【真夜中乙女戦争】感想文
真夜中乙女戦争の原作を読んだのはいつだったかな。
確か読んだ時には大学卒業が決定していて、空虚な日々からの解放が目に見えていたおぼえがあります。私も例に漏れず学問に対してやる気のない学生に成り下がっていたので、「私」との共通点は多くあったし面白かったんですよね、最後まで。余韻のもたせ方とかがすごい上手いなという印象の文章だったので。でもそれで終わってしまった自分の感性よ。
で、もう今年二十五歳になる人間が真夜中乙女戦争を改めて映像化したものをみた結果、やっぱり離れてみて見えてくるものもあるなと思い筆をとってみました。
前回/前々回のPure Japaneseよりもあっさりしてしまいましたが、多分それはどうしても大学時代のセピア色が頭をよぎるから。そんな感じの、あまりに美しい/鬱くしい映画だったので、ちょっと今回はすごいメロウな(あるいは感覚的な)言葉の連続になっています。ご了承ください。
1 「私」の再現率
すごいね。教えてもらったんですがキンプリというジャニーズのグループの、永瀬廉って子だそうです。演技派なんですかね。と思ってググったら関西っ子でそうだったの!?!?!?となりました。関ジャニとジャニーズWESTしか知らない(というかローカルテレビでよく見てたのと、あと芸人さんとよく絡んでいたのが彼らだという話です)ので、無知にもほどがあるなと思い無勉強を反省しました。しかもおかえりモネに出てたんですってね。すごいね。
とまあそんな感じで先入観なく見れたので「私」の再現率えっぐいやっばー! となっておりました。しかもあの……最初の教授に食ってかかるシーン、あれ原作にあったっけ? でもあれがあったことで尚更「私」がそこらにいる無気力大学生なだけではないと思い知れたので本当によかった、ちゃんと映画版として楽しめる感じだったんですよね。
で、まあ基本「私」の表情がすっごい良くてですね。なんというかそれこそ爬虫類系統の表情なんですよ。基本無気力で何考えてんのかわかんない、そして逃げる時だけ恐怖が顔に出る。快楽を感じる時は陶然として。そうやって本能のままに表情が変わっていくのがすごい生物っぽくて、そこがよかった。先輩や黒服との対照なのかなとも思いました。意外と「私」はああ見えて異常さを孕んでいる、しかし狂人ではない感じなのですご……と素直に思いました。映画版の「私」は原作よりだいぶん異常な凡人感がでててすごく良かったなあ……。無気力感がすごい。母親に電話する時でさえあんななのに、ゴミ箱に隠れる時はあんな表情するんか……。みたいなね。
ああそうそう、「私」といえば自己中ですよね。結構。なんていうか、自己中の中でもどっちつかずで常に被害者側意識が抜けないタイプ。それがかなり描き出されてたなあと思います。
なんらかされた時、あるいはされていない時でもすごい「被害者」って感じの表情を作るんですよね。あれがすごいわ。本当に。それこそさっきあげた教授に詰め寄る感じのあのシーンがすごく好きで、あそこがね……めっちゃ淡々と「被害者ヅラ」なんですよね。まだ入って数日なのに。でもあそこまで言う人間もいないから本当に「私」って魅力的ですよねえ。ちゃんと主人公なんだよなああいうとこ。だからあのシーンは作中撮られて拡散されるんですよね。まあでもあれはまぐれなんだけどね。まぐれなんだけど、「私」が運命を感じちゃうスパイスにもなっているので好きです。
本当にあそこのシーンだけですごい語れるんですけど、それくらいあそこのちょっとした瞬間にすごい「私」の再現率を見るんですよ。多分ずっと抑揚なく喋れって言われてんだろうけど、ちゃんと表情とかでわかるのが……すごいなあって……。
2 先輩の話
池田エライザァ!!!!!!(呼び捨てすみません)てなりましたね。いやあの先輩のそこはかとない清楚なビッチ感すごい。絶対男の子ほっとかないじゃん。あの感じはさ。
あんまり彼女の出ている作品は知らないんですけど、あの泣きながらチョコレート食べるシーンが冒頭の映画はチラッと見た記憶が……。また探して見ます。
しかし池田エライザの「先輩」は凄まじいですね。いやー私あの映画の中のファムファタルなヒロインめちゃくちゃ好きで、それこそ先日えらい騒ぎ散らかした「Pure Japanese」のアユミなんかは大好物なんですが今回の「先輩」は別の意味でファムファタルな感じでしたね。
おそらく彼女も無意識に支配者なのですが、彼女の場合は無意識の支配欲というよりもそういう性質なんかな……と。なんというか、生きているだけで異性を誘いそうな感じがすごい。ああいうヤバめの女の先輩は大学時代にも数名いらっしゃいましたがすごかったですね……。サークルクラッシャーとかでもなく、本当に普通に生きているようで意外と度が過ぎる悪戯好き、しかも悪意がない。そして本とか作りたいって感じの。めちゃくちゃ具体的にその人の顔が浮かんじゃうんですが、何がすごいって「先輩」ってなんらかの思想に染まってたりとかじゃないんですよね。あくまで自分の欲で動いている。そこがまたすごい一貫してて、いいよねえ。可愛くて言う気と聞かせられそうな後輩とすぐ寝ちゃうし。「許さない」とか言っちゃうし。マジであの先輩の威力はすごかった。
3 佐藤くん
原作読んだ時も思ってたけどなんで佐藤くんと「私」って仲良かったんでしょうねえ。多分お互いが利用し合う間柄だったんだろうけど。しっかしまあ、よくあそこまで再現できたな佐藤くんを。私原作でも佐藤くんが一番好きなキャラクターなんですよね。不憫だから、ではなく意外と彼悪意がないのだと思うから。「私」フィルターだと結構嫌味なやつなんですけど、多分本人そこまで考えてないし、だから「私」なんかと友達になるくらいなんですよ。結構彼安全管理とかできなさそう。あと意外とすぐ浮いてそうで可愛らしい。こんな感じで佐藤くんもやっぱりちょっと変わっているんですけど、本編にはあんまり出てこなくて悲しい。原作だとガッツリなんですけどね。
しっかしまあ関西人にとって関西人の喋る「じゃん」のうざさったら。本当にあそこが一番良かったなあ……。あれだけでイラっとさせられるのってすごいなって思います。ほんまとじゃんの組み合わせ、破壊力がすごい。
4 最後に
ファイトクラブのオマージュとか、映画をいくつかオマージュしていると言うのは気付きましたが、いくつかのブログで見つけたので割愛します。
いやーでもそれでもすごい映像美でしたね。なんであんなにくっきり見える映画なのにセピア色フィルターのように切ない色合いなんだろう。本当に、最後は爆破が相まってまさに花火って感じでした。
花火って序破急で終わるのが良いとされてて、実際この映画も起承転結というよりかは序破急って感じなんですが、いや……これは……夏に見たかったな。夏に見て、大学のあの空虚な夏の風を思い出したかったなあ……。というなんともノスタルジアな映画だったなと思います。
でも今回は本当に、原作厨なのに結構楽しめたので、かなり再現率高かったんじゃないかなあ。私は嫌いじゃないですよ。こういうの。大学時代に嫌な経験してればしてるほど共感もできるし、一方でその嫌な思い出を昇華できる映画だなと。そう言う感じの、ちょっとセンチメタルな感じがよかったです。
オカモト