちら『ユダヤ暦で過ごす1年〜イスラエルのお祭り①〜』
https://note.com/ganganganchan/n/n9b97d23cba37
・イスラエルの基本情報は『入門編』ご覧くださいませ♡
https://note.com/ganganganchan/n/ne96a3a839618
【プリム】イスラエルのハロウィン?
雨季の、激しい空模様が落ち着き始める2月後半。
イスラエルでは、あちらこちらで仮装をする人を見かけるようになります。
(散歩中に見つけた可憐な花手鞠)
旧約聖書の『エステル記』を起源にもつプリムの訪れです。
プリムの期間は、日中でも私服の一部に仮装を取り入れている人がいたり、と...なんとも愛らしい光景を見ることができます。
(どういう状況かな.ネズミが1匹)
(テルアビブをパトロール!ちびっこFBI)
店頭ではプリム当日の2ヶ月ほど前から、仮装グッズが並び一気に華やかに。
(H&Mの一角もプリム仕様)
プリムの始まりは、遡ること紀元前586年のペルシア帝国の時代。
ユダヤ人がペルシアの高官”ハマン”の策略から救われ、ユダヤ民族絶滅の危機を逃れたことを祝うお祭りなのです。
ちなみに、何故お祭りの名前がプリムなのかというと...”ハマン”がユダヤ民族虐殺の月をくじ=ペルシア語でプルで決めたから、との由来からきています。
当日は家族や友人と集まって、旧約聖書の『エステル記』を朗読します。
その中で、悪役”ハマン”の名前が出る度に子供たちが音を出してかき消したり、叫んだり...と、大騒ぎ!
とても賑やかになるんだそう♪
(悪役”ハマンの耳”と呼ばれるクッキーも期間限定で店頭に並びます)
またプリム祭では、大人は兎に角はしゃいで飲み明かすのが定番!
テルアビブのBarは、いつにも増して賑わいを見せていました。
(ファラオになりきるBarの店員さんと)
私が選んだ仮装は、憧れのユニコーン☆笑
(任天堂が人気なイスラエルではキノピオも見かけました)
「Happy Purim!」と、全力で楽しむイスラエルの皆さんを間近で見て、さらに親近感のわいた1日でした。
【ぺサハ(過越祭)】出エジプトのお祝い
春の香りに誘われて、ベンチや原っぱで寛ぐ人々が増える4月頃。
ヘブライ語で"春の丘"という意味のテルアビブが、ひときわ輝く季節です。
(ユダヤ人大富豪の名前がつけられたRothchild Street)
心地よい天気が続いたある日のこと...。スーパーから卵が消える不可解な事件に遭遇するのです。
(普段は卵がぎっしり陳列された棚がすっからかんに)
そんな時に限ってお菓子作りがしたくなり(笑)スーパーをはしごするも、見当たらず。
何故かと思ったら、ペサハの時期にユダヤ人が儀式の一部で食する
『セデルプレート』と言われる特別なテーブルセットの中に、"ゆで卵”が含まれていたからだったのです。
セデルプレート(家庭によって何食セデルプレートにするかは変わるらしい)
写真:JIFA 「ユダヤ教のお祭り”ペサハ” – 出エジプトを祝い〜」
https://japan-israel-friendship.or.jp/special/festival/1652/
ぺサハの起源は旧約聖書の『出エジプト記』に遡ります。
モーセが、エジプトで奴隷として扱われていたユダヤの民を引き連れて、エジプトを脱出したことを祝ったお祭りなのです。
ユダヤの民を引き連れるモーセ
・Netflix「Prince of Egypt」より
https://www.netflix.com/jp/title/18171022
セデルプレートにのせる食材にはひとつひとつ意味があり、”卵”はエルサレム神殿にささげられた供えものを象徴するらしい。
また、クラッカーのようなものは酵母を入れずに作った"マッツァ"というパン。
エジプトから脱出する際に、パンをふわふわに発酵させる時間すらも惜しんだ、と伝えられているからです。
現在でも当時を再現して、祝宴に欠かさず出されます。
セデルプレート(奥にあるのが酵母抜きで作ったパン、マッツァ)
写真:Times of Israel 2020.4.5
https://www.timesofisrael.com/cargo-ships-carrying-eggs-arrive-in-israel-but-they-may-not-be-enough/
ぺサハとは英語でPass over(過越し)という意味ですが、理由を知ると恐ろしくて震え上がります。
モーセは「ユダヤの民を解放せねばエジプトに”10の災い”を起こす」とエジプトの王に宣言します。
そのうち最後の1つが”長子を皆殺しにする”というものでした。
ユダヤの民の長子まで殺されてしまってはいけないので、戸口に印をつけて災いを受けないようにします。
印のお陰で助かったユダヤの民からすると”災いが過越していった”ということになるので”Pass over”...ぺサハという名前のお祭りになったのだそう。
卵を買い占める人が写っている
写真:Times of Israel 2020.4.5
https://www.timesofisrael.com/cargo-ships-carrying-eggs-arrive-in-israel-but-they-may-not-be-enough/
卵不足については、ニュースでも話題に。
どうやら、COVID-19の影響が酷い国から卵の輸入が困難になったことと、買い占めが原因らしい。
(購入時、蓋を開けての卵チェックは欠かせない)
そんな状況を知りながらも、スーパーの店員さんに話しかけると、レジの下から出てきた卵...!な〜んだ、隠してたのか。笑
買い占めを避けるため、レジで保管していたそう。
