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今期ドラマの話

ここ最近、警察モノの日本のドラマがアツいなと思います。というか、有体に言えば「ヘキに刺さる男キャラクター」が多いというか。
 「インビジブル」志村貴文、「パンドラの果実」小比類巻祐一、「絶対零度」井沢範人、「アンナチュラル」中堂系、「Sherlock Untold Stories」若宮潤一。いずれもかなり「刺さる」キャラクターであることには間違いないなと思うわけです。
 これらのキャラクター性、というのをふと考えてみた時に、やっぱり全員どことなく「狂気」であるなあというか、そういうところが刺さるのかな、と。
 まず「インビジブル」志村貴文。今のところ描かれたものしかわからないから確たることは言えないけれど彼はかなり狂っている部分……ありません? なんというか、そこはかとなく暴力的なのにすごく繊細で、一瞬まともに見えるから闇が深いというか。おそらく後輩の死というもの、はトリガーだったんじゃないかと思うくらい、ためらいもなく氷を袋に詰めて犯人殴るとかいうちょっと発想がやばめでいらっしゃるくせしてふとした仕草が「まとも」なのが個人的に好き。そしていつも過去の喪失の記憶に現在の身体を引き裂かれているというか。そういうとこ、オタク、好き。
 次、「パンドラの果実」の小比類巻祐一。彼はもう明らかちょっと狂ってると思う。いや、わかるんですよ。今回のドラマのテーマ、SFというか今ある技術をいい感じにフィクションに落とし込んでる感じだから。だから奥さん冷凍保存してんのもわかるし、実際富豪には冷凍保存されてる人もいるらしいし。にしたってやっぱ冷凍保存の死体、しかもライブ映像に(あえてこう書くけど)語りかけてんのはもう完全に精神は過去に有るんだろうなあとか思ってにこにこしてしまう
 残りのはもうドラマとして完結しているからわかるけど全員大切な対象を喪失していますね。井沢範人と若宮潤一に至っては二回の喪失体験を持っているっていうの、あまりにも脚本家がわかってらっしゃってんだか同類なんだか。まあどっちかいうとこんな一介のオタクと同じに思われたくないだろうから「同素体」って思いたい。黒鉛とダイヤモンド的なあれです。いやでもね。井沢範人は一度目は家族だし二度目は香坂さんを失っているわけですよ。若宮潤一に至っては友人を失い次によくわからんが一緒に住むしかなくなって友情もなにもかもごった煮にした感情の宛先も喪失してるわけで。
 中堂系はそういう意味では行動がアレなだけで結構まともに人の感情持ってて個人的にはそれはそれで好みなんだけどね。どっちかいうと「ON」の東海林先輩みがあるんですが、あれ以上に人間臭くて非常に良いキャラクター性だな……と思っている。

で、まあそういう意味でちょっと志村さんと小比類巻は今期ドラマに出てるキャラとしてはかなりアツいわけですよ。
 志村さん……ほんと……良きじゃない? いやもうほんと、一話からかっ飛ばすし私はあのピンクのランドセルのとこで嘘をつく志村貴文がめっちゃ好きです。手段を選ばない、のはそうなんだけどバッと頭を切り替えて自分の本来の目的にシフトできるというか、そういうとこが本当に好き。冷静なんですよ、冷静なんだけどそれが本能的だし普通はそこまで自分の目的に執着してない。だからこそ彼の行動から、「狂気」というか……執着なのかな、それが本人に染みついてんだなってわかるんですね。
 んで小比類巻はあれは逆にわかりやすい狂気で、でも本人は一切狂ってるって思ってないし自分の知識的には妻が蘇るって普通に思ってるあたりが非常にいい。ありえなくもない話を信じるのは別にいいのですが、それをさも当然のように行うのがやっぱりちょっとイっちゃってんなあと思うわけです。
 今回の二人はそれこそ井沢さんとか若宮潤一とかと違っておそらく一つの喪失体験を引きずっているタイプだと思うんです。で、どっちかいうと最も中堂系に近いタイプが志村さんなんだなあと。でも中堂系って私事と仕事を混同して両方高めてる(高めてんのかな…?)感はあるんですけど、志村さんはあくまで「後輩の殉職事件」だけっていうか。なんというか、息するように過去に執着してて、中堂さんのように今を切り捨ててまでって感じじゃないのが逆に狂ってて好きっていうか。いや本当に文字化するの難しいんですけどね。
 そして今を切り捨ててまで過去に執着しているわけではなくもうすでにどっぷり浸かっちゃってるのが小比類巻なんですよね……。もはや過去のその分岐した世界線と現在をダブらせて生きてそう。うーんこちらも言語化が難しいですが。なんというか彼はこの世界に奥さんがいないのを分かった上で、でも絶対生き返るって信じちゃってるというか。「あり得ないかも」っていう怯えも恐怖もないんですよ。そこが狂ってんなと思います。科学者気質なのにそこだけすごい頑なに信じちゃってるの、あまりにも「愛」って感じで。
 もちろんまだこのドラマが終わっていない以上なんとも言えないのですが、それにしたって「喪失し執着し狂いつつも今を生きる男たち」みたいな特集、ないですかね。キャラとしては意外とありふれてるようでやはりスパイスとしての「狂気」は好きです。そしてその狂気がなんでもないことのように描かれているのはもっと好き。結局のところ私はホラーが好きなんですが、その「狂気を本人も狂気と気づかないまま生きている」っていうのはサイコホラーの手法であり、一方でそれを制作側もサイコホラーと捉えていないのはあまりに好きです。もちろんサイコホラーと捉えているのは自分だけなのですが、それでもやっぱり人の感情の揺らぎの闇みたいなものは、結局人って好きなんじゃないかな……と思います。
 そういうわけでもしこの記事読んでちょっとでも面白そうってなったらほんとに見てくれ。インビジブルもパンドラの果実もかなり当たりドラマだと思うので……。

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