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「朗読」と「読み聞かせ」の違いと、怒っている演出家への対処法

こんにちは、生野忍です。
2022年9月、Twitterで「朗読や読み聞かせに感情や声色を変えた芝居は必要ない」といった呟きを数点見掛けたので、「それは違うぞ。」と、はっきり私の見解を書き残しておこうと思います。

何しろウチの企画が「朗読企画」と名乗っていますし、私が制作しているボイスドラマや朗読劇では、声色を変えて複数キャラクターを兼役している声優さん・ボイスコさんが多数存在します。私もその内の一人です。

又、東京の中野周辺では現在も流行り病に負けずに朗読劇を開催している事務所やサークルが沢山存在し、当方も数年前までは出演していました。

自分の活動の場や、今も限りある時間やチケットノルマと闘いながら頑張っている役者仲間の為にも、面目や活動の場を護る目的で記述しておかなければ…と思ったので記録させていただきます。

様々な見解があると思いますし、決して誰かに怒っているとかそういった事ではございません。あくまで朗読企画を主催している私の意見です。ご了承ください。

「朗読」と「読み聞かせ」は違います。


まず、朗読とは「自分の読み方を獲得し、それを他者に朗(あきら)かにする行為」の事です。

幼子の為に情景を説明し、文字通り本を読んでその耳に聞かせる「読み聞かせ」とは異なります。

違いは他にも様々な見解があると思いますが、私は「自分(演者の貴方)の読み方」にフォーカスを当てて考えています。


私は数年前、朗読の検定を受けて合格しましたが、
“声色を変えるのはNG”などという規定は特になかったので、自分の解釈で演じ分けた際「素晴らしい技術をお持ちで…」と賞賛して頂けた経験があります。

又、憧れのベテラン現役声優さんが賢プ.ロに居るのですが、事務所主催の朗読劇で男役・女役で衣装も声色も変えて演じ分けていました。
私もそうでありたいですし、プロの方のお仕事を否定する発言は絶対にできません。

なのでGanacheは今後も朗読企画と名乗りますし、
私がボイスDとして関係してる企画では兼役もめちゃめちゃ採用しますので、演者の皆様は貴方が考えた解釈で伸び伸びとお芝居を楽しんじゃって大丈夫です!

作品の方向性、商品の完成形を理解してお芝居することが大切です。


少し違ったの観点からのお話です。
たまーにですが、「自分はアニメ声が好きだから!」「ロリ声じゃないと許さん!」とか、将又「演出家にアニメ声を使うな!と言われた」など、Twitterで暴れている方を見掛けます。
(ミュートしちゃうのであまり見掛けないのかも)

演者がアニメ声かロリ声かそうでないかや、声色を変えるのOK・変えちゃいけない…等は、はっきり申し上げて、「ディレクターの好み」や「作品の方向性」に依ります。

第三者である貴方個人や、演じる側(オーディションを受けた側)が意見を述べられる事ではありませんし、指定が無い限り事前に判断できるものではございません。

そもそもの話ですが…
これは精霊伝承のCV募集の際に呟いた文言です。
【外部から「ボイスは要らない」「素人だ」などと言わなくてもいい個人の意見という言の刃を投げつけてくる方もいます。(中には温かい叱咤もある場合がございますが)しかし、そのような言葉は作者本人の意向や制作に全く関係ない上に、有志のキャスト様を集めた今、一個人の意見などは通りません】
…これが企画主としての当方の意見です。
なので、残念ながら一個人というちっぽけな存在が合ってない云々言うだけ無駄です。
制作側では、もっと大きなものが相応の規模で大掛かりに動いています。

それに一表現者であるなら、同じ役者であるなら、
ファミコンゲームがリメイクして突然声優さんがついた時のファン視点でしか物事を捉えられないのは、勿体ない。今後続けていくのがつらくなるだけです。
「声優を目指して専門や養成所に通ってからアニメが観られなくなった」という人が多いですが、晴れ舞台の袖に立ったからこそ、もっともっと吸収できる部分はあるはず。再度申し上げますが、勿体ない。

話が逸れましたが…
アニメなのか、洋画なのか。ゲームなのか、生ものの舞台なのか。
朗読の場合、何を題材にした朗読で、テーマは何なのか。
読み聞かせの場合も、どんな内容で、何歳をターゲットにしているのか。
名目だけでは測れない基準が沢山あります。

もし、どうしても「この作品でどう喋ればいいのか分からない」といった壁にぶち当たった場合、現場の雰囲気や、香盤表に載っている共演者の統一性、収録前の質問やリテイクでのディレクターの指示に因って掴んでいくしかありません。怖がらずに自分から挙手して、擦り合わせを試みましょう。