イスラエルでは、ある意味歴史に残るぺサハとなったみたいです。
【ヨム・ハショア】ホロコースト記念日
やわらかい木漏れ日の下を歩くのが気持ちいい、4月半ば-5月。
ユダヤ人にとって、大事な記念日がやってきます。
(自然豊かなRothchild Street)
ある日の朝10:00...街中に響き渡る、けたたましいサイレン音。
窓の外を見ると、頭を垂れて停止する人々の姿が...。
(うぉおーーーーん.というサイレン音が2分間鳴り響いた)
この日は、ナチス・ドイツによって虐殺された約600万人の”ホロコースト犠牲者”を想起するための日。
ホロコーストの悲惨さと苦難を忘れず、後世にも伝えていくことが目的なのです。
ホロコースト記念日の様子
写真 Times of Israel 2020.4.21
https://www.timesofisrael.com/siren-blares-in-israel-opening-virtual-holocaust-remembrance-day-events/
耳をつんざく悲しいサイレン音に、胸がぎゅっと締めつけられました。
【独立記念日】
ノースリーブのワンピースを、さらっと着て出歩けるようになる5月ごろ。
ここから半年は、天気予報を見る必要が無いほど晴れの日が続くのです。
(公園には無料のトレーニングマシンが置いてある)
イスラエルの独立記念日に向けて、街中では国旗を見かける機会が増えてきます。
(絵になる街路樹のデーツの木と国旗)
アパートや各家庭でも、大小様々な国旗が掲げられるのです。
(運動会の飾り付けのよう)
青い空とイスラエルの国旗がマッチして綺麗。
(ベランダに整然と並ぶ国旗)
独立記念日当日は、ジェット機がひし形の隊形を保ちながら、イスラエルの上空を飛びました。
大人も子供も楽しみにしていたイベントです。
何時頃どこの都市の上を通るのか、事前にニュースで知らされていたため、家のベランダから鑑賞。
(ベランダから見えた航空ショー)
4機のジェット機が、一糸乱れず空を横切る姿はとてもかっこ良く、
コロナ禍のイスラエルに希望を与えてくれたのでした。
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これにて、イスラエルの祝祭日のまとめは以上です。
『愚者は経験に学び 賢者は歴史に学ぶ』...とはよく言ったものですが
ユダヤ人は『民族の歴史から、失敗や成功を学ぶチャンスが幼少期から身近にある』という点が特に素晴らしいな、と気付かされました。
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☆おまけ『イスラエルは譲り合いの精神で溢れている』
イスラエルを散歩すれば、思わぬ掘り出し物がGetできるかもしれない。
譲り合いの精神が根付いているイスラエルでは
”まだ使えるけど要らなくなった物”がベンチによく置かれているからだ。
(電気ケトルかな...?)
手紙の訳:「まだ使えますので欲しい方はどうぞ」
(イスラエル感満載の置き時計)
一瞬悩んでみたものの、他の家具と調和させるのに苦労しそうなので、持ち帰るのをやめた。
(130cmくらいありそうなテディベアまで)
手紙の訳:「彼の名前はスクービードゥービー。みんな明けましておめでとう。一緒に頑張って、強く、楽しくいこうよ!」
ロックダウン中のある日に見かけた、スクービードゥービー。
首から下げているメッセージには、思わずほっこりしてしまう♡笑
よくお譲り品を見かける"お決まりのベンチ”には
この他にも、難しそうな教科書や旅行本、洋服などが置かれるので
立ち止まって興味深く見てしまう。
そして、だいたい翌日には誰かに貰われているのだ。
(夕暮れ時の空.広くて綺麗)
イスラエル人の友人や、Facebookのグループで
「この行為に名前はあるのか」と聞いたら
「特にない」という回答ばかりだった。
自分にとって要らない物が、人にとっては宝になるかも!というシンプルな考えのよう。
建国当初、物が少なくて苦労したであろうことを想像すると
自然に身についた行為なのかもしれない。
そして『欲しければ持ってって。』というスタンスは、いかにもさっぱりしているイスラエル人らしい。
"お決まりのベンチ”の前は、遠回りしてでも通りたくなるのでした。
参考:
・JIFA 「ユダヤ教のお祭り”ペサハ” – 出エジプトを祝い〜」
https://japan-israel-friendship.or.jp/special/festival/1652/
・Times of Israel 2020.4.5「Cargo ships carrying eggs〜」
https://www.timesofisrael.com/cargo-ships-carrying-eggs-arrive-in-israel-but-they-may-not-be-enough/
・「JIFAユダヤのお祭り」
https://japan-israel-friendship.or.jp/category/special/festival/
・「The Prince of Egypt」
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GS663MJ
Special Thanks:
ヘブライ語訳 Yukiさん・Idanさん
解釈 Suniさん・Orさん・Japanese Living in Israelでご回答くださった皆様
最後までお読みいただきありがとうございました。
トダラバ♡
著・写真 がんちゃん
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