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子供犯罪者現る
こちらも前回同様、続きとなります。
ここまでいくつかの場所で万引きを行い、数ヶ月たってもバレることはありませんでした。
それまでは、カバンに入るような小さなものを盗っていたのですが、段々と「大きな物を盗りたい」と思うようになりました。
周りの友達にも、万引きしていることを自慢げに話して、何故か「すげー!」と言われることに優越感を覚えていたのです。
本当に情けない話です。
当時、ご迷惑をかけた方達が見ているとは思えませんが、改めて謝罪致します。
本当に申し訳ございませんでした。
さて、本題へ
「大きな物を盗りたい」という欲が日に日に大きくなり、1人では難しいかもしれない、という自分の中での結論が出たので、万引きに興味を持っていた2人に声をかけ、共同することになりました。
当日の作戦として、知り合いが少なく、自転車で40分くらいかかる、遠くの小さなデパートにバラバラに店内に入り、1人が店員に声をかけ、1人は周りを見渡して誰もいないことを確認、1人が実行して各々別で店を出て、いつも遊んでいた公園で合流することにしていました。
決行当日、僕達は不安とワクワクで胸をいっぱいにさせながら、作戦を何度も擦り合わせながら現場へ向かい、いざ決行。
僕は、実行犯だったのですが、結果は見事に失敗。
3人はバックヤードに連行されることに。
しかし、本当に悪知恵が働くクソガキだったせいで、僕は仲間に「捕まっても名前は言うな、偽名を使え、学校も適当に言え、ちゃんと謝れば帰らせてもらえるから。」
そう予め伝えていました。
しかし、社会はそう甘くありません。
デパートの方が、僕達が適当に言った学校に連絡を入れた所、僕たちが存在していないことが判明。
「本当のことを言いなさい。もう学校には言わないし、親御さんが来れば帰らせてあげるから。」
とてつもない情状酌量である。
ここで1人が白状し別室へ。
残るは2人。
僕ともう1人は無言で目を合わせ、「なんとか逃げ切る」と、謎の意気投合。
しばらくすると店員さんも呆れかえり、埒が明かないということで今度は警察に連行されることに…
警察が来た時の、もう1人の絶望した顔は今でも忘れません。
そして2人は近くの警察署に連行され、1人はそこですぐに全てを白状し帰宅。
僕はと言うと…
「本当のことを言いたいし帰りたい、だけど親が来たら確実に殺される」という恐怖が勝ってしまい、本当のことを言い出せませんでした。
警察の方に「本当に殺される、ちゃんと正直に全部話します、だから親には言わないで欲しい」と懇願したことを覚えています。
警察の方は「親が君を殺すようなことはありえないよ、大丈夫だから。もし君がそんなことになりそうになったなら、ここで守ってあげるから大丈夫。」
そう言われ、僕は全てを白状しました。
しばらく経つと、近くで母の声が聞こえてきた。
母が鬼の形相で部屋に入ってくるなり、僕をボコボコに殴り始めました。(マイルドに表現しています)
即座に警察の方が「お母さん!気持ちはわかりますがダメです!話をしたらわかりますから!」と止めに入ってくれたので、命は助かりました。(笑)
そして家に帰ることになったのですが、家に着く寸前のところで、母が言いました。
「お父さんがめちゃくちゃ怒ってる。私には止められんから、覚悟しときなさい。」と…
ここまで触れてなかったのですが、父は家族にはとても優しくて怒ることはなかったのですが、身内や仲間に何か危険があると、警察を呼ばれる程の暴れっぷりを見せるような父でした。
そんな父が怒っている。
僕はその一言で全身が震えました。
リビングに入ると父は、仁王立ちでこちらを見ていました。
父はリビング中央を指さしながら
「ここに立て」
そう言いました。
僕は声にもならない声で返事をし、そこに立ちました。
立ったと同時に、父からの本気のグーパンチを顔面にくらいました。
リビング中央から入口のドアまで2m近くあったのですが、僕の体は宙に舞い、入口のドアに衝突しました。
あまりの衝撃と痛さで立ち上がれないと思っていたのですが、父はソファにドカッと座り、僕へ言い放ちました。
同じ場所を指差し、
「ここに立て、すぐ来い。
3秒以内に来んかったら殴る。来い。立て。」
と。
僕は若干の目眩と鼻血を流しながらも、即座に指定された場所へ立ちました。
本当に殺されるという恐怖で、自分でも驚くスピードで。
そこで父に言われた一言が
「自分で自分のケツも拭けないようなヤツが、警察のお世話になるようなことをすんな。」
でした。
続けて、「欲しいものがあるなら言え。その代わり欲しいものを言うなら、何か自分がやれることを言ってそれを実行して結果を出せ。勉強でもスポーツでもなんでもいい。それが出来たら、その見返りで欲しいものを買ってやる」とも言われました。
勿論、ここから万引きは一切しなくなり、なるべく自分だけで解決出来ないことは、やらない近寄らない、もしくは自分一人で解決できないようなことが起こりかけても、「嘘」をつき親の耳に入る前に消火をしていくようになりました。
~完~
この頃から、完全に「嘘」をつくことが習慣化されて、1人でどうにかするようになったり、人の目を強く意識するようになったことが、今の僕を作り上げている原因の1つのように思います。