演じる側として大切なのは、場を弁えたお芝居をすること。
その現場で定められた決まりの中で、目一杯の技術を提供すること。です。

ただ、時々居る揚げ足を取る変な方は、
「アニメ声やロリータボイスの方が朗読劇や吹替えに出てはいけないのか?」
「声優だけどアニメ声が出ないのですが私は売れませんか?」
といった事を何故か訴えてくるのですが、それはまったく別の問題ですし、重要ではありません。
貴方は声を主軸に置いた“お芝居”をする為にその現場に立っているのでしょう?
声優の商売道具は生まれ待った貴方の声なので、それに対してとやかく言う人は、変です。
出会い頭に「お前足太いな」「お前の髪型嫌い」なんて言うのと同じですので、相手にするだけ時間の無駄です。
これに関しては誰でも分かる事なのでこの辺で割愛しますね。
(あとあまりネガティブな思考ですと確実にチャンスを逃すので、注意。)

怒っている演出家への対応について。


「あの役者は“読み聞かせ”が出来ない!」「舞台とアニメの区別がついていない!」、オーディション後の呟きやラジオで「こんな役者は嫌いだ!俺は雇わない!」などと、
誰に対して言っているのか判らない様に名を伏せて、SNSで怒っているディレクターを見て「自分の事かも…」と、嫌な経験をした事がある演者さんへ。

私は幸い上記のような駄目出しは受けたことがありませんが、先にちょっとした例を上げておきますね。

我々の業界は、
洋画吹替の現場で「生野さんここ鼻濁になってるから抜いてね!」と言われ、
翌日の吹替レッスンでは別のディレクターさんに「鼻濁入れてね」と言われる。そんな業界です。

重ね重ね申し上げますが、喋り方云々については作品の方向性やディレクターさんの好みに依ります。
演出を受けたらその都度変えられる臨機応変な力が必要ってだけです。
直せたなら、指摘を受けて落ち込む事はありません。

SNSで愚痴っている演出家を見掛けてグサッと来たら、貴方自身も疲れている可能性があるので、「お仕事以外でつらい事でもあったんだろうな…」と、労りの心を持って、SNSを閉じ、スマホをぶん投げ今すぐ寝てください。

それから蛇足だとは思いますが、演出家さんへ。
Twitterやブログで「〇〇が出来ない演者がいる!」と怒っている方。お仕事お疲れ様です。お気持ちは解りますし、申し訳ないのですが…公の場で暴れると半分は演出家ご自身の指示不足である可能性が出てきてしまうので、
その場で演者が直してくれたなら過ぎた事ですので、概ね呟かない方が善いです。

演出家さんもちょっとここらで、美味しいコーヒーでも飲んで落ち着いてください。

また、オーディション中に自分のイメージと合わない役者を見かけても「気に食わない!!嫌いだ!!」と大声で言う必要は別にないですよね…。
令和的な考えだ!と一蹴されてしまうかもしれませんが
あなたがあなたの作品で採用しなければ良い話で、今後活動を続けていくであろう役者さんが呟きや発言を見つけてショックを受けた場合、最悪、あなたのたった一言でその方の人生を潰してしまう事になるのですよ。

「自分が一時の感情に任せて怒鳴ったが為に、活動を辞めた人がいる」って、後味悪くないですか…?ずっと恨まれ続けるかも。

人の上に立つ仕事だからといって、何を言っても許されると思っていたら、今や完全に時代遅れ。そういう大人に同調する者も可哀想ですよね。

私は「この方やばいな」と思った企画には、二度目は参加しません。
過激的な発言がRTやおすすめに流れてくるのも見てますし、事前にそういった短気な人柄が見える者の企画にはそもそも応募しません。
(この2年程、応募は企業様以外ほぼしていませんが)

ディレクターや同期に酷い苛めを受けて役者や声優を辞めてしまった素敵な仲間をリアルで何人も見てるので、私の好きな役者さん達には、“自分で自分のご機嫌すら取れず、言って良いことと悪いことの区別もつかない者”に運悪く関わってしまったが為に活動を辞めてほしくないです。

声優のお仕事・企画主として作品づくりをすることを、私は『夢を与える活動』だと思っています。聞き手にも、演者にも、です。
大好きなプロ声優さんと養成所時代の師匠が、ひよっこだった頃の私にくださった言葉です。

あなたはどうですか?

僭越ながら私もディレクターの経験があるので、上記3つは肝に銘じています。

ミスを指摘するのも、貴方が作品を大切に想ってお仕事しているからだというのはよく解りますし、演者としては大変有り難いです。
あなたや演者さんがそのお仕事で食べていけてるのなら、尚更。感謝しかありません。

ただ、そういった云わば感情的な、ストレス発散(こういう表現になってしまった事を各位お許しください)や、自己顕示に基き他者に同意を求める内容の愚痴は、飲み会の時などに『苦労話』として仲間内で話し『でも、完成して良かった!』等になるのが、賢い昇華の仕方なのではないかな…と。その方が恰好良いです。

立場やキャリアを使った“恐れ”で周囲を支配してもあまり良い事はありません。
「何を言うか/何を言わないか」くらいはご自身で選択できるはずです。お口が悪いとこの御時世、シンプルに嫌われますし、悪口は必ず自分に返ってくるのでご注意を。

(呟かないで!とは言えませんが。どうしても、役者の為に必要な時もありますよね。それは演じ手としても理解しています)

おまけ。稀に見る頓珍漢なディレクションについて。


朗読の話をした序でですが、
一昔前に役者仲間から相談を受け、慰めた話です。

宅録声優に対して「腹式呼吸が出来てない!」という演出家も、ちょっと恥ずかしいですよね。

腹式呼吸は音ではなく呼吸法です。
出来ているかどうかは、舞台など目に見えているお芝居の場か、発声練習でしか確認のしようがないです。若しくは、見抜ける人といったら私や先輩方の様に長いこと朗読を習っている人物か(それでも宅録だとイコライザー等を掛けられ、見抜けない事が多いです)、プロのミキサーさんくらいです。

そして腹式呼吸かどうか分かったとしても、正直なところ大して重要ではありません。
「その時のキャラクターの状況」によって、何処から声を出すのか、身体の何処に声を響かせるのか、そもそもの喋りの癖…演じる役に依って変わってきますよね。

腹から声を出す状況は叫び台詞かスポーツ中か必殺技くらいです。普段からお腹から声を出していたら、折角揃えた高額なコンデンサーマイクや整音ソフトもお手上げですし、それこそ外部から「舞台俳優と声優の技術を履き違えている」と言われてしまう可能性があります。

第一、実際のスタジオ収録の現場や声優の養成所のお稽古でさえ「腹式呼吸をしろ!」なんていう演出が飛び交うことは、経験上一度もありませんでした。

どれだけ頓珍漢なディレクションか、素人の方でも薄っすら理解できると思います。

勿論「無理のない発声をすること」は必要です。長尺なら尚更。
ただ、そんなものは出来て当たり前なのです。滑舌と同じですね。
逆に、出来ていなければCV募集やオーディションにも受からないでしょう。

途中で病気をして喋れなくなってしまった等の理由が無い限り、声が出せない状態でボイスコ・声優として活動している方はそうそう居ません。
「腹式呼吸しろ!」はパワハラ…とまではいきませんが、一種の煽りに聞こえてしまうのは私だけでしょうか…?

※この件は仲間から相談されたお話で、ちょっと理不尽な叱られ方をしていたので記憶に残っていました。トラウマを克服し、楽しく活動できることをお祈りしています。


最後に。言いたいことが言えないのはお互い様


長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。

学生時代から朗読を習っていた資格保有者としての意見と、声優事務所(株式会社ベルプロダクション)に預かり・映像系事務所(GFグループ合同会社レアノスイノベーション)に所属経験があり、6年間ボイスドラマ制作や商業ドラマCD、ゲームのボイスDを務めている者の意見でした。
何者??って思った方は今更の自己紹介ですみません。

なんでも発言できるSNSだからこそ、様々な人の立場を考えて呟かなければならないと思っています。

交流の場でもあるのに、「あの人のせいでSNSが嫌になっちゃった」なんて寂しいですよね。

私は一般的な地上波の【声優】という職業からは身を引いた者ですし、自他共に認める過激派な人格ではありますが、同人や趣味の活動になっても、憧れの声優さんや師匠が言っていた『夢を与える仕事をしている』という意識は今も変わっていません。

生野忍として、役者人生で『世界一の役』を手に入れてしまったので、2021年辺りから“CV応募欲”が極端に減った事もあり、こうして発言できますが
過激な企画者に対し「その呟きは如何なものか」って言えずに泣き寝入りする人は居ると思います。

皆、自分の役は守りたいし、出演の機会も欲しいでしょうからね。
とっても可哀想です。言いたいことが言えないのは、ディレクターや企画主だけじゃないのですよ。


貴方のSNSは役者仲間やクライアントだけでなく、ファンの方も見ているかもしれない。といった意識は、持っていて損はありません。

「プロ意識高すぎて草」など言われるかもですが、ネットが当たり前のように普及し、子供から老人まで様々な年代の方がSNSを利用している今、至極当然なことです。

誰でも石(意思)を投げられる状態なんです。間違った事に対しても。たった一度、感情に任せて投げた言葉で貴方や仲間が傷付き活動を辞めてしまった…なんて悲しい思いをしないでください。

私も過去Twitterが原因で大切な人と仲違いをしてしまった悲しい経験があります故、以降そのような事は無い様に「人の役に立てるか、笑顔にできるかどうか」を念頭に言葉を発信しています。
ですので、心からの注意喚起です。貴方や作品を「大好き」と言ってくれる優しい仲間が離れていくような発言は、しないで。

ぜひ今一度、ご自身の呟きを見直す機会をつくってみてください。お願いです。

これを見ている方が、沢山の人に愛される役者や演出家でありますように。


